中編4
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好みの旋律

霊感があり、あっち方面に詳しいばあちゃんにエピソードを聞いてみた。

いろんな相談に乗ったり、解決してきた沢山の事例はある。

しかし殆どがドロドロと、黒々していたり、嫉妬や利己的な諍い、恨みつらみや金に纏わる事が殆どを占める。

数少ないそうではない話。

ある時老夫婦が訪ねてきた。

夜になると必ず玄関の開く音がする。

家人は自分たち老夫婦と息子夫婦の四人で、すでに帰宅し、四人共々眠りについている。

玄関に行ってはみるものも、何もない。

誰もいない。

毎晩のように音はする。

誰かが気付いて玄関に向かうが、必ず何も起きていない。

一月程して気味が悪くなり、息子の知人の知人に霊能力者がいるという事から、紹介して来てもらった。

霊「この土地にいる水神である井戸の神様が怒っておられる」

霊能力者の指示で神主と巫女が来てお祓いをした。

これで収まると思って安心していた一家であったが、相変わらずに玄関の音は続く。

霊能力者に連絡を入れた所もう一度お祓いをしなければと答えられた。

最初のお祓いに五万も請求された事が引っ掛かっていた主はここで騙されているんじゃないかと疑う。

そこで檀家であるあじゃら様?(和尚さんの事らしい)に相談するとすぐに霊感商法か詐欺、または新興宗教だろうと言われた。

そして、ばあちゃんに依頼がきた。

一緒に懲らしめて下さいという事で。

後日件のぼったくり神主と巫女、いかがわしい霊能力者が再び呼ばれる日に同席した。

ばあちゃんは一発で「こりゃ完全に霊感商法だわ」と分かったそうです。

ばあちゃん

「霊能力者さん、あんた霊感なんかないでしょ?

失礼だけど背中見せてごらん。」

「随分な言い様ですね、私も霊視するのには自分の力を削ってまでやってるんですよ。

確かに神主さんが請求されたお金は高いとは思いますが、こちらとしても身を削ってしている事ですから、当然多少は高額にはなります。」

ばあちゃん

「だから、話そらさないで上着脱いでみて下さい。

シャツ一枚ならいいでしょう?

そもそも見せる為に掘ったんでしょ?その黒龍」

!!!

「えっ!

あ、あ、、、

なななんで!?

嘘だろ」

ちょっと間をおいて

霊「いや、まさか本物がいるとは。

お金はお返しします。

実はかくかくしかじかで・・・」

霊能力者ってのは勿論嘘でそもそも霊なんて信じていない。

元ヤクザだが今は違う。しかし生活の為にこうやって職にあぶれた人間を使って詐欺みたいな事をしているらしい。神主と巫女もアルバイト。

普通はバレたら即逃げるんだが、今回は本物にあったので謝罪した上で個人的に相談したい事があったので、認めたらしい。

で、結局この高額お祓いの件は片付いた訳だけど、肝心の「玄関の音」は何も解決していない。

ばあちゃんは仏壇に手を合わせて聞いてみたらしいけど、何も先祖様は不満はないらしい。

という訳で原因の調査の為に深夜を待つ事にした。

和尚さんが帰り、若夫婦が帰宅して五人で玄関で待つ。

すると玄関のガラガラの音がはっきりとする。

しかし玄関は開かれていない。

ばあちゃんだけはその時入ってきた存在を感じ取れた。

水子。

それも若夫婦の嫁の水子。

そして水子の霊は一言だけ歌って帰って行った。

「幸せを、願うその声に答えて」

と何やらメロディーみたいだったそうな。

すぐに嫁に

ばあちゃん「こんな感じのメロディーでこんな歌詞知らない?」

って質問をすると

嫁は驚いて呆然としてたらしい。

ばあちゃん「あんた子供堕ろした経験あるよね?」

また驚いて呆然。

そしてポタポタと涙を流しながら認めた。

しばらく経って落ち着いて語り始めた。

要約すると

 過去今の夫と遇う前に付き合っていた人がいた。

 妊娠して婚約をした。

 しかし高速運転中に居眠り運転で大事故を起こし還らぬ人に。

 ショックがあまりに大きくそのストレスから流産してしまった。

 何年かして立ち直って、この家に嫁いだ。

そして歌は彼との思い出の曲で玉置浩二のなんたらって(失念したらしい)題名らしい。

ばあちゃんが言うには元婚約者は後の供養もしっかりしていて成仏してるが、水子はまだ。

水子の霊は父親である元婚約者がそばに迎えに来ているので成仏しかけている。

しかし、どうしても自分と父親(元婚約者)を思い出して欲しくて、玄関を開ける音を出した。

しかし誰も姿は分からないし、気付いてもらえない。

だから唯一知っていて、心地よいメロディーを歌ったけど気付いてもらえない。

そして今日に至る。

 

その後玄関から音がする事はなくなったそうです。

月命日に花とその曲を流して供養するようになったとか。

今の旦那である息子も理解を示し、二人の冥福を祈っているそうです。

後日談として、夫婦には女の子が生まれたそうです。

不思議な事に今三歳ですが、童謡は歌わないのにこの曲は完璧に歌うそうです。それも必ず最後の所で涙を流しながら。

ばあちゃんに相談した所、それは嬉し涙だから問題ないそうです。

しかし、最近誰が歌ってるのか分かり、テレビで姿を見せる彼を見るとうれしそうに飛び跳ねるらしい。

暖かい家庭を作っている彼を見せてあげたいなと思う今日この頃です。

怖い話投稿:ホラーテラー 松葉さん  

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