中編3
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あなごんさま

あんまり怖くないかも。

すみません、

田舎の話。

俺の田舎は自殺の名所が多い。

目の前の山からは飛び降り自殺、首吊りが頻繁に起きたし。

俺んちの爺ちゃんが山に山菜取りに行った時、下を向いて山菜とってたらそこだけ雑草が枯れてて何だろうと思って上を見上げたら首吊り死体があったとか結構あった。

俺も一回首吊り死体見たことある。

俺からすれば家から見える距離範囲で自殺なんてすんじゃねえよって感じだったけど。

これも小学校ん時の話なんだけど、俺んちから学校までは片道大体2キロくらいで。歩いて40分くらい。

全校生徒の中で俺んちが一番遠かったんだ。

通学路には、人通りの少ない場所って言うかほぼ誰も通らない場所もあって、帰り道が一番嫌いだった。

無縁仏の墓がなぜか竹林の奥の方に密集してたり、そのすぐ横に小屋なのか家なのかわかんないボロボロの建物があったり。

子供ながらにそこだけはなぜか皆近づかなかった。

その近くに『あなごんさま』って言う小さいトンネルがあるんだけど、昼間でも真っ暗。

途中で行き止まりだから、人も車も通れない。

神様が奉ってあるのか、何なのか、あなごんさまのトンネル自体何なのか解んなかった。

あなごんさまのすぐ横に石段がある。

そこをあがると廃墟がある。

それがまた不気味で、生活感はそのまま。

布団はひきっぱなしだし炊飯器、食器、人だけそのままいなくなったって感じで。

それがすっごい不気味なんだよ。

まず窓ガラスが粉々。

玄関に靴がある。

それも子供の。

布団もかびだらけだし。

なぜこれを知ってるかと言うと、一度だけ友達と外から眺めてみたから。

もちろん怖くて中には入ってない。

俺が生まれた時からあるからもう十数年そのままって感じ。

噂では夜逃げした親子とか借金取りに殺されたとか色々持ち上がってた。

ただあの有名な稲川○○もそこに来たことあるらしくて、ヤバイって言ってたらしいから殺されたか心中したかのどっちかだと思われる。

前置き長くなったんだけど、こっから実体験。

終戦記念日が近かった夏。

小六の時、いつものように歩いて帰宅してると何か違和感がある。

視線と言うかついて来られてると言うか。

後ろを向いても何もいない。

しかしあなごんさま付近になったとき、ピンっと背筋が凍った。

ヤバイ、何かいる。

怖くて横を向けない。

俺は夢中で足を早める。

辺りは暗いし、必死で違う楽しい事考えながら歩いた。

もう少しで車道にでる。

その時だった。

『…ネエ、カエシテ』

耳元で女の人の声がした。

俺はとっさに声より足が出た。

怖くて怖くて涙目になりながら走った。

カエシテ?

返して?

何を?え?

よくわかんないけど、俺は次の日からその道を通る時は夢中で走った。

小学生の俺には理解しがたい出来事で、何日か悩んで爺ちゃんに相談してみた。

『返して、じゃなくて還して、じゃねえか?』

爺ちゃんは言った。

『あなごんさまは俺がこの土地に来る前からあったんだよ。あなごんさまの中をよく見てみろ。白い仏さんがあるから。母親が子供を抱いた仏さんがな』

それが親子で隣の廃墟と関係があるのかは定かではないが、俺は爺ちゃんに付き添ってもらい花を置いた。

不思議と怖い感じはしなかった。

その日から俺はあなごんさまの前を通る度に、手を合わせるようにした。

もう二度と声が聞こえることはなかった。

今思うと多分トンネルじゃなくて防空豪だったのかな?

余談だけど隣の廃墟は程なくして取り壊された。

取り壊しに関わった近所のおっちゃんが原因不明の病にかかったとか何とか。

しかもそのおっちゃんが小さい頃石を投げてガラスを割った張本人らしい。

…噂だけど。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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