短編2
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蟲 後編

道彦「いってぇー!」

俺「はいはい」

俺は呆れ気味にそう言うと、もう一度道彦の背中に目を向ける。ソレが取れたところには穴が開いていた

……

おかしい

明らかに穴が開いている。それにさっきは4個しかなかったソレが今は10個ほどになっている

道彦「お前なにしたんだよ!無茶苦茶痛いぞ!」

俺「えっあっ…」

俺は道彦の背中を凝視していた。ソレはどんどん増えていく。気付けば道彦の背中はソレで埋め尽くされていた

道彦「おいどうなってんだよ!教えろよ!」

言葉が出ない。どう説明すればいいのか……

俺が言葉を選んでいると道彦が苦しみだした

道彦「痛い痛い痛い痛い痛い!」

狂ったように痛いと繰り返す

俺はどうしていいのかわからない。すると突然、道彦の動きと叫びが止まり今度は震えだした

その震えに呼応するようにソレは道彦の背中から次々に落ちていく。道彦の背中はまるで蜂の巣のように穴だらけになった

全て落ち道彦の震えが止まると、今度はその穴から色々な虫が這い出してきた

次の瞬間、俺は外に飛び出していた

だがすぐに道彦を置いて逃げ出した事を後悔し部屋に戻った

そこに道彦の姿はなかった。大量に這い出していた虫も見当たらない。俺は部屋の中で一人呆然と立ち尽くした

あれから四年。俺は田舎のばぁちゃんに頼んで山の土地を少し分けてもらい、道彦の墓を建てた

俺は既に道彦はこの世にいないと確信していたからだ

行方不明になっている道彦には葬式もなければ墓もない

道彦は虫に酷いことをしてきた。殺されても文句は言えないだろう。でも俺にとってはかけがえのない親友だった。だから俺が墓を建ててやらないと

しかしそれは自分への言い訳。墓を建てたのは道彦の為と言うよりは自分の為だった

もちろん俺の建てた墓に道彦はいない

俺「ごめん俺だけ逃げて……助けてやれなかったな」

謝罪をした後、俺は墓の前に座り一人喋り続ける。いつも道彦とそうしていたように

しばらくすると空が赤らみ始めた

俺「もうこんな時間か。じゃあな。また来るよ」

そう言って立ち上がろうとした時、足元に蟻が一匹いるのに気づいた

俺は蟻を踏まないように気をつけながら立ち上がると、道彦の墓を後にした

怖い話投稿:ホラーテラー Mさん  

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