イタリア北部ロンバルディア州のコモ湖で目撃された水棲恐竜。
ミラノの北に位置するコモ湖はイタリアで三番目の大きさを誇る。湖の南西岸にあるコモの街周辺は、少なくとも青銅器時代から人が住み、ローマ帝国時代には保養地として知られていた。現在もヨーロッパ各地の知名人が所有する別荘が立ち並んでいる。
湖は氷河に削り取られて出来た逆V字型の独特な形をしており、水深はヨーロッパで最も深い410mに達する。
ラリオサウロとはラリオサウルスのイタリア語読みで、三畳期(2億5100万年から1億9660万年前)に主として北イタリアに生息した水棲恐竜だ。首長竜ノソサウルスの一種族である。
ノソサウルスの体長は最大で3mに達するのに対して、ラリオサウロは60cm程度しかない。首は短く前足はヒレ、後ろ足は五本指に水かきを持っている。
1830年に湖畔の発掘で他の古生物の化石と共に見つかり、1847年にようやく名付けられた。名前はラリウスのトカゲという意味だ。ラリウスとはローマ帝国時代から呼ばれてきた湖のラテン語名称である。現在、イタリアではラリオサウロを単に“ラリー”としばしば呼んでいる。
もっぱら化石はコモ湖周辺で発掘されてきたが、ヨーロッパ各地でも見つかるようになっており、最近では中国でも採取されている。
このラリオサウルスと思われる未確認生物が最初に目撃されたのは1946年11月のこと。2人の猟師が湖の北岸で沖合を泳ぐ、赤みがかった爬虫類のような生物を目撃した。猟師は銃を発砲したが、その生物はすぐに潜ってしまった。この出来事はニュースになったものの、記事を掲載した週刊誌は、正体をチョウザメだったと報道している。
1954年には地元の親子が、丸い鼻と水かきのある足を持つ体長80cmほどの生物を目撃した。1957年には潜水艇に乗って湖に潜った二人のダイバーが、水深90mでワニのような生物を目撃した。その体長は60cmから1.2mの間と推測された。
最も新しい目撃は2007年にインターネットのフォーラムに書き込まれた情報だ。体長は10mから12mで、巨大なウナギのような姿をしていた。これに対して魚の群れを見間違えたのではないかという指摘があったものの、目撃者はその可能性を否定している。
長年にわたりこの未確認生物を調査したイタリアの作家ジョルジオ・カスティグリオーニは、2000年に著書『ラリオサウロ』を出版した。
その中で、カスエィグリオーニは1954年の目撃情報に注目している。カスティグリオーニは目撃者に直接取材し、丸い鼻と水かきのある足という特徴から、生物はカワウソだったであろうとの結論に達した。実際に1954年当時、コモ湖のすぐ北にあるピアン・ディ・スパーニャ自然保護区にはカワウソが生息していた。
また、1957年の目撃は淡水魚ノーザンパイク(カワカマスの一種)であり2003年の例は、やはり魚の群を見間違えたのだろうと推測している。
カスティグリオーニは、コモ湖に限らず湖で目撃される現象はモンスターかどうか慎重に検討すべきだと指摘している。コモ湖では1965年に恐竜の姿をしたゴム人形が投げ込まれる出来事があった。多くの目撃情報はこうした悪戯によるものであり、それ以外は1954年の例が示すように、他の動物の見間違いを疑ってかかるべきだと主張する。
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