私「どこのお寺に行くんですか?」
叔「○○町よ」
叔「お寺の詳しい場所はわからない。そのお寺に御縁のある方から、旦那さんが貰ってきたらしい。旦那さんは入院中だからね。なにより内緒でやってるわけだし。」
叔「大丈夫。3人いればわかるわよ。」
夏の19時。車のクーラーは涼しい。
雨は霧雨に変わっているが、いつもの同じ時間に比べれば暗い。
目的地が分からないので町内をさまよう。
しばらくして、Mが呟く。
M「多分、この道であってるよ。」
私「何で?」
M「なんとなく。甘い線香のような匂いがする。」
言われると確かに甘い香りがしている。どこかで嗅いだ香りだ。
雨とクーラーの為に閉めきった車内。
私「キンモクセイの香りだ……」
笑いながら
叔「ね。3人いれば分かるって言ったでしょ?」
匂いに導かれ5分ほど走る。
私「ついた……」
車で走る5分間、キンモクセイの匂いを頼りに辿り着いた。
叔「あんた逹は勘違いをしてる。キンモクセイの咲く季節知ってる?」
叔母様が笑いながら
叔「秋よ。」
―『あんた逹、今日の出来事は忘れていくから安心しなさい』
どのようなお寺だったのか、どんな場所にあったのか、視覚的な記憶は殆ど思い出せない―
叔「あんた逹は車にいなさい。」
叔母様が車のドアを閉めた瞬間だった。
キーーーーーーーン
金属音。耳鳴りだ。耳が痛い。Mも同じ症状のようだ。
コンコンっ
心臓が止まった。
叔母様が窓を叩いている。
叔「あんた逹、水晶玉握っときなさい。」
私「どうかしたんですかっ?」
叔「這っている人。こっちを見てる。性別はわからない。」
性別は何でもいい。
叔母様が帰ってくる10分間の戦い。
車を叩きつける雨音は霧雨の音ではない、車内にはズルズルと擦れる音、揺れる車、耳鳴り、痺れ、睡魔、全身が鳥肌になる、寒い、鏡なんか見れるはずもない、キンモクセイの香り。
突然の静寂。
叔「ただいま。よく頑張ったわね。帰るわよ。」
私はアクセルを踏み込む。
叔「そんなに急がなくても大丈夫よ。相手は這ってるんだから。」
私はアクセルを踏みつけた。
叔「真っ直ぐ帰っちゃダメよ。ついてきちゃうから。来た道で帰ってもダメよ。」
私達は遠回りをし、2時間以上かけて叔母様の家に到着した。
叔「真相聞きたいかい?」
怖い話投稿:ホラーテラー さん
作者怖話