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 宗教都市レバノン東部、ベイルートの北東約85キロに位置するベガー高原にはバールベックと呼ばれる古代都市遺跡が存在する。ユネスコによって世界遺産として登録されており、世界でも有数のローマ神殿跡であるが、このバールベックには人の力ではまず動かすことのできない巨大な石を使用した神殿が存在する。
 古代都市バールベックは約3000年前にフェニキア人によって築かれ、後にローマ人によって征服される。ローマ帝国はその地に残されていた神殿の基礎を利用してその上に神殿を建築し、その権力を誇示したとされる。しかし問題となったのはその基礎部分、バールベックを代表する神殿である「ジュピター神殿」の土台には到底人の力では動かすことの出来ない三つの石が使用されていたのである。
 この組石は通称「トリリトン」と呼ばれ、その意味は「驚異の三石」。その名の通り、この石は長さが約18メートル、幅は約4メートル。高さも約4メートルで、重さに至ってはなんと最大970トンもあると推測されている。間違いなく建築物に使われた切石としては世界最大である。そしてこの石を人力で動かすためには、約1万5000人もの人間が必要であるとの計算結果が報告されているのだ。常識的に考えてそれだけの人数をひとまとめにして力を加えることは不可能であり、どのようにしてこれだけ巨大な石を、それも三つも組み合わせて土台を作り上げたのか、現代の科学では説明をつけようのないオーパーツとされたのである。
 また、説明することのできない遺跡は他にもあった。このジュピター神殿から南西1キロほどにある石切場に、更に巨大な石が残されていたのである。この石は「南方の石」と呼ばれ、その大きさは長さが約21.5メートル、幅5メートル。高さは約4メートルであり、そこから計算された巨石の重さはなんと最大で2000トンにも及ぶとされたのである。
 いったいこれだけ巨大な石をどうやって切り出し、どうやって運搬したのであろうか。南方の石に至ってはなんと3万人以上もの人力が運搬に必要だとの調査報告もある。それだけの力を分散させずに石に加える方法も、2000トンもの重量の運搬に耐えうるロープもまず存在しない。現代でさえ、その運搬は不可能とされているのである。
 現在使用されている世界最大のクレーンのは、NASAがロケットの移動に使用しているもので、その最大運搬量は700トンとされている。もし仮にこの南方の石をどうにかして運搬しようと思うなら、この世界最大のクレーンを少なくとも3台は用意しないといけない。まさに現代技術の総意を駆使してようやく動かすことのできる存在なのである。
 バールベックは巨人族が建築したという伝説も残る古代都市。また、残された建築物や遺跡を詳細に見てみると、それはローマというよりも古代エジプトの建造物と似通っているという報告もある。古代エジプトにも人類よりはるかに巨大な人物の象が多く残されており、もしかしたらこの二つの文明に残されているのは巨人族がかつて存在したという確たる証拠なのかもしれない。少なくともこのバールベックに残された巨石たちは、人類では到底扱うことができない。かつて古代に存在した巨人族が巨大な石を操り、人類に神として崇められていたのではないだろうか。バールベックの巨石は、そんなことを考えさせられるあまりにも巨大なオーパーツである。