中編4
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青いペンダント

怖い話か分からないけれど、昔話をしたいと思う。聞いて貰えれば、嬉しい。

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俺は、中学生のとき初めての彼女を交通事故で亡くしてる。付き合いはじめて半年位のことだったから、キスもろくにしたことない、純愛?のまま終わってしまった。

事故の報せを聞いたとき、ショックで頭の中が、本当に真っ白になった。何も考えられず、泣きもせず、淡々としてたのを覚えている。

家族は心配してたと思う。でもそっとしておいてくれた。

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それから数ヶ月経ち、彼女の死が心になじみ始めたとき、夢に彼女が出てきた。そのときははっきりした夢じゃなくて、ぼんやりした輪郭だったんだが、俺は嬉しいのと悲しいのが混ぜこぜになって、目が覚めると泣いていた。やっぱり俺はまだ彼女の死を受け入れられないんだと。

それから1週間位あとに、また彼女の夢を見た。前程はぼやけてなく、かすかに微笑んでいるのが分かった。俺も嬉しくて、色んなことを彼女に話しかけた。好きだったもの、嫌いだったもの、初めてのデートで手をつないだ遊園地。

彼女は微笑みながら、うなづいていた。

目が覚めた後、俺は本気で、彼女が会いに来てくれたんだ、って思った。

本当に嬉しかった。

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不思議なことに、彼女は度々俺の夢に会いにきてくれるようになった。悲しむ俺を心配してくれたんだろうか。段々と彼女の方からも話しかけてくるようになり、輪郭もはっきりしたものになっていった。もう現実と見まがうくらいに。

それからの俺は彼女の夢にのめり込むようになった。自分の意思ではみられないのだが、大体一週間に1~2回は彼女の夢だった。

勉強も部活もサボるようになり、俺は夜は早々に寝て、朝はいつまでも寝てた。

そのときから、母親は俺のことを本気で心配し始めた。飯もろくに食わず、やつれながらも寝る俺。後から聞いたが、そのときの俺は異常な程短気だったらしい。

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家族関係も友達関係もギスギスしはじめたころ、夢の中の彼女が俺に頼みごとをしてきた。それまではただ話してるだけだったのが、

「~を頂戴!」という。その~のところがノイズがかかったみたいになって、どうしても聞き取れないんだ。次第に夢の中の彼女は不機嫌になっていった。俺は必死で彼女の墓に、生前好きだった食べ物や、本をお供えに行った。それらは彼女の欲しいものじゃなかったらしく、終いには怖い顔で怒り始めた。見たくってしょうがない彼女の夢なのに、見ると怒らせてしまう。俺は自分でもわかる程憔悴していった。

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カウンセリングも受けさせられた。夢のことなんて言わなかったけど。

また、俺だけじゃなく、何故か俺の身内にも不幸が降りかかった。親父は交通事故にあうし、兄貴は肝炎になって入院した。

彼女の霊が怒って、俺と家族を呪っているのかもしれない。俺は母親に夢のことを打ち明けた。

そしてお寺で御払いしてもらうことになったんだ。

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御払いは難航を極めたらしい。俺自身は覚えていない。払ってくれたのは尼さんだった。

御払いを終えたとき、異常に疲れてたけど、妙にすっきりしてた。

それでその人に打ち明けた。死んだ彼女が夢にでてくること、そして彼女が欲しいものをあげられずに怒らせてしまったこと。

尼さんはそれを聞いてしばらく黙ったあと、こう言った。

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「夢に出てきたのは貴方の恋人ではありません。何かもっと別の、悪霊です。悲しみにくれ、弱った貴方にここぞとばかりに取り付こうとしたのです。貴方の恋人は、善良な人々が死後ゆくところにいらっしゃいます。しかし元来そこから現実へ出てくることは出来ないのです。」

絶句した。ずっと騙されていたのか?

尼さんは続けた。

「その悪霊が欲しがっていたのは、あなたのその首飾りでしょう。」

青いペンダント。俺と彼女の唯一のペアルック。彼女が亡くなってから、ずっと肌身離さず持ち歩いていたものだった。でも、何故これを?尼さんに聞いた。

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「貴方のその首飾りこそ、悪霊が夢を超えて貴方に悪さができないよう、守ってくれていたものです。あなたの本当の恋人が、ずっとその首飾りを通して貴方を守っていたのでしょう。除霊のときも、その方に助けられました。」

涙が止まらなかった。声をあげまいと、必死に歯を食いしばった。

悪霊の声にノイズをかけたのは、それしか彼女にはできなかったからなのかもしれない。

悪霊は夢に出てこれるのに、本当の彼女はそれだけなのかと思うと、涙が止まらなかった。

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尼さんは優しく微笑んだ後、こういった。

「貴方の本当の恋人は、貴方に今を生きていって欲しいと願っています。私のことは忘れて、誰か他の人と幸せになって欲しいと。」

御払いして貰っておいてなんだが、当時はこれには納得出来なった。「女の恋は上書き保存、男の恋は名前をつけて保存」とはよくいったものだと思う。そのときの俺に、他の女性と幸せになるビジョンなんてなかったんだ。

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それから15年。今は、他の女性と結婚し、子宝にも恵まれた。これだけ書き連ねといて薄情かもしれない。でも、今、俺は何の掛け値なしに幸せだ。親父も兄貴も全回復してる。女房には、初恋の人は事故で亡くなった、としか言ってない。

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でも、その初恋の人と一緒に買った青いペンダントは、俺を守ってくれたペンダントは、

今でもスーツの内ポケットに入っている。

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いい話ですね。
読み終わってから思わずニンマリしてしまいました。

怖いい話