「ジロウ」シリーズ 悪魔への願い

中編5
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「ジロウ」シリーズ 悪魔への願い

今年も合格できそうに無い。

試験中、俺は嘆いた。

すると突然、机上に小人(?)が現れ俺にこう告げた。

「私は悪魔、君の願いを一つだけ叶えてあげよう。一つだけだから魂なんていらない。ただ感謝してくれたらそれでいいさ。」

ここ最近ずっと徹夜で勉強していたせいだろう。こんなものが見えるのは。

そして悪魔にこう告げた。

「俺をこの試験場で、いや、世界中で一番頭のいい奴にしてくれ!」

悪魔はにこりと頷くとスッと消えた。

二週間後、合格発表当日、俺は目を疑った。

まさかの不合格。

というか、合格者ゼロ。

どうやら全世界の人間が俺より馬鹿になったらしい。

二ヵ月後、世界経済は崩壊した。

この世の中は金で全てが廻っている。

金が全てじゃないなんて綺麗事、日雇いのおれには言えない。

今日も疲れた身体を引きずって塒である地下街までヨタヨタと歩き、ダンボールに包まり眠りについた。

すると突然、目の前に小人(?)が現れ俺にこう告げた。

「私は悪魔、君の願いを一つだけ叶えてあげよう。一つだけだから魂なんていらない。ただ感謝してくれたらそれでいいさ。」

これは夢か。夢ならありだろう。こんなもんが見えるのも。

「一生涯金に困らない暮らしがいいな。南の島なんかで。」

悪魔はにこりと頷くとスッと消えた。

朝、俺は正に南の島で目覚めた。

が、ここが何処とも判らない無人島だと理解するのには、たいした時間を要さなかった。

一昔前のお話。

私は今日も世界平和を願い、街頭で道行く人へ訴えかけた。

「人類みな兄弟!恵まれない国の子供たちへあなたの善意をよろしくお願いします!」

教会に戻り、今日の善意を確認してみる。

残念ながら世界平和への道のりは険しいようだ。こんな事に意味があるのだろうか?

主に祈りを捧げ教会を出ようとしたとき、突然壇上に小人(?)が現れ私にこう告げた。

「私は悪魔、君の願いを一つだけ叶えてあげよう。一つだけだから魂なんていらない。ただ感謝してくれたらそれでいいさ。」

私は試されている、先程少しでも主を疑うような考えをしてしまったからだ、こんなものが見えるのは。

そして悪魔にこう告げた。

「願わくば、人類が、いや、この世の生けとし生けるもの全てが皆平等でありますように・・・」

悪魔はにこりと頷くとスッと消えた。

これでよかったんだ。

私は胸のつかえが取れたような気がした。

そして、

199X年 世界は核の炎に包まれた!

「ちっ、またかよ」

朝、隣の席を見るとA子の椅子が無くなっている。

A子は母子家庭で、母親は確か水商売をしているらしい。

当然ながら家庭は豊かではない事が想像できた。

だが派手さはないもののA子は整った容姿をしており、優しい性格で男子からは人気があった。

まあ、俺も密かに想いを寄せているのだが。

それ故に女子からは大分疎まれているらしい。

度々陰湿な嫌がらせを受けているようだった。

候補は何人か思い浮かぶ。

ギャル系、ヤンキー系、いや、ひょっとすると委員長あたりかもしれない。

俺はA子、クラスの男子数人と椅子を探しながら思案したが、答えなど見つかるはずも無く、結局椅子も見つからなかった。

放課後、もやもやした気分のまま下校しようと席を立つと、A子の席に突然小人(?)が現れ俺にこう告げた。

「私は悪魔、君の願いを一つだけ叶えてあげよう。一つだけだから魂なんていらない。ただ感謝してくれたらそれでいいさ。」

俺のA子に対する想いの成せる業だろうか、こんなもんがみえるのは。

俺は悪魔にこう告げた。

「A子に嫌がらせをしている奴、いや待てよ、一番A子の事を邪魔だと思っている奴を少し痛い目に遭わせてやってくれ。」

本当はA子と付き合いたい、なんて思っていたがそれよりも今はA子を傷つける奴を懲らしめたかった。

悪魔はにこりと頷くとスッと消えた。

翌朝、教室にA子の姿は無かった。

HRで担任が事務的に連絡事項を告げる。

「~あーそれから、暫くA子さんはお休みします。お母さんが交通事故に遭われたそうです。」

また隣の部屋で喧嘩が始まった。

「あ~も~うるさいな~ 」

ここで例の悪魔登場。

「私は悪魔、以下省略」

「隣の喧嘩を止めてくれ、いや、ほんの少しでいい、俺に静かで平穏な世界を、頼む。」

悪魔はにこりと頷くとスッと消えた。

翌朝、今日はすごく静かで穏やかに目が覚めた。

さらに翌日。

耳鼻科で突発性難聴と診断された。

僕は僕の前に立っている。

僕の前にいる僕は僕が誰だか判らない。

それは当然か。

産まれて間もないのだから。

僕の前に小人(?)が現れたのは数時間前。

「私は悪魔、君の願いを一つだけ叶えてあげよう。一つだけだから魂なんていらない。ただ感謝してくれたらそれでいいさ。」

「僕の両親はどんな人だったんだろう。一目でいいから会いたい。そうだ!僕に、過去にいける超能力を下さい!」

悪魔はしばし沈黙した後、こくりと頷くとスッと消えた。

さっそく試しに10分前に

悪魔と話す僕を物影から確認すると、一気に自分の出生時にジャンプする。

・・・お母さんは優しそうな人だった。

が、僕を産んで直ぐに亡くなった。

お父さんの姿はそこには

なかった。

お父さんはもともといなかったんだ。

僕はそう気づき、咄嗟に目の前で眠る僕を抱きかかえ街へ走る。

街外れの教会に着くと「名前はジロウです。」とメモをバスケットに入れ僕をそっとおく。

これでいいんだ。

ここから僕の人生はスタートするんだ。

よし、どうせならもう少し昔も覗いてみよう。

そしてさらに50年前の過去へ

ここで初めて重大なミスに気づく。

未来への帰り方がワカラナイ。

いや、帰り方なんてないんだ。

悪魔への願いは「過去にいける超能力」

私は神父になり、12歳の私が産まれたばかりの私を教会の前に置いていくのをそっと見ていた。

バスケットの中で人生をスタートしたばかりの赤子の私は、人生を終えようとしている私を見るとにこりと微笑んだ。

そして私は、今日も深々と懺悔するのだった。

怖い話投稿:ホラーテラー シロウさん  

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