短編2
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長者物語 弐

般若姫と名付けられた女の子は優しい長者夫妻の元ですくすくと美しい女性に育ちました。姫を嫁にと、いう申し出はあちらこちらからありましたが長者夫妻はけして手放そうとしませんでした。

やがて、遠い東の国から来たという若者が長者夫妻の元を訪れました。若者の素晴らしい笛の調べに感嘆した長者夫妻は山路と名付け、牛飼いとして雇うことになりました。山路は真面目でよく働いたので長者夫妻もすぐに気にいりました。

ある日、般若姫はひどい病に倒れました。この病を治すための難題をこなすことができそうなのは山路ただ一人でした。山路は無事、事をなし終えたあかつきには、姫と結婚したいと長者夫妻に願い出、病が治るならと承諾した長者夫妻の目前で見事、姫の病を平癒させました。

じつはこの若者の正体は時の欽明天皇の第四皇子でした。皇子は都にまで届く般若姫の噂を聞いて、ぜひとも后にしたいと思い、誰にも告げず、一人豊後の国を目指してやってきたのでした。

若くたくましく、気高い雰囲気をもつ山路に、長者夫妻はついに結婚を許し、般若姫と山路は幸せな日々を過ごしました。

やがて子供を身ごもり、穏やかな日々を暮らしていた二人でしたが都から皇子を連れ戻すための使いが訪れ、皇子は都へ帰ることになりました。

別れを惜しんで皇子は旅立ち、やがて姫には女の子が生まれました。女の子なら豊後の国に残して後を継がせなさいという皇子の言葉通り子供を託し、般若姫は后となるため都へむかう旅に出ました。

船団を組んで出発した般若姫一行でしたが、始めこそ天気も良く穏やかな船旅だったものの、進むにつれて嵐や奇怪な出来事にさいなまれ、多くの家臣を失ってしまいました。

あるものは父を失い、あるものは同僚を失い、互いに嘆くさまをみて、般若姫は多いに悲しみ、心身ともに弱っていきました。

大畠灘でついに寝込んでしまった般若姫は、思い悩んだ末、ついに海に身をなげてしまいました。一度は助け出されたもの

「あの山に私を埋めてください」

と言い残してなくなってしまいました。

残された家来たちは悲しみにくれながらも遺言のとおり、般若姫の墓を作って葬りました。

後に般若寺としてこの菩提所は人々から参詣されるようになりました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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