南米大陸、チリにある巨大な砂漠アタカマ砂漠アンデス山脈と太平洋を結び、標高は2000メートルにもなる。その過酷ゆえに砂漠の道は「死の道」とも呼ばれているくらいである。一方で、東西交易の拠点として砂漠の中にあるオアシスを中心に栄えている地域でもある。世界でも最も乾燥した砂漠と呼ばれ、過去には40年間雨が一回も降らなかったという記録も残っている。また、銀、銅、ニッケル、硝酸ナトリウムなどの生産地としても知られていて1940年代くらいまでは世界最大規模を誇る炭坑であった。
そんな歴史の中でも重要な役割を果たしてきた砂漠の道を通過するドライバーたちから奇妙な目撃談が相次いでいる。それは、カンガルーに似た巨大な生物がぴょんぴょんと後ろ足ではねるように歩いていたというものである。それこそがこの地方で有名な「ヴィルコモンスター」である。その特徴は、カンガルーに似た体格とはねるように二足歩行で俊敏に歩く姿、しっぽは縞模様である。そして何と言ってもその巨大な姿が有名だ。2メートルを超える大きさであると言われている。
このモンスターは、チリの山岳地帯であるセロ・カリペウモにある廃坑に住みついていると言われる。初めて目撃されたのがそのセロ・カリペウモの村の一つヴィルコであったことからその名がつけられている。この怪物が目撃されるようになったのは最近のことである。2004年、地元のバスドライバーであるホアン・ベリオスが最初の発見者だった。その生物はバスの前に現れて茂みの中に消えていったそうだ。その姿はどう猛で口からは血が滴っていたという。そのことからこの怪物は肉食性であると考えられる。また、地元の老人ドン・ラモン氏もたびたび目撃しているという。大きなカンガルーのような生物が、廃坑の中に入っていく姿を数年にわたって見ているそうだ。さらに、そのモンスターの噂を聞きつけ山に入っていった者たちの一部は二度と戻ってこなかったという。おそらく、「ヴィルコモンスター」の餌食になってしまったのではないかと地元の住民たちは考えている。また、この怪物に教われたのではないかと思われる小動物の死骸も見つかっている。その外見は生きているときと大差なくただ一点、首元に小さな穴があいていてそこから血を吸われた形跡があったのだそうだ。このような恐ろしい怪物の存在に、地元の人々は廃坑には近づかなくなってしまった。
この「ヴィルコモンスター」の正体はいったいなんだろうか。有力な説として挙げられているのは、動物園などから逃げ出したカンガルーがそのまま野生化して住みついているのではないかというものである。そもそも、カンガルーのような生物として考えられる巨大な有袋類は南米大陸には生息しておらず、新しい種の発見とも考えづらいのである。
しかし、カンガルーは草食動物である。目撃談から推測するにこの怪物は肉食のようだがそうなるとつじつまが合わない。そこでほかに有力なのが古代生物が生き残っていたのではないかという説である。古代の飛べない鳥、フォルスラコスやティタニスなどの巨大生物が人類の知らないところで生きていたといいうものである。また、恐竜の生き残りではないかと考える人々もいる。しかし、今現在どの説も断定できる証拠はなく、謎のままである。
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