図書館の職員に
「昭和20年頃、新宿駅の西口辺りに佐々木さんて家がなかったかどうか知りたいんですけど、そんな資料ここにありますか?」
と尋ねたら目一杯怪訝そうに見られた。
「失礼ですが、どんな理由で?」
「・・・・・・」
見かけだけは超インテリのメガネ女は、不審人物を見るような目にさらに険しさを加え
「その頃にゼンリン地図みたいな物があれば保管もしていたかも知れませんが、探すだけ無駄でしょう。区役所に行ってお聞きになられたら?当時新宿にお住まいがあったお年寄りを探してみるとか。ちなみに何で新宿駅西口なんです?」
「・・・・・・」
その女ちらと腕時計を見ると、いかにも(急用を思い出した)かのような見え見えの芝居をしてさっさと行ってしまった。
「区役所か、なるほどね」
ふと横を見ると、壁に埋め込まれた大きな鏡に自分の姿が映っていた。
そういや三日間髭も剃っていない。
頭に包帯をぐるぐる巻いた無精髭の男は、確かにどこからどう見ても怪しい男だった。
一旦家に帰って出直すか・・・・
俺は叔父叔母が営んでいる居酒屋の裏にある、元々物置小屋だったプレハブを借りて自分の家にしていた。
還暦前の叔父に聞いても無駄だろうが、店に来る客の中になら一人くらい何か知ってる人がいるかもな。
佐々木さんか・・・
何となく感じていた。
あんた、悪い人じゃないよね。
怖い話投稿:ホラーテラー ニート参上!さん
作者怖話