中編6
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七不思議

 僕の実家があるのは日本海側の海に面したごく普通の町です。

海鳥、潮風、防波堤…僕は高校までその町で過ごしました。

 そんな僕が不思議な体験をしたのは中学二年の時でした。

 その当時流行ってたのが所謂七不思議。

当時の噂では、

1、図書室の赤い本

2、家庭科室の人魂

3、音楽室のピアノ

4、渡り廊下の滝君

5、旧校舎の市松人形

6、職員室前の大鏡

7、海坊主

…という事でした。

 仲の良かった友達2人と陸上部の先輩の4人でよくこの噂を馬鹿にしていました。

「図書室赤い本ばっかしじゃね?」

「滝君て誰だよw廉太郎?」

「海坊主ってさ、学校関係ないじゃんw」

…という具合です(笑)

 霊的な物に関しては皆共通して信じておらず、そういった経験も勿論ありませんでした。

それでもやはり恐怖は感じるし肝試しなどもしました。

七不思議も肝試しの一種で、軽い気持ちで検証してみたりしたものの、霊的な物など一切ありませんでした。

 夏休みも終わりに近付いた頃、真夜中の学校に忍び込み、校庭で花火をする事になりました。

一応目的はもう一つあって、校庭から見える校舎3階の家庭科室、人魂の噂。

しかし、夏休みも終わり間近という事もあり、僕達の中での心霊ブームは殆ど冷めていました。

「家庭科室真っ暗だし、人魂飛んでればここからでも見えるよね」

「先輩どうします?」

「あ~…見た感じ居なさそうだし、いいよ(笑)、早速花火やろうぜ」

「じゃあ、バケツに水くんできますね」

そういうと友達の1人が校庭の隅にある水道に向かった。

中学校は海から300mほどの距離の高台の上にあり、校舎は海向き、僕達のいた校庭は校舎の海側に位置していた。

「どれからやる?」

「ロケットとネズミは流石にマズいですよね」

「このデカいの凄そうじゃね?」

…そんな話しをしながら、ちらっと水道の方の友人を見た。暗くて分かりづらかったが、バケツを持ったままフェンス越しに海の方を見ている…

「お~い!」

こっちの呼び掛けに気付き、戻ってきた

「すいません(笑)」

「どうした?誰か来ちゃった?」

「いや、大丈夫ですw」

「何だよ~びびらすなよ~」

…そして僕達は花火を始めました。

結構色々な種類を持ち寄ったので、大声は出せなかったけど盛り上がりました。

 花火も残り少なくなった頃、一杯になったバケツを替えようという事で、僕が水道に行きました。

濡れた花火の束をコンビニ袋に移し、バケツに水を注ぐ…

その間何となくフェンス越しに海の方をみると、

「…ん?」

海に続く小道にぽつんとある切れかかった街灯… そのチカチカした灯りの向こうで… 何か動いてる…

(何だろ…)

大きなゴミ袋のような… それにしてはデカいかな… 大きな大人位はある…

「おい」

気付くと友人が隣に居た。

友「…あれ?」

そしてボソッと

友「……でかくなってる」

僕「…え?」

友「さっきは…最初、風でゴミ袋が転がってるなって…でもなんか不自然に動いてるから、犬か猫が漁ってんだなって……なのに…

…何あれ」

 相変わらずそれは街灯の向こうで行ったり来たりしていました。

僕達はそれをぼーっと只見ていました…

モゾモゾ動いていたそれは、不意に街灯をくぐった。

一瞬照らされた姿は、ずぶ濡れの黒い布のような物を膝まで被り、胸の辺りの破れた場所から真っ白な顔のような物を覗かせていました…

背筋にゾクゾクと寒気が走りました。

友達と顔を見合わせると引きつった表情で友達が…

「…こっち見てた…」

友達は泣きそうな顔になり、僕の膝は震え出しました。

「おーい…」

先輩ともう1人の友達が呼ぶ声に気付き、我に返った僕達はガクガク震える足をひきづり走りました。

普通じゃない僕達の様子に2人は驚いて居ましたが、

「やばいやばい!」

「隠れて!早く!」

僕達のその呼び掛けに「え?え?」となりながらも、花火を放り捨て走り出しました。

校舎の裏まで走り物陰に隠れると、全速力で走ったのと恐怖で心臓が破裂しそうでした。

「誰?…警察官?」

先輩が軽く息を弾ませながら聞いてきましたが、僕達にも分からず…答えられませんでした。

耐えかねた先輩達がそーっと校庭の方を覗きました…

「……」

「………何あれ」

僕も恐る恐る覗きました…

さっきまで僕達が居た場所で辺りを見回して、しきりにモゾモゾ動いていました。

胸から覗く顔の様なもの…

歯を見せてニタニタ笑ってる…

地面に転がった花火の光がそれを照らし出していました。

(探してる…やばい…)

皆無言で…弾む息を押し殺して居ました…頭の中はパニックでした。

しかし直ぐに先輩が、ゆっくり深く息を吐き…押し殺した声で…

「校舎の裏から…反対側に回るぞ」

僕達3人は返事も出来ず頷きました。

そう言って屈んで歩き出した先輩の膝は震えていました…

校舎の裏側からは校庭が見えず、全く様子が分かりませんでした。

とにかく物音を立てないように慎重に…なるべく早く…

しかし足元は真っ暗でほとんど見えない状態、正に手探り状態でした… そして…

バキッ

自分達の足元から…

ベニヤを踏んだような音でした…

凍りつきました…

その直後、後方から…

ザ… ザザザ… ザザザザザザ… ザザザザザザザザ!!!!!

大きな何かが這いずって来るような音…

「走れ!!」

うわずった先輩の叫び声に一斉に走り出しました。

無我夢中でした。

もつれながら校舎の角を曲がると一瞬視界の隅に映るそれ…校庭に出ると一直線に校門を目指しました。

直ぐ後ろの方で、

ザザザザザザザザザザザザザザ!!!!!!

(嫌だ!!)

校門を走り抜けるころには、耳元で…気持ちの悪い唸り声が聞こえていました。

途中先輩が走りながら振り向いて…

「何なんだよ!!来んじゃねー!!」

…とか叫んでいました。

僕は振り返る事なんて出来ず、ひたすら皆の背中を追いかけて走っていました。

どれ位走ったのか…気付くとそれは消えていました。

それから明かりの点いてた家を見つけて駆け込みました。

僕達の様子にただ事じゃないと、かくまってくれました。

そこでようやく安堵し、へたりこみました。

 事情を話す気力も体力も無く、それぞれの自宅に連絡してもらい…迎えに来てもらいました。

親達はひどく驚いた様子で、初めこそ心配していましたが、夜中に学校に居た事がバレると、もの凄い怒られました。そして夜間外出の厳禁をくらいましたが、もう誰もそんな気は全くなかったと思います。

 それは、体験をした僕達にしか解らない非現実的な出来事でした。

4人だけにしか共感出来ない出来事であり、僕達はそれまで以上に絆を深めました。

町から遠く離れ社会人となった今でも、よく連絡をとり、集まって呑んだりしています。

しかし誰もその出来事については、口にする事はありません。

 そして、今現在僕達が共有する考え。

それは…

この世には得体の知れない何かが存在する…僕達が見たものはその片鱗に過ぎないのかもしれない。故に軽はずみにその手の話しに関わらない…

何がきっかけで、向こう側と繋がってしまうのか、誰にもわからないのだから…

…おわり。

怖い話投稿:ホラーテラー A.Sさん  

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