短編2
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りっちゃんごめんね

特に理由はないんだけれど怪談が好きな私は、久々に会った友人に「何か怖い話知らない?」と聞いた。

別に話のネタに困ったわけでもないんだけど、なんとなく。

そうしたら、『ああ、クマコがこの町出て行ってから心霊スポットになった工場あるよ。』と友人が教えてくれた。

その工場は不況にのまれて潰れてしまったらしいんだけど、買い手もなければ更地にするお金もないんだとかでそのまま放置されているらしい。

放置されてからすぐ工場は近所の不良のたまり場になっただとか友人は言った。

へぇ、定番だな~なんて思って聞いてたら、友人はさらりと

『そこでこの前殺人があったの』なんて言うから戸惑いつつも期待して大人しく聞いた。

『不良がさ、あそこに女連れ込んで暴行してたんだけどね、女の彼氏に見つかってさ、現場見て怒った彼が殺しちゃったのよ、不良。』

『床に落ちてた鉄パイプで不良三人ボッコボコ。で、それから彼ガラス片で首切って自殺しちゃったらしいの。』

『彼責任感が人一倍強かったから、自分が一番許せなかったのかもね、まともな判断できる状況じゃなかったろうし、気絶した彼女見て死んでると思ったのかもしれない。』

『まぁ、そんなことがあったからさ、工場に行くと「ごめんね」って言いながら鉄パイプで不良をたたきつける彼が見えるって噂が流れてるんだ。』

なんだか悲しい話だな…とは思ったけれど、好き者の私は「それにしても詳しいね。ほら、責任感が強いなんてなんで解ったの?」なんて空気を読まずに聞くと、

『Kのことだから』友人はさらりと答えた。

「K!?Kって…りっ」

『ねぇ、クマコ、Kにありがとうって伝える方法…ないかな』

私は大きく息をのんだ。

その夜私達は花束と短い手紙を持って工場に行った。

あれから一度も工場には行ってないけど二人とも救われていればいいな、と思う。

怖い話投稿:ホラーテラー クマコさん  

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