踏まれた三葉虫の化石

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1968年、アメリカのユタ州で奇妙な化石が発掘された。発掘された化石はカンブリア紀と呼ばれる5億7000万年以上前の地層から掘り出された三葉虫の化石だった。
カンブリア紀の地層から三葉虫の化石が掘り出されることは決して珍しいことではなく、その時代に生きていた証のため、ごく普通に化石が出ただけだと考えられていた。
しかし化石を詳しく調査していく段階で、明らかにおかしな点が見つかったのであった。おかしな点、それはカンブリア紀の地層から掘り出されたのにもかかわらず、三葉虫を踏みつけている靴のような足型が一緒に化石になっていたと言うことであった。
カンブリア紀と言えば地球上はほぼ海に覆われていた時代のため、その時代に生きていた生物は三葉虫などの節足動物ばかりで、もちろん人間などが存在しているはずはないのであった。
最古の哺乳類と言われるアデロバシレウスですら2億2500万年前に初めて地球上に誕生したたため、その時代に節足動物以外の大型動物がいたとは到底考えにくい。
恐竜の足跡ではないかと考える人もいたようだが、あの恐竜の登場でさえ2億5000万年前のため、カンブリア紀よりも約3億年も後に登場したことになる。
三葉虫を踏みつけた足型は、長さおよそ25~26㎝で一般的な成人男性の足の大きさとほぼ同等とされている。
かかと部分には片方だけ薄くなっているような跡があり、靴を履き続けてすり減ったような跡にも見えると言われている。
しかもその足跡にはサンダルの裏にあるような溝まで確認できたと言われており、明らかに自然にできた物とは考えにくい形状をしていたようだ。
足型の中には3匹の三葉虫が確認できるのだが、大きな石などで潰されたようには見えず、あまりにも綺麗に踏みつけられているため謎が深まるばかりである。
学者の中には足型ではなく、上に大きな三葉虫が覆いかぶさったまま化石になったのではないかと考える人もいるようだが、それならば踏みつぶされた三葉虫の化石と一緒に大きな三葉虫の化石も発見されていなければおかしいため、その節は有力とは言い難い。
三葉虫は海の中で生息しているため、もし足以外のもので踏みつけられたとしたらそれが一体何なのかは未だに解明されておらず、三葉虫を踏みつけれるような足を持った生物もカンブリア紀には生息していなかったため、結果的に踏みつけた物の正体は約50年経った今でも謎のままである。
ただ、地球上の生物の95%程度が絶滅したと言われるペルム紀には大型の両生類などがすでに地球上には存在していたため、もしもこの足型が付いた化石がペルム紀の物であれば、大きな足を持った両生類などが踏みつけた可能性も否定はできない。三葉虫もペルム紀に絶滅をしているので、その時代まではまだ三葉虫が存在していたからである。ただ、カンブリア紀の地層から見つかっていると言う点が、ペルム紀説を決定づけることが出来ない理由になっているようだ。
実はこういった足型の化石は世界各地で見つかっており、そのどれもが人類がまだ誕生していなかった時代の地層から発掘されていることから、オーパーツと呼ばれている。カンブリア紀に人類以外の何かがいたのか、それとも偶然出来た産物なのかは謎のままである。