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オルレアンはパリの南方100kmほどのところにある人口数万人の地方都市である。
1969年5月ごろ、この街にあるユダヤ人経営のブティックで女性が突然消えるという噂が流れた。若い女性が試着室に入ると、睡眠薬入りの注射をうたれ、地下の通路を経て中近東と南米へ売春婦として売られるというのだ。

この噂はオルレアン中に広まり、一時パニック状態になった。
さらに、その様子をマスコミが取り上げたたため事件として広まるようになった。噂を聞いた民衆はユダヤ人に敵意を示し、暴動寸前の状態にまで陥ったという。

実際には、このような事件は発生しておらず、1人も行方不明の女性などいなかった。
反ユダヤ主義のデマだとわかると事態は沈静化した。

しかし、各地に噂として飛び火しており、1970年代のパリ在住の日本人の間でもオルレアンの噂が語り継がれていたという。パリへの旅行者を通じて、日本にも伝播していったものと見られる。

オルレアンの噂は日本の「だるま女」の原典になったとも言われている。