中編6
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雨の日……。

ザーザー。

さっきまで降ってなかったのに。

学校が終わると外はすごい雨だった。

しばらく私は学校で待機していたが、やむ気配はない。

しかたなく帰り道の途中のコンビニまで走ることにした。

本当にバケツの水をひっくり返したような雨だった。

コンビニに着いたころには全身はびしょ濡れ。

傘を買う意味があるのか悩んだが、家までの距離を考え傘を1本購入した。

ザーザー。

雨は好きだがここまでだと鬱陶しい。

歩くスピードを速めた。

しばらく進むと分かれ道。

片方はいつもの道。

片方は近道。

私は近道はあまり通らない。

ただ今日ははやく帰りたい。

風邪ひくし…。

近道からでいいか…。

私はその方向に進んだ。

ザーザー。

しばらく進んで行くと人影が見えた。

雨のせいで視界は悪いがどうやら女のようだ…。

近づくにつれはっきりとする。

女は傘をささず上を向いて道のはじに突っ立っている。

一目で人間じゃないと把握した。

こっちにしなきゃよかった。

私は少し後ずさり、女と距離をとりどうするか考えた。

戻るか…。

このまま進んだら何があるかわかったもんじゃない。

私は来た道を戻って行った。

分かれ道まで戻り、いつもの道へと進む。

ザーザー。

ちっ。

最悪だ。

しばらく歩くとまたさっきと同じ女がいた。

私はどうするかまた悩んでいた。

不意に女に目をやる。

目が合った……。

女はこっちをずっと見つめている。

距離は30、いや40メートルくらい。

女はこっちに手を伸ばした。

そしてゆっくり、徐々にスピードをあげこちらに向かってきた。

私はしばらく動けなかった。

だが距離が10メートルの時、身の危険を感じ後ろを振り返らず死ぬ気で走った。

私は後ろを振り返らずただひたすら元のコンビニまで戻って行った。

コンビニまで戻り息を整える。

手が微かに震えている。

どう帰るか…。

親呼ぼう。

私は携帯で親に具合が悪いと言って呼び出し、車で家まで帰った。

途中あの道も通ったが目をつぶっていた。

家に着いても雨はやまなかった。

親は仕事で私を送ったあと行ってしまった。

私は台所に行き、塩を正方形の紙に小さい山ができるくらいよそり、玄関のはじに置いといた。

念には念をだ。

あいつがついてくるかもしれない。

このやり方が効くかわからないがやらないよりはましだろう。

そうだ。

私は2階にあがり部屋の四隅に同じように置いた。

塩を台所に片付け、2階にあがった。

私はしばらく部屋でテスト勉をしていた。

雨音がすごい。

ピンポン。

客か?

1階に駆け降りる。

「はい」

ガチャ。

だっ誰もいないし…。

不意に横を冷たい風が通りすぎた。

背中がゾワッとした。

バタン。

ピンポンダッシュかよ…。

そんなことはないと思っていたがこういう時にはプラス思考。

はぁー…。

思わずため息がでる。

入ってきたか…。

玄関の盛り塩は吹き飛んでいた。

風ではないだろう。

私は2階にあがった。

部屋はまだ平気だった。

ほっと息を吐き、椅子に座る。

さて、勉強するか。

女のことは気になるが探すのは嫌だ。

ガタガタッ。

突然机が揺れた。

じっ地震!?

急いで身をかがめるが地震ではないようだ。

キィ。

部屋のドアが開いた。

来る!

急いでドアに手をのばす。

遅かった……。

さっきの女が上を向いて突っ立っていた。

全身ずぶ濡れであちこちから水が滴り落ちている。

「うわぁぁあ!」

私は慌てドアを閉めた。

ドアを引っ張られる。

力が強い…。

それでも踏ん張った。

鍵をしめ、部屋の隅に移動する。

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。

相手は何度もドアノブをひねる。

しーん。

しばらくすると音はやんだ。

あきらめたか?

ゆっくりドアに近づく。

ズン。

急に両肩に重みがはしった。

おっ重い…。

汗が頬を伝う。

肩から垂れる腕。

右肩に頭がある。

「うわぁぁああ!」

私はパニックになり、女を振り落とそうと試みるが離れない。

くっ。

あまりの重さに私は倒れ込んだ。

女の水が私の顔に滴り落ちる。

私はもがきにもがく。だがその抵抗も虚しく終わった。

身体が金縛りにあい、動けなくなった。

私は恐怖という恐怖を越え、少し冷静になれた。

しかし、もうなすすべがなかった。

ただうつぶせいでなことに感謝した。

女の顔を見なくてすむ。

私の背中でぶつぶつ何かを呟いている。

だいたいなんで私がこんなめに…。

なんて考えていたら突然女が私の髪を掴んだ。

そしてそのまま私をズルズル引きずっていく。

痛い!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

髪抜ける!

離せーー!!

すべて声になることはなかった。

ちょっと待って…。

このまま進んだら…。

階段!!

やばい、やばいよ!

おい、離せよ!

声にならない叫びをあげている私なんかお構いないなしに進んで行く。

髪痛い…。

あっやばい。

階段直前。

私は目を閉じた。

ガタガタガタン。

ガン。

ガタッ。

ガン。

ゴン。

ゲホッ…。

頭を強く打ち、私は気を失った。

……………………。

目を開けると真っ暗だった。

夢?

ここどこ?

辺りを確認しようと振り返ると女が上を向いて突っ立っていた。

「ぎゃ!」

思わず変な声をあげてしまった私。

女は首をガクンと下げ顔をこちらに向けた。

また叫びそうになるがそんなことより逃げなくてはならない。

私は自分の頬を思いっきり殴りつけた。

夢かどうかの確認。

……………痛い。

夢…じゃない?

いや…そんなことは…。

女は私を見てぶつぶつ呟いている。

私は逃げだそうとしたがそれよりも女のほうがはやかった。

女が私の首を掴み、締め上げる。

「ぐぇ」

死ぬ……。

意識飛ぶ…。

………………たのに。

えっ?

突然重く、低い声が私の耳に届いた。

「なっ…な…にが」

「許さない許さない許さない許さない許さない許さない貴方のせいで貴方のせいで私は……」

すごい形相で私を締め付ける。

私がいったい何をしたんだ!

女は一度手を緩め、また締めあげる。

その繰り返し。

死ぬ死ぬ死ぬ。

いっそ楽にしろ!

「あなた……だれ…よ」

私は声を絞りながら言った。

聞いてるか聞いてないかわからないが女はずっとぶつぶつ呟いている。

「貴方のせいで…」

「わた…し…貴方を知らない…」

女の手が止まるがまだ苦しい。

女は怒りに満ちた顔でこちらを見ている。

「…………忘れたとは言わせないわ」

見たくないが女の顔を見つめる。

いや、本当に誰よ。

知らないし…。

頭をフル回転させて考えても何も浮かばなかった。

「貴方のせいで私は死んだ…死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ」

「だからしらな…うっ」

また締めつけられる。

駄目だ。

聞く耳もたねー。

「じゃあ私が何をしたか言いなさい!!!あとは何をしてもいい!」

もう投げやりだ。

「…………………」

女は私を見つめ、黙っている。

やがて口を開いた。

「雨の日、私は貴方と会う約束をしていた。あの場所でね」

心当たりないんですけど…。

あの場所って近道か?

「どんなに時間が過ぎようと来なかった。

私はずっと待っていたのに……」

だから知らないよ。

「そしたら歩道に車が突っ込んできた。

私はハネラレタハネラレタハネラレタハネラレタ。

ソシテズットマッテイタ、ソシタラヤットキテクレタ、アナタヲミチヅレニスルノ」

「知らない!!

私は貴方なんか知らない!!

今日初めて会った、よく考えてみろ、殺されたのが私の歳の時だったとしても、殺した彼女は成長してるんだよ!」

私はありったけの声で叫んだ。

女は動きを止めた。

女の手が首から離れる。

ゲホッ、ゲホゲホ。

「きっとその人と私が似てるだけ…」

「………ウソダウソ……ジャアドコニ?」

そう言い、女は暗い闇の中に消えていった。

目を開けると階段の下だった。

起き上がろうとすると全身に激痛がはしる。

頭クラクラする。

親がくるまでこうしてるしかないな…。

とにかく助かった?

みなさんも気をつけてください。

人違いで霊に殺されかけるのは最悪ですから。

終わり。

怖い話投稿:ホラーテラー 桜さん

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