中編6
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俺と弟

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祖父母の住む田舎は「サギョウゴ様」と言う神様を祀ってるんだ。

サギョウゴの漢字は忘れてしまったが、土地を護り豊穣や繁栄を与えてくれる神様とか他にも諸説あるらしい。

サギョウゴ様は人々の願いも叶えてくれる。願い事を叶えたら必ず使者を送って伝えにやってくる、この時に謎が解けなければ魂を持って行かれる。

その使者の名前は……

前置きが長くなりましたが以降は私の体験談です。

私は社会人になり仕事も人間関係も満足し日々充実して幸せだ。そんな中で纏まった休みが取れたので田舎の祖父母の家に泊まりに行く事になった。

私には高校一年生の弟がいるが弟は高校に入り1ヶ月程で不登校になり、部屋から殆んど出てないので弟も田舎へ連れて行く事に。この話を切り出した時に父も母も心配そうな顔をした。

弟は意外にも快諾し、折角の夏休みなのだからと珍しく乗り気だ。

その時は思いもしなかった…後々の事なんて。

田舎へ向かう車中で私は数年ぶりに祖父母に会える事を楽しみにしていた。

私「K(弟)、何で学校いかないの?」私はバカみたいにストレートに聞いた。

K「別に…」

私「お父さんもお母さんも心配してるのは解ってるだろ?」

K「…。でも兄ちゃんは心配し過ぎ…俺の事解ってないし」

私「わかんないから聞いてるんだろ?親に言えないなら俺に言えよ」

K「……」

なんとなく気まずい重い空気になり、私は話題を変えたりしながら祖父母の家に到着したのは夕暮れだった。Kはあまり話す事はなかったがずっと暗い顔をしていた。

祖父母は笑顔で迎えてくれて自然溢れる空気もうまい、その日は風呂入って夕飯にして寝る事にした。車に酔ったのか到着してからKの顔色が悪かったのも気になった。Kが食欲がないから食事はいらないと言うので、私は祖母に先にKと私の二人の布団を敷いておいといてとお願いした。

祖母は心配そうな顔をしたが返事をして、Kはそのまま食事をとらずに祖母の後に続いた。

私は風呂に入り祖父母と食事をして近況報告をし、団らんして楽しい時間を過ごした。祖父母は変わらず優しくて祖母の手料理は美味しかった。

ただ少しKの話になると祖父母は心配そうな悲しげな顔をしてた、私は祖父母に気を遣わせたくなかったからKの話は避けおやすみの挨拶を済ませ、先に寝ているKがいる部屋に向かう。

並んだ布団に寝ころぶと直ぐに眠気が来た、そんな時

K「ここはいつ来ても嫌な感じだよ」

私「なんだ起きてたのか?じいチャンばあチャン嫌いか?」

K「嫌いじゃない。はぁ…兄ちゃんは鈍いよな色々と」

なんて溜め息つかれて正直ちょっと腹が立ったが、Kの体調のほうを心配した。

目が覚めたのは昼頃だった。運転で疲れていたのか爆睡していたみたいだ。隣を見たら布団にKは居ないので私より先に起きたんだろうと考え、居間に行くと祖母が居た。

ご飯を食べ終えて祖母にKは何処にいったか祖母に聞こうと思ったらKと祖父が一緒に帰って来た。

私「何処に行ってたの?」

祖父は社に行っていたと答えた。

K「サギョウゴ様の社だよ。兄ちゃん忘れたの?」

私「そういえば社懐かしいなぁ、そんなのあったな。でもサギョウゴ様って何だだっけ…」

K「ま、行けば思い出すかもね」

そう言ったKは不登校以前の屈託のない笑顔で、私はただそれが嬉しくて嬉しくて泣きそうになったのを我慢した。

私「んじゃ俺も今から社に行ってくるか」

そして私は社に向かった。陽射しは強かったがいい汗かいて気持ちが良い。

あまり変わらないのどかな風景と懐かしい気持ち。変わってしまったKの事を考えながら歩みをすすめた。

Kが生まれたのは私が10歳の時だったな、歳が離れてた為か随分可愛がったしKが気になる女子がいたりすると私には話してくれた。

どんな事も父や母じゃなく私に一番に教えてくれた。

不登校になったのはイジメとは思えない、Kはそんな性格でもなかったし。

これだけは私にも話してくれないが不登校になってから笑わないしあまり喋らなくなったのは確かだ。

社のある森に足を踏み入れ暫くすると少し涼しくなった。

確かこの奥だったな、土の匂いが濃くなってきた。肌寒い。

ここだ。

どのくらい前から在るのかわからないが、かなり古い社の前に私はいる。

ただ見つめいると

ポン!と肩を叩かれた。

ビクッとして振り返るとKがいた。

K「ダサっ、今ビビった?カッコ悪~!」

私「ビビってねーし!」

本当は少しビビった。

K「ここは土地の気が強いな。この社が一番強いから気に当てられて気分が悪くなる…」

私「お前は霊感強かったもんな、でも今まで何回か来た時に言わなかったよな?」

K「兄ちゃんがビビりだから怖がるだろ」

私「誰が怖がるか。何も感じないし」聞いた後だし内心は怖い。

K「サギョウゴ様は願い事を叶えてくれる神様」

私「へぇ~」

K「体調悪いから先に戻ってるね」

確かに顔色悪いな…

私「じゃあ俺も一緒に戻る」

K「兄ちゃんはお願い事してからにしろって。サギョウゴ様はかなり強い本物だよ。じゃあね」

私「んぉ!?おう、そこまで言うなら…気をつけて戻れよ」

Kの姿が見えなくなってから私は願い事を考えた。

そして

そんなうまい話無いだろと帰ろうてした刹那

『Kの事が気になるなら助けてやる』

中性的で澄んだ声がした

気のせい?

『Kの事を助けてやろうか?』

私「サギョウゴ様!?」

『最後に問う…Kを助けてやろうか?』

私「お願いしますKを助けて下さい!助けて下さい!」

何故か必死にKを助けて欲しいとお願いしていた。何度も何度も。

突風が吹いたのか強い風に驚いて我に返った私は夢だったのか?

と思い足早に立ち去った。

祖父母の家の前にKが立ってた。私はKに明日朝に家帰ろうと言った。

帰りの車中で妙な胸騒ぎがしている。社の出来事から胸騒ぎがして落ち着かない。

K「もしかしてサギョウゴ様の声聞いた?」

私「気のせいかもしれないけど…聞いたかも…」

K「サギョウゴ様は願い事を叶えたらそれを伝える為に使いを送るんだ」

私「は?んな事言ってビビらせようって腹かよK」

K「違う真面目にきいて。使者の名前は「あぎょうさん」っていうんだ、忘れないで絶対に」

私「あぎょうさん…」

Kの目は真剣だった。怖くなった私は無言。

もうすぐ我が家が見える頃。

私「楽しかったか?」

K「楽しかった、ありがとうな」

スッキリした顔で微笑んだKを見て田舎に行って良かったと思った。

家に着いたのは15時半ばくらい。母にただいまの挨拶をして居間でテレビを見てたらウトウトしてきた。

私はその瞬間に無理矢理記憶から消していた事の全てを思い出した。

信じたくない!

信じたくない!

信じたくない!

信じたくない!

立ち上がり急いで階段を上がりKの部屋に入る。

整頓された部屋にはKは居ない。

家の中の全てを捜したが、やはりKは居ない。キッチンに立つ母に震えた声で泣きそうになりながら私は…

私「K…Kがどこにも居ない…居ない…出掛けてるのかな?…」

母は心配そうな顔をしながら私を優しく抱きしめた。

私「母さん…俺、ごめんなさい。心配かけて…父さんにもじいチャン…ばあチャンにも…」

母「思い出したみたいね。お父さんが帰ったらゆっくり話しましょう」

母の声が温かく優しかった。いい歳して私は泣いていた子供みたいに思い切り泣いた。

サギョウゴ様の話はKが小学生の頃に俺が教えた話だった。

かなり前の事で私自身が忘れていた。

お茶目で生意気なKらしい伝え方だと思った。

K、私が情けないばかりに心配かけて済まなかった。お前は私が居ないと駄目だと思ってたのが逆だったんだな。

ありがとう。

本当にありがとうK…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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