中編4
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夏なので

暇つぶしに読んでいただければ幸いです。

夏になったら、よく出回る怖い話の特集を組んだ雑誌。

中には、1000円ちょいでDVD付のものがある。

決まり文句は「お祓い済みですが、何が起きても自己責任でお願いします。」

まぁ、大抵はたいしたこと無い有名なシーンが映ってるのがほとんど。でも、暇を持て余した人にはちょうどいいスリルのある暇つぶしになる。

孝介は札幌で一人暮らしをしている専門学生で、その頃は夏休みの真っ最中だった。

同じ専門の友達呼んで、このDVDの観賞会(というか、宅飲み)が始まった。

男五人の何とも華のないメンツ。

まぁ、皆酒でも飲みながらグダクダしながら、みてた。

内容は当たりだ!と孝介は思った。

死体の映像や今までみたことも無い心霊映像。それに、きち○いの自殺の瞬間。

加えて、1人超ビビりの奴がいてDVDが、それでは、もう一度…と幽霊が出てくる度に

「ゔおーーー!」

と、叫んで余計に怖い。

「いやいや、てっちゃん。ビビりすぎだから笑」

「うっせーな、叫んでこのスリルをあじわってんだべや!」

とシャウトする哲哉の手には尋常じゃない程の汗。

「いやいや、意味わからん笑」

などと談笑しているうちに、一時間の内容が終った。時間は夜の11時。

まだまだ、飲み足りないと酒を調達する組が買出しに出ていった。

孝介は酒を調達する組だった。

悪ノリで居残り組にドッキリを仕掛けようと話し合った。

まぁ、よくあるパターンで。

ポン酒やらウイスキーと一緒にお線香を買った。

そして、いざマンションへ!

孝介が先に部屋の中へ、あとの二人はそれぞれ線香を焚いてゆっくりと部屋の中へはいった。

ワクワクして中に入った孝介は二人にこう言った。

「いやー、そーいやいい忘れてたんだけどさぁ、この部屋出るんだよね~」

ニヤニヤしながら二人の様子を伺った。

しかし、なにやら2人とも小刻みに震えて反応がない。

線香が効いたのか…?それにしても、一体…

半ば孝介も怖くなり、

「おいっ!冗談だよ!!線香はあいつらが玄関で焚いてるんだよ!」

と、ネタバレしたのだが、玄関の2人も線香を手に持ち固まっている。

ただ、一点。TVの方をみて。

さっきのDVDが流れてる。少し止まったり、テープでもないのに、画面が荒れたりしながら。

「お前ら、また見てたの?」

と、玄関にいた明が言った。

さっきまで元気だったあの哲哉が震えながら、やっとこう言った。

「勝手に動いたんだよ。突然再生されたんだ…」

「はっ?!」

「頭がいたい、お前らが帰ってきてから変な音がする…」

と、居残り組の雅人が言った。

「変な音?」

言われたら、確かに…する。

低く響いている。何かの楽器のようだ。

「あぁっ!頭痛い!線香消して!部屋のすみに塩でもまいてよ!」

哲哉が耐えかねで叫んだ。

言われるがまま玄関の2人は台所へ。

ふと、音が強くなった。

これは、例えるなら螺貝のような、低い音。

水を出そうと2人は蛇口をひねった。

ごぼ、ごぼ、ごぼぼ、、、

つまった音がする。

螺貝の音も大きくなる。

「う、うわわぁぁぁ!!!」

沈黙をさく、2人の叫び声。その場にいた皆は糸が切れたように裸足で外へ飛び出した。

「な、なした!!!?なしたの?!」

「やべぇ、見ちゃった!呪われる、呪われる!」

何かを見た2人の目は血走っている。しきりに頭をかきむしってそう叫んだ。

「台所の排水口に、人の顔があった!そいつが、低く唸っていたんだ!!!女だった!覗き込んだ俺たちの目を見て睨んでいた!」

その日は2駅離れた雅人の家に転がり込んだ。ヤロー5人で。

雅人は兄と二人暮らしで、この兄貴は霊感がある。

家に入るなり、この兄貴に頭から塩をぶっかけられた。

何人か連れてきていたらしい。

「あほか。あそこは火葬場の跡地だ!だから、あの駅周辺は場所がいいのに安いんだよ!」

と、こっぴどく怒られた。

確かにそうだ。家の近くには墓地もある。でも、まさか火葬場なんて…。

そんな場所でほぼ実写(そう書いてあった)のDVDなんか見たから共鳴したんじゃないか、と。

次の日の朝、その雅人の兄貴を連れて6人で俺のアパートへ行った。

DVDは止まってた。

ただ、黒い画面が広がるその奥に台所がうつった。

一瞬だが、台所からは手が出ている。白く細い女性の手。

雅人の兄貴以外、その場にいた皆が硬直した。

兄貴は持ってきた塩をひとつまみ、プレーヤーから出したDVDにかけた。そして、予め用意したペットボトルに(酒が入っていた)また塩をどっさり入れて溶かした。

そして、DVDを台所に置いた。

排水口から伸びた手はきっとDVDを掴んだんだろう。また、暗いTVに一瞬手が伸びたように見えた。

その瞬間、兄貴は持っていたペットボトルを排水口めがけて勢いよく流し込んだ。

ゔぁぁぁぁおぉぉぁぁぁぁぁぁー

昨日の螺貝のようななんとも言えない音が大音量で鳴った。

いや、それは低い人のうなり声にも聞こえる。

ごぼ、ごぼ、ごぼ、、、

やっと静かになった排水口を孝介は覗き込んだ。

DVDは少し錆びたように赤黒くなっている。引っかいた爪のあとが残っていた。

それからは何事もなく、いつもの部屋に戻ったのだが、一週間後、孝介はほかのアパートに引越しをした。

そして暫く、彼の部屋にはTVが置かれる事はなかった。

 

怖い話投稿:ホラーテラー 峰子さん  

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