フライング・スネーク

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" 多くはインドネシアを中心に生息し、その名の通り飛ぶことができるヘビの一種である。
 熱帯に生息するヘビであるが、毒性は非常に弱い。主に小動物を麻痺させる程度のものであり、人間にとって特に害はない。彼らは肉食で、捕食対象としている生物はトカゲ、カエル、トリまたはコウモリなどを食べる。体が小さいためもあり、人間を襲うとはない。しかし不用意に触ると噛みつくこともあり、彼らの持つ毒性に対してアレルギーを持つ人間にとっては無害とは言えない。

 フライングスネークと呼ばれるが、これは鳥のように羽で空を自由自在に飛び回るのではなく、モモンガのように枝から枝へ飛び回るためこう呼ばれるようになった。英語でいうところの「Fly」ではなく「Glide」と、理解していただく方が正しいだろう。
 この蛇の生態がまだあまり詳しく解明されていなかった頃は、体に羽や翼などの機関が存在するのもだと信じられていた。現在約30系統の動物が空を飛ぶことが観測されているが、ただフライングスネークのみ、翼や、飛膜などの補助なしで飛ぶことができる唯一の生物である。
 しかし多くの科学者がフライングスネークの生態研究をしているが、未だにどうして飛ぶのかははっきり解明されていない。仮説として挙げられている中で最も有力なのが、鳥などの天敵から身を守るために枝から枝へと飛び移るとされているが、他に挙がっているのが、捕食対象を見つけたときに捉える目的、もしくは単なる移動手段なのかという見解もある。
 彼らの主な生息場所は高低差のある森や、ジャングルの中だけでなく、シンガポールでは民家の庭に生息しているところも目撃されている。
 フライングスネークは飛ぶときには高い木の上などに這って登り、枝の先端まで移動する。そうして移動した後に今度は枝の先に尻尾の部分だけひっかけてぶら下がる。ちょうどアルファベットの「J」のような形になる。
 ぶら下がった状態から、今度は反動をつけるために体を「S」字に縮ませる。そして飛ぶ段階に至るのだが、飛ぶ寸前に彼らは体を平たく伸ばすのだ。彼らは体を平たく伸ばすことにより、空気抵抗をなるべくなくし滞空時間を延ばすためだ。伸ばした時と、縮めた時との体格差は約2倍になる。
 そしていよいよ宙を舞う。今度は体を「C」のような形で飛び、体をくねらせることによって方向変換も自在にできる。
 観測されている平均的な飛行距離は100メートルにも及び、その飛行技術は他の哺乳類が空を飛ぶ技術よりも高いとされている。また、枝から枝に飛び移る際には高い木の上に登る必要もある。フライングスネークは木に登る技術にも非常に長けているのだ。

 2014年4月に発表されたインドのパブロス・ブラコス・パデュー大学の論文の一説に「彼らは空気力学的に最も自然な形で軌道を確保している」と書かれた。また別の論文で論じられたのが、飛行する際にフライングスネークに渦巻く空気と空気圧についてだ。「彼らは周りの空気よりも低い圧力を生み出し、その気圧を体に纏うことのよって体を宙に浮かせ、飛行することを可能にしている。」とジョージ・ワシントン大学の論文で述べられた。また、明らかな研究結果として、体格が小さいヘビほど飛距離は伸びることが分かっている。

 現在4種類のフライングスネークが、同生息地域に確認されている。一番小さい種類のもので約61センチメートルに対して、大きいものになると120センチにもなる。
 
 以前は謎に包まれた存在のフライングスネークだったが、現在は学者たちによる研究により、その生態が次第に明らかになってきた。

参考 http://animals.nationalgeographic.com/animals/reptiles/flying-snake/、http://www.livescience.com/44521-flying-snakes-may-inspire-gliding-suits.html、http://www.npr.org/blogs/theprotojournalist/2014/03/07/286833436/the-elegant-secrets-of-flying-snakes、http://animals.pawnation.com/paradise-flying-snakes-6213.html"