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"20世紀に入り科学技術が発展したおかげで、人類は宇宙へと進出した。そう言ってしまうと地球上にはもはや人類未踏の地はなくなったと聞こえる。しかし、人類未踏の地は未だに存在する。その一つが海であり、深海である。海は地表の7割を占めている。深海は海面下200メートル以上の海であり、太陽光が届かないなど過酷な環境下にある深層部である。海を深く潜るにつれ水圧は上昇、そのため陸上で生活する人類はなかなか深海の調査ができない。そんな深海では毎年と言っていいほど新種の生物が見つかっている。海にはまだまだ未知の生物がいるのかもしてない。ひょっとしたら「カバゴン」もその一種であるかもしれない。
1974年、遠洋漁業をしていた日本の漁船がニュージーランドのクライストチャーチ近海で謎の生物と遭遇する。その生物は海面にひっそりと頭部だけを出し、威嚇するわけでもなくじっと漁船を見つめていた。漁船に居合わせた船長と船員26名が同時にこの生物を目撃し、この生物は「カバゴン」と名付けられた。「カバゴン」という名前からチャーミングで愛くるしい姿を想像するかもしれないが、実際に目撃された生物はそうでもなさそうだ。ひっそりと出していた頭部は1.5メートルほどの大きさの灰褐色であり、大きく光り、少し赤みがかった目が船員たちを凝視していたという。目の下のは大きな鼻があり、潰れたような形をしていたという。船長は「カバゴン」のスケッチを残しており、日本に戻った後「カバゴン」はマスコミによって報道され、大きなインパクトを与えました。
その後、「カバゴン」に関する推測がなされ、当初有力な説はセイウチと見間違えたのではないかというものであったが、セイウチは北半球でも北極圏に生息しており、ニュージーランドで発見されるのは考えられないとし、この説は否定された。ニュージーランド近海に生息するミナミゾウアザラシと見間違えたのではないかと言われた。しかし、「ガバゴン」に遭遇したのは海に関してよく知っている漁船乗組員たちである。それにミナミゾウアザラシは日本の水族館で飼育されており、その外観を知っている者は当時の日本でも多かった。「カバゴン」を目撃した漁船乗組員たち全員がミナミゾウアザラシという推測を否定した。そんな中、ニュージーランドの情報誌「ニュージーランドウィークリーマガジン」は「カバゴン」を取り上げ、独自の取材と調査を開始した。調査の結果、「カバゴン」が目撃されたというクライストチャーチ近辺で謎の足跡が発見された。この足跡、他のどの動物のものと照らし合わせても一致せず、「カバゴン」のものではないかと言われている。その後、調査では何も進展せず、「カバゴン」の新たな情報も出ていない。
大洋で見つかったということもあり、「カバゴン」を再び見つけるのは大変困難だろう。それに「カバゴン」が目撃されたのは水面ではあるが、実際は深海に生息する生物なのかもしれない。深海に住む生物、特にかすかに太陽光が届く位置に住んでいる生物は目が他の生物に比べ大きくぎょろっとしていることがある。これはかすかな光を暗い水中でも感じるため、目が大きくなったと言われている。ひょっとしたら「カバゴン」も普段は深海に生息している生物であり、現在も人類の知らない海の深くを泳いでいるのかもしれない"