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物凄い怖気を全身に感じながらも「ほう、これが本家の祀ってる神様の御姿か」などと
Aさんが思っていると、球体の注連縄の隙間から黒い液体のようなものが漏れ出し
それが影のように延びてきて、取りすがろうと当主に近づき始めた。
その影は当主から一定の距離のところでまで近づいたところで、まるでそこに見えない壁が
あるかのように全く近づけないようになった。
その時Aさんは気付いてしまった。
あれが何故当主に近づくことが出来ないのか?当主には邪なものは近づけない・・・
つまり、あれは神様などではない。
そのことに気付いた時、我が身に感じていた怖気が急に強くなった気がした。
全身の毛が逆立つかのような悪寒が体を駆け抜ける。
「見つかった!」
Aさんが確信したと同時に影のようなモノがゆるゆるとこちらに向かって動き始めた。
それはゆっくりとだが確実にこちらに近づいて来る。
しばらくしてその影が膝先にまでに到達した瞬間、目の前が真っ暗になった。
それと同時に両目、両耳、鼻に激痛が走った。
赤熱するまで熱した鉄の棒を両目、両耳、鼻の穴に突き刺したらかくやというほどの痛みだった。
多分あまりの激痛に絶叫していた。
その激痛のさなか、ほかの感覚など消し飛んでいるはずが、触覚などないはずの脳を直接手で
まさぐられるかのような感覚があり、それと呼応するかのように引付けでも起こしたように
体が痙攣しているのを感じたという。
激痛に苛まれ、徐々に薄らぐ意識の中で、声が聞こえた。
「イッポン・・・ツナガッタ」
次にAさんが気付いた時には、夜は明けており右腕にギプスをされ病院のベッドにいた。
医者からは、石段から足を踏み外して転んで右腕を骨折し、その拍子に頭も打ったらしいので
一応CTを撮ったが、問題ないようなので退院しても大丈夫だと言われたので
Aさんは、仕事が終る時間を見計らって、本家の当主の下に顛末を聞きにいった。
その時に聞いた話をかいつまんで書くと以下のようなものだった。
・第三者から見たとき自分の身に何が起こっていたのか?
⇒Aが突然絶叫して、正座した姿勢のまま痙攣をはじめ、暫くして右腕を上げたかと思ったら
右腕だけを無茶苦茶に振り回し始めた。
その後、右腕の動きがピタリと止んだと思ったら、関節の可動する反対方向に腕が捻じ曲がって
嫌な音を立ててへし折れ、また全身痙攣を始めた。
その間、当主は祝詞を読みあげ続けており、祝詞を読み終わると同時にAの痙攣は止まった。
その後、Aさんの父に抱えられるように病院に運ばれた。
・黒い球体のようなものは何だったのか?
⇒本家が代々封じ続けているもの。正体はわからないが、それは非常に力を持っており
その力の一端に触れた者は、治癒不可能な心身喪失状態に陥る
それは祟り神などと違って対象は無差別で、ただそこに存在するというだけで人を狂わせる
影響範囲は広範で、少なくともZ神社がある町を中心にその周囲の町にも及ぶ
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怖い話投稿:ホラーテラー 匿名 ARGENTINAさん
作者怖話