短編2
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弱虫毛虫

俺はもう自殺する。

俺は駄目な人間だ。

人に迷惑ばかりかけてきた。

頑張れば頑張るほど人の

足を引っ張る生粋の無能だ。

もう耐えられないんだ。

固い決意と共に俺は、かの樹海に向かった。

様々な死に方を検討したが、死体が

残れば最後まで誰かに迷惑がかかる。

線路飛び込みなんかは最悪だ。

樹海へ静かに消える。

これが最良なんだ。

もう誰にも迷惑はかけない。

とうとう俺は樹海の入り口に立った。

さよなら、みんな。

産まれてきてごめんな。

ふと正面の看板に目が止まった。

こう書いてあった。

『地元で死ね』

ええっ、ここもだめェ!?

ご、御迷惑ッ!?

ショックを受けながら前を見ると、樹海の奥に白装束の

爺さんが浮かんでいた。

凄いキレ顔で俺を睨み、シッシッと追い払う仕草をしていた。

俺はすこすごと帰り、もう死にかたが

思い付かなかったので、生きざるを得なかった。

今はビルの清掃を生業にしている。

『鏡か?』

ってくらい床を研くのが生き甲斐だ。

恋人はいまだに出来たことはないが、一丁前に片想いは

している。

爺さん、こんな見知らぬゆとりの俺に怒ってわざわざ

出て来てくれてありがとう。

あの時優しい顔で手招きされてでもいたら、

好きな人に

『今日も床ピカピカですね。会社の自慢なんですよ』

って言ってもらえる幸せはなかったんだ。

弱虫毛虫、幽霊に救われるの巻。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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