短編2
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暗い海に沈む白

以前『流れ星の夜』を投稿させて頂いた者です。

心霊体験?と言うか不思議な体験をまた投稿させて頂こうと思います。

例によって例の如く星を見に行こうとせがむ彼女に押し切られ、今度は田舎の海に行く事に…

うだるような暑さが続く毎日に少々、参っていた俺は良い気分転換になるだろうと思っていた。

海に着くと髪を頬を撫でるように潮の香りがする風が過ぎ去って行った。

これだけの水が近くにあると流石に涼しいなぁ~、なんて思いながら満天の星空を見上げた。

普段、街では見えないような小さな星も良く見える。

綺麗だ、と純粋に思った。

暫くぼーっと夜空を見上げていた俺は傍らにいた筈の彼女の姿がない事に気が付いた。

「おいおい、一緒に星見るんじゃなかったのかよ(苦笑)」

俺の呟きは波の音に掻き消された。

ポケットから煙草とライターを取り出す。

その内戻るだろうと思い、座りながら一服し始めた。

それとなく海を見る。

「?…何だ」

暗い海に白い人影。

白のワンピースを着た女だと辛うじて分かる。

俺は焦って煙草を落とした。

何故なら彼女が今日着て来た服が白のワンピースだからだ。

「何やってんだあいつ!あんな沖の方に」

俺は慌てて走り出し、海に入った。

波に揉まれながら必死に前へと進む。

不意に違和感を覚えた。

何かがおかしい。

…何だ?

俺はハッと気が付いた。

何で白のワンピースを着ていると分かる?

明らかにその白い人影は海の上に立っている状態だった。

俺は慌てて踵を返し、岸を目指した。

すると足に何かが絡み付い…いや、掴まれた。

俺は暗い海に引きずり込まれた。

パニックになりながら、溺れながら俺が目にしたのは暗い海の底に沈む白。

あれは白いワンピースの女…

次に目が覚めたのは砂浜だった。

砂の上にでん、と座っている俺の横で彼女が俺の肩にもたれ掛かるように眠っていた。

夢…?

いや、夢じゃない。

足がまだ痛い。

俺の足首には無数の手の形をした痣があった。

暗い海に沈んで行ったあの女。

悲しそうに、そして安堵したような表情で俺を見ていた。

怖い話投稿:ホラーテラー 村雨さん  

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