中編3
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死してなお 終

続きです。

湖にはもう誰も近づかなくなりました。あそこには女の怨霊がいる。行けば湖に引きずり込まれる。そう真しやかに囁かれはじめたからです。度胸試しといって湖に行ったり泳いだりする人もいましたが溺れて、後日水死体になって発見される…というのが後を絶ちませんでした。

そして、あの霊能力者が電車に飛び降り自殺したと聞きました。目撃者によるとフラフラ~としながらホームに近寄り電車が来たときにそのまま飛び降りていったと。体は綺麗に五肢にバラけて飛んでいったらしいです。

B君を苛めていた中心人物とされるCが交通事故に遭い死亡しました。その他にも何人かB君のクラスメイトが事故にあったりして大怪我したようです。

父親は、自宅の柱に自分で何度も頭を打ちつけて自殺という謎の死を遂げました。遺書と思われる傍においてあった紙には一言、「ゆるしてくれ」。

母親は父親が死んだ次の日から行方不明となりました。私が思うにもう生きてはいないでしょう。父親の娘に対する折檻、それを止めようともせずただ傍観していたのですから…。

そして唯一、生き残ったのは

A子の妹である、この私だけでした…。

私とA子…お姉ちゃんは小さいときからずっと一緒でした。どこに行くにしても何をやるにしても、仲良しの双子の姉妹でした。父親はA子のことばかりを可愛がりましたが、私はそんなことはまったく気にしていませんでした。お姉ちゃんがいればそれで良かったのです。お姉ちゃんの彼氏ができるとこっそり父親に言いつけて別れさせてもらいました。お姉ちゃんは私のもの、他人なんか必要ないんです。

お姉ちゃんも恋愛を諦めかけ、ずっと私のものになるはずだった矢先に現れたのがBでした。お姉ちゃんから惚気話をきくたびの嫉妬で腹が煮えくりかえる思いでした…。お姉ちゃんをあんな男に、ましてや犯罪者の家族なんかに渡すわけにはいかない。私はお姉ちゃんとBが付き合ってることを周囲にバラし、父親にも言いつけました。まさか、父親が暴力まで振るうとは思いませんでしたが、これで反省してさっさと別れてくれればそれでいいと考えていたのです。

けれど、お姉ちゃんはBと別れませんでした…。さすがにこれ以上傷ついていくお姉ちゃんは見てられなかったので、友達のCにBを率先していじめ、自殺に追いやってくれと頼みました。それ相応のお金は支払いましたがBがいなくなると思えば安いもんです。しかし、こともあろうに二人は一緒に湖へと身を投げ心中してしまったのです。私は絶望しました。すべてBのせいだと怨めしく思いました。そして湖の幽霊の噂を聞いた時…最後のチャンスだと思いました。お姉ちゃんが死んでおかしくなってしまった父親に湖の噂話を話し、霊能力者のことも持ちかけました。驚くほど順調に進みすぎて少し怖くなりましたが。

お姉ちゃんが死んであれから一年が経ちます。私が親戚に引き取られるのを拒んでまで、地元の汚い児童養護施設で過ごし生きてきたのも全て今日この日、お姉ちゃんの命日を祝いそして一緒になるためでした。

私とお姉ちゃんは仲良しなんです。小さい頃からずっと一緒に過ごして…大きくなっても…どこへ行っても…何をしてても…

死してなお一緒にいなくてはいけないんです。

…私の話はこれで終わりです。ここまで読んでくださってありがとうございました。私はお姉ちゃんが呼んでいるのでもういきますね。それではみなさん、さようなら。

-終-

怖い話投稿:ホラーテラー @さん  

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