中編3
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阪神淡路大震災

私の神戸に住んでいる、おじさんから聞いた話です。

あの阪神淡路大震災の時、おじさんも被災しました。

不幸中の幸いで、おじさんの奥さんと息子さんは、九州の奥さんの実家に里帰り中でした。

おじさんの父母も無事であり、後は、離れた所に借りてある駐輪場の車が心配...と思い、すぐに車庫のある場所まで歩いて行きました。

外に出ると、それはそれは、悲惨な光景が広がっていたそうです。

『ひなちゃん、歩いてて死体が倒れてたら、びっくりするやろ?

あん時は、それが当たり前で、あぁ、またか、言うくらいやったんやで

ほんま、おかしくなりそうやったわ』

と、おじさんは、今でも当時を振り返り、話してくれます。

おじさんは、なんとか車のある場所まで辿り着き、車の無事を確認した時です。

すると、隣の家から『助けてくれ〜』と声がします。

駐輪場の隣に住む顔見知りの男性の声でした。

『助けるぞ!どこや?』

隣の家は火の手が上がっていたため、おじさんは急いで叫びました。

男性は、

『わしはええんや、娘を頼む、娘を...』

と繰り返したそうです。

しかし、火の手が上がっており、娘さんの名前を、おじさんが呼んでも反応はない。

恐らく、既に亡くなっていた様子。

それを知らない男性は、ずっと、

『娘を頼む』

と、叫び続け、悲鳴を上げながら火災に飲まれていったそうです。

おじさんは『ごめんな』と泣きながら言って、帰りました。

その帰り道、また助けを呼ぶ女性の声が聞こえました。

『今度こそ助ける!』と、おじさんは走りました。

その先には、崩れ落ちた大学生の住む寮のような建物があり、家主の女性が、

『まだ、学生さん達が埋まってるんや

助けて!』

と言っていました。

『おっしゃ!みんなで掘るぞ!』

おじさんは、鉈を持って、周りの人を集めて、学生さんを掘り起こそうとしました。

『みんな声だせ〜!』

と言いながら、見ず知らずの人達と、掘る作業をしていました。

すると、一人の学生らしき男性が来て、その光景を見つめていました。

『何や?手伝うてくれるんか?』

と、おじさんが聞くと、

『いや、友達が住んでるんで見に来ただけです』

と、その学生は帰ろうとしたそうです。

おじさんは、怒り狂い、鉈を振り回して学生を追い掛けようとしましたが、周りの人に止められたと、悔しそうに言います。

『友達が住んでたんやで?

見に来たって....

ほんま殴ってやるつもりやった

なんぼ勉強ができても、人間としてあかんわ

わしは絶対、あいつの顔は忘れへんで』

とおじさんは言い、当時、地方から、その大学に進学していた私は、居心地が悪い思いをしました。

今、現在、震災から神戸も復興し、平和な街に戻っていますが、おじさんは何度か、その学生だった男性(今は30歳台半ばでしょうか)を見かけたそうです。

見かけた時は、いつも何かからか、逃げるように、いつも街を走り回っているそうです。

おじさんが、声を掛けようとしても、悲鳴を上げて逃げていった、と言っていました。

おじさんが殴るまでもなく、罰が当たったのでしょうか?

人の不幸を望むことは許されませんが、私はその話を聞いても、逃げ回る男性に同情できませんでした。

怖い話投稿:ホラーテラー ひなさん  

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