短編2
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火の用心

こういう寒い日が続くと毎年思い出す。

火の用心の車って、この時期の夜よく通るよな?

夜といっても8時とか9時とかそんくらいの時間帯に。

俺が中学生のときも、毎日のように

俺の家の前をカーンカーンって

ちょっと不気味な音を鳴らしながら通り過ぎてたよ。

妹が怖がってんの見て面白がってたのを覚えてる。

その日も8時くらいに

火の用心の車が家の前を通り過ぎて、

その時俺はテレビを見ながらくつろいでた。

そしたらいつの間にか寝てしまって、

目を覚ました時にはもう夜中の2時近くだった。

こたつは消されてるわ誰もリビングにいないわで

かなりイライラしてたんだけど、

寒くてはやく布団に入りたかったので

俺はこたつから出た。

そしたら外から音が聞こえてきた。

カンカン

カンカン

って。

火の用心の音っぽかったけど、

いつもの車の放送してるような音とは違って、

手動で鳴らしてるような感じだった。

最初は遠くからだったけど、

音はどんどん近づいてくる。

それと同時に、カンカンって鳴らした後に

低い声で誰かが何かを言っているのが聞こえた。

多分「火の用心、マッチ一本火事のもと」って

言ってるんだろうなって思ったんだけど、

なんだか少し違う。

俺は気になって、もう少し近づいてくるのを待った。

さ………ん

カンカン

た………ぽん……の…と

カンカン

所々聞き取れる所まで近づいてきた。

もう少し。

さと…さ…

カンカン

た…こい……んか…の…と

佐藤さん

たばこ一本火事のもと

俺は咄嗟に玄関へ向かい、裸足で飛び出した。

向かいの佐藤さんの家から煙が出ていた。

俺はすぐに一階で寝てる両親を起こし、両親は慌て消防車を読んだ。

おかげで大した火事にはならず、佐藤さんも無事だった。

原因はたばこだったらしい。

母になんで気づいたのところはと聞かれて、

あったことをそのまま話したけど信じてもらえなかった。

近所のひとで俺と同じように火の用心を

聞いたという人も現れなかった。

それもそのはずだ。

そんな真夜中に近所迷惑な火の用心など

するはずがないのだから。

でも俺は確かに火の用心を聞いた。

じゃああれはなんだったのだろう。

なぜ俺だけに聞こえたのだろう。

あれ以来、夜中に火の用心は聞いていないが、

あれは一体誰の仕業だったのか

今でも分からない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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