中編3
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親孝行

幽霊とか出てこないし

怖くありません

長くてもよければ

どうぞ

私には父親がいません

私が6歳の時にガンで死にました

私は父のことはほとんど覚えていません

正確には忘れてしまいました

父がガンになり

母親は必死に看病しました

毎日片道三時間かかる病院に通い

不安から夜も眠れず

毎日ただただ頑張っていました

しかし結局父は助からず

頑張り続け報われなかった母は少し精神を病んでしまいました

しかし周りの支えもあってか母は回復し

すぐに元気になりました

しかし心の傷は深く

父親の話は我が家では自然と誰もしませんでした

私はと言うと

人が死ぬと言うことをまだ理解していなくて

死んじゃったんならしょうがないじゃない

みんないつまでメソメソしてんのよ

くらいの勢いでした

今思うと強く優しかった母があんなにもうろたえている所を見て

自分がしっかりしなければならない

もお私にはお父さんはいない

大丈夫

お父さんなんかいなくても私は頑張れる

と自分に言い聞かせ思いこんでいたんだと思います

母は時々

ごめんねお父ちゃん死んじゃって寂しいよねごめんねと哀しそうな顔で言ってきました

そのたびに私は

はぁ?何言ってんの私はあんたの子なんだから別に父親なんかいなくたって平気だよっ

と照れ隠しと母に元気になってほしくていつもふざけて返していました

そんな生活をし続け11年たちました

なんとか親子2人

ささやかながらも幸せな生活を手にいれることができました

いまだに父の話を母とすることはありません

そんなある日

夢を見ました

夢の中で私は誰かと向き合っています

顔にはモヤがかかっていて見えません

何故だか身長も体型もよくわかりません

でも誰かと向き合っています

その誰かは何も言いませんが何かを私に伝えたそうにしています

なんだかそんな気がします

しばらくぼーっとしていると

ああ、この人お父ちゃんだと急に思いました

根拠はないけれど

絶対にそおだと思いました

そう思った瞬間

目が覚めました

起きてみると私は泣いていました

私はどうして父親の夢を見たのかどうして父親はあんな姿をしていたのか

しばらくぼーっと考えてみました

ああ、私

自分の父親の顔覚えてないや

顔だけじゃない

身長はどのくらいあったのか

どんな喋り方だったのか

どんな声だったのか

どんな人だったのか

ショックだった

自分でも気付かない内に

忘れていた

忘れていた?

自分で消していたのかもしれない

父親のことはすきだった

厳しく強い母は私をよく叱った

そんな私をまあまあいいじゃないかと言ってくれたのは父だった

すきだった

母と同じくらい

大好きだった

母に笑ってほしい

元気になってほしい

だから父親なんていらない

私には父親なんかいない

いなくて平気大丈夫

絶対に寂しい顔なんてしない

父が死んだあの日から私の絶対的なルールだった

正しいと思っていた

そおすることが絶対だと思っていた

でも、、、父のことを何も考えていなかった

顔も声も喋り方も

忘れてしまった

消してしまった

優しくしてくれたことも

父のことを大好きだったことさえも

忘れかけていた

きっと父は夢の中で

私に何か伝えたかったのだろう

でも私が父の声を忘れてしまったから

伝えることができなかったのだろう

そお思うと涙が止まらなかった

今度母に私から父の墓参りに行こうと誘ってみよう

母はきっと驚くだろうな

もしかしたら悲しい顔をされるかもしれない

そしたら違うことで元気にしてあげよう

母にはたくさんたくさん優しくしていこう

だから父の墓参りに母と一緒にたくさん行こう

たくさんたくさん両親に親孝行しよう

こんな娘でごめんね

お父ちゃん

お墓参り行くからね

おわり

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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