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西日本の伝承の中でも、古くから広範囲にわたり語り継がれている話の中に件(くだん)という妖怪がいる。
件は文字の通り、半分人間で半分牛という風貌の妖怪となる。
件は一般的に顔部分が人間、体の部分が牛で、人の言葉を話し牛から生まれると言われている。

この件という妖怪に似た別の妖怪がいる。それが牛女だ。
牛女は件とは逆に体が人間で頭の部分のみ牛という風貌で、件と比べると知性がなく人の言葉を話すことはできないと言われている。
また、牛女は人間から生まれると言われており、さまざまな点で反対の存在のようにみえる。

そんな件と牛女だが、それぞれ世の中に現れた際には世に厄災が起きるという点では一致している。
件は前述したように人の言葉を話すことができ、生まれると数日で命を落とすが、その数日の間にこれから起こる厄災の予言をすると言われている。
また、件の性別によってもその予言の内容に若干の違いがあり、オスの件の場合には予言のみだが、メスの件の場合には予言をしたうえで、どうすればその厄災を回避できるかを伝えると言われている。
件の予言は必ず当たると言われ、その嘘偽りのない様子から、「件の如し」という慣用句ができたと言われるほどだ。

次に牛女だが、牛女は言葉を話すことはできないため、件のような予言はしないと言われている。
しかし、牛女が現れると厄災が起きる、厄災が起きた場所で牛女が目撃される、などその存在は件と同じように厄災と結びついている。
件と牛女は発生したと言われる時期にも若干の違いがあり、件は江戸時代から昭和初期にかけて、牛女は第二次世界大戦末期から出現したと言われていることからも、違う妖怪として扱われているが、牛女は件の派生ではないかと言われる場合も多い。

そんな厄災と強く結びついた件と牛女だが、東日本大震災と阪神大震災の際も何度か目撃情報が出ている。
今回目撃情報は牛女だがやはりその存在は今なお厄災と強く結びついているようだ。