中編3
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幽霊屋敷の思い出

子供のころ貧乏だった……。

オヤジが病気だったから、それが原因かも知れない。

遠縁の親戚を頼っては引っ越しの繰り返し。

多分、家賃は最低ランクだったんだろう。

栃木県の、名前に「鬼」がつく温泉で有名な町に引っ越し。

これが見るからに、絵にかいたような幽霊屋敷……

まず、家墓っていうの? あれが家の敷地内に普通にあった。

ゆかりのある親類の墓ならともかく、知らない家の墓なんか不気味なだけだ。

当時は汲み取り式の便所こそ珍しくなかったけど、なぜか便所は家の外。

それどころか、よりによって墓のとなり。

毎晩が肝試しのようだった。

家の中はっていうと、まず入って小汚い台所の先が居間なんだけど、

北側の壁面に古びた箪笥が三つ並んでて、その後ろが色褪せたカーテン張り。

あからさまな開かずの部屋。

もっとそれらしく隠せよって突っ込みを入れたくなった……

そりゃ覗き見するのが子供の義務でしょ。

アネキと一緒に探検したよ。

想像したよりも広いスペースにいわゆる土間っていうのか?

畳がなくて直に湿った土の地面。

お約束の柄の長いスコップが2本。

栃木に海はないはずなのに、なぜか投網が放置されていたのと、

散弾銃の空薬きょうが数発……

想像力は駆り立てられたものの、まあ拍子抜けだった。

それよりもヤバかったのは、階段を上り切ったところにあった2階の押入れ。

引き戸じゃないので開ければ2階に通れないし1階で使うには階段が急過ぎ。

用途が不明な上に、なんかヤバイ雰囲気を発散してて、ここがこの家の一番の心霊スポットっぽかった。

閉まっていても、中から視線を感じるっていうか、押入れ自体がドクンドクンと脈打っているようにさえ見えた。

子供部屋は2階にあったんだけど怖くて使えない。

アネキは普通に使ってたんだけど、アネキはそういうことを感じない人だったんだろう。

オレは住んでいる間、数えるほどしか2階にはいかなかった。

寝るのはオヤジ達が寝泊まりしていた、開かずの部屋があった居間。

一応、オヤジの容態が心配なので傍にいてやるというのが名目(苦笑)。

とてもじゃないが2階はヤバそうな気配だった。

というか階段に目線を向けるのさえイヤだった。

一人で1階にいると、まるでそれが当たり前のことのように2階で物音がするんだ。

それもネズミじゃねぇ? なんてレベルじゃなくて、ドシンドシンと運動会か喧嘩かってほど。

古い家だったから家じゅう振動で揺れるくらいの騒ぎ……

その割にはここに住んでいる間に怖い目にあったのは、

1階の台所のシンクのところにババアがうずくまっていたのを見たのと、

アネキの部屋に壁紙かお札かっ、てくらいに張り巡らされていたシ〇ガキ隊のポスターがある日全部はがされてたことくらいかなぁ?

アネキ、烈火のごとく怒り狂ってたけど、オレじゃないってば……

今年の正月、姉夫婦が遊びに来た時に昔話になって、この幽霊屋敷の話題になったんだけど…

「アンタが怖がると思って今まで言わなかったけど、アンタが使ってなかったあの部屋、知らないオジさんが横たわっているのを何度か見たんだよねぇ…」

なんだ、アネキも見えてたんじゃん………

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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