中編3
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思い出したプチ体験

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僕が小学生の時、今から40年近く前の話です。

 当時僕は海岸沿いの本当に小さな町の、古いアパートの2階に住んでいました。

窓から外を眺めると数百メートル先に白い砂浜が見えましたが、

田舎の小さな海岸だったので海水浴シーズンでもそんなに人は来ませんでした。

 ある日そのアパートの隣の部屋に、若いお母さんと6〜7才位の色白の小さな男の子が

引っ越して来ました。父親が見えなかったので何か家庭の事情があるのでしょう。

そのせいだと思いますが、その母親を見てるとちょっと物悲しい気分を感じることがありました。

また男の子とも少し学年がズレていたので、その親子と特に積極的な交流はしませ

んでした。

 そんな中、ある夏の日に事件が起きてしまいました。母親と海に遊びに来た男の子が、

母親がちょっと目を離した隙に波にさらわれて溺れ、そのまま行方不明になって

しまったのです。

 その日以来母親は気が触れたようになってしまい、ますます近づきがたくなりました。

亡くなったであろう男の子は、何日経っても上がっては来ませんでした。

 夏休みも終わろうとしていたある日の夕方、僕は何気なく窓の外の夕日や海を眺めていました。

すると遠くの海の上に、何やら小さな光の玉のようなものが見えました。

何だろう?・・・と思ってじっと見ていると、ゆらゆらと不規則に揺れながら、

時間をかけてこちらに向かって飛んで来ます。

 明らかに自分に向かって飛んでくるので、だんだんと恐怖を感じ、窓から後ずさりしました。

母は買い物に出かけて、家の中には自分以外誰もいません。

その発光体がいよいよ「自分にぶつかる!」と思った瞬間、

隣の親子の部屋へスッと消えて行きました。

 ビックリした僕は、さすがにこれは隣のおばさんに言った方が良いのかなと思い、

靴を履いて隣の部屋に向かいました。

 

 どこでも大体そうですが、このアパートの台所は玄関横の通路側にあり、

その母親は丁度料理をしている様子でした。

 少し開いた台所の窓から中にいる母親に声を掛けようとした瞬間、

急に母親が後ろを振り向いてしまい、声を掛ける機会を一瞬削がれました。

 すると中から甲高い声で

「あら〜◯◯ちゃん、帰って来たの〜?」

・・という声が聞こえて来ました。

この言葉を聞いた瞬間僕は体が固まり、今までの人生で最高となる 

   " ゾーッという寒気 ”

が全身を走りました。もう声を掛けるのは止めて部屋に戻ってしまいました。

 それからこの母親にはますます近付きがたくなりました。

僕にとってこの人は、「変な人、ちょっとヤバい人・・・」という位置づけです。

 そして特に話をすることもなくいつのまにか引っ越して行ってしまい、

まもなく僕の家も引っ越しました。

 東日本大震災の時に津波の被害にあった地区の話です。

遠の昔にその建物は無くなってますが、2年前の震災で久しぶりにこの話を思い出しました。

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しょーま様 コメントありがとうございます。
ちょうど、今ぐらいの時期の話です。

ナニャドラ様 コメントありがとうございます。
今なら自分も大人になったので、その母親の境遇に同情したりするんですが、当時は気味が悪いという感情が強かったです。

ゾッとします。