短編2
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神職の一家 (CP) 3

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そんな時、本家の当主と次代当主だけで代々行ってきた当主継承に関わる祭祀を10歳になる長女が

失敗するという事件が起こった。(本家は血統を存続させることに重きを置いているので、昔から

男女の区別なく長子が家を継いでおり、女性神職が許されなかった時代は、婿を取ってX神社の

建前上の神職として据え、本家が代々祀るZ神社の祭祀は女性当主が行っていたらしい。)

長い本家の歴史上、次代当主候補が神様にそっぽを向かれたことはほとんど起こったことはなく、

急遽、本家と分家の神職を一同に集めて追加で祭祀が行われることになったそうだ。

その時Aさんはチャンスだと思った。

長女が失敗すれば、次は長男の順となるが、次代当主確定の祭祀は、当主の子息が10歳に

なった時に行われるので、長男が10歳となる来年までは次期当主候補は不在となる。

この隙に、自分を神様に認めさせることがが出来るのではないかと厨二病全開なことを考えた。

Z神社で祭祀を行う際に読み上げられる祝詞には、本家と分家に伝わるZ神社の主祭神のみに

奉上するための独自の定型化された長い祝詞がある。

祝詞の内容自体は分家の人間も知らされてはいるが、本家の当主と次期当主以外は、当主が

許可した時以外はその祝詞を読み上げることは禁じられている。

ここに本家が特別に神様に守られている秘密があるのではないかと考えたAさんは、

それを追加の祭祀の際に、読み上げて神様の気を惹こうと考えた。

しかし、当時のAさんは冷静さを失っており、「祝詞自体は知っておく必要があるが、当主と

の許可なしに読み上げてはならない」という習わしの意味することを良く考えていなかった。

そして追加祭祀の当日、一般的な祝詞の奉上が終わり、例の祝詞を当主が読み上げ始めたのに

あわせて、こっそりと小さな声で祝詞を読み上げ始めた。

それから暫くしたころ、突然視界が一瞬グニャリと歪んで、意識が遠のくのを感じ、薄暗い拝殿の

鏡の上に幻のように黒い直径1M程の球体上のものが浮かんでいるのが見えた。

その球体には人口衛星の周回軌道のように幾重もの注連縄が巻かれている。

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怖い話投稿:ホラーテラー 匿名 ARGENTINAさん  

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