長編12
  • 表示切替
  • 使い方

出る物件。床下。

こんばんは、今日は建物にまつわるお話を持ってきました。

格安物件てありますよね?

何かが住み着いてしまっている物件です。

私の友人、Dはこんな物件を引き当ててしまったそうなんです。。

Dは不動産屋にいました。

「うーん、お客様の希望に沿える間取りは人気なんですよねー」

喫煙者だけどタバコの煙を嫌うDはベランダか窓がある部屋を探していました。

しかしお金に余裕のないDは、節約のためにもマンションではなくアパートを希望。なかなか栄えた駅前での物件探しだったので、すぐには見つかりませんでした。

「うーん、まあ、タバコくらい外でて吸えばいいのかな」

なんて諦めがついた頃でした。床に落ちた1枚の物件案内。

「あっあるじゃねーか」

それは他の所より何割も安い駅前のアパートでした。

不動産は顔を真っ青にしてすぐにチラシを取り上げました。

「ここ!ここはだめです!出るんですよ!」

このときDはいわくつき物件て秘密にするものじゃないのか?あえて先に言っちゃうなんて、さては大したことないんだな?

と思ったそうです。

不動産屋は引き離せない物件だから管理しているだけで、客に案内するために持っているわけではないことをDに必死に説明していましたが、幽霊を信じないDは「見れたら話のネタになる」くらいの気持ちでした。

不動産の反対を押し切り、Dは無理矢理契約しました。

何かあったらすぐに連絡をして欲しいと、不動産のプライベートの電話番号も教えられたそうですが、Dはバカバカしくて控えることなく消したといいます。

部屋は1階の角部屋でベランダというか部屋の契約者専用の策付きの窓があって、部屋もそこそこ広く、ぱっと見は当たりに感じます。Dは、すぐに荷物をまとめてその部屋に移りました。

引っ越してから、Dは毎晩2:30に目が覚める現象に悩まされることになりました。どんな夢を見ていても、何時に就寝しても、絶対にその時間に目が開いてしまうのです。

しかし、いつも目が覚めるだけで、部屋に誰かがいるわけでも、よくある金縛りにあうわけでもないのです。

Dは、「これも霊障なのか?それにしては大したことないじゃないか」と、ずいぶん図太い性格をしていたので気に留めなかったそうです。たまに寝ずに2:30を迎えることもあったそうですが、やはりその時も何か不審なことが起こることはなかったのです。

また、Dはその頃、隣に住んでる女子大生に熱をあげていて、霊障どころではなかったそう。

「でもさ、変なんだよな。隣の部屋のEさんっていうんだけどさ、やけに駅やコンビニで会うんだよ。まぁ、挨拶してくれるし綺麗だし嬉しいんだけどね」

Dは女子大生のEさんの話ばかりをしてきましたが、お互い顔見知り程度で特に進展はしていないそうです。

私は、幽霊物件に引っ越したDが、毎晩同じ時間に目覚めて、綺麗すぎるお隣さんと多すぎる偶然の出会いを重ねているなんて、全てが怖くて後ずさり気味でした。

しかし、そこはさすがD。やはり能天気で気にしていません。

私の不安は的中しました。

ある冬の夜中、2:40を廻った頃でしょうか、Dから着信がありました。

寝ていた私は寝ぼけた頭をかきながら電話に出ました。

「助けてくれ、何か変なんだ」

Dらしくない声でした。私は一瞬で目が覚めて、Dのアパートに向かおうと思いましたが、場所を変えて近くの24時間営業のレストランに集まることにしました。

どうしても、夜中にあのアパートに行きたくなかったのです。

やってきたDは、ものすごくやつれていました。一昨日会ったときとはずいぶん違った様子です。なにがあったのか訪ねました。

「今日もやっぱり2:30に目覚めたんだよ、またかって思ったんだ。すぐに寝ようとしたよ。そしたら、目の前の床がさ、少しだけ盛り上がってることに気がついたんだ。今日まで気がつかなかったけど、前から盛り上がってたのかな、とも思える場所でさ。明かりをつけて床を見てみたんだ。そしたらその隙間から髪の毛がごっそり出てきたんだ」

驚いたDは、髪の毛をどうにか引き抜いてみようと力強く引っ張りました。その時です。

「ぎゃあ!」

静まり返った部屋に響き渡ったのは甲高い女性の叫びでした。そして、その声はその髪の毛の主が発したに間違いないというのです。

Dもさすがに怖くなって、私に電話してきたというわけで…。

私は、部屋に行かなくて良かったと思ったと同時に、Dに早く部屋を出るように伝えました。

さすがにDも気持ち悪さを痛感したのか、悩むようになりましたが、仕事が忙しくなったタイミングでしたのですぐに不動産屋に連絡しなかったのです。

感のいい私は、隣に住むEさんも実は幽霊で、出ると言われてる幽霊の正体なのでは?と思っていましたが、もし違ったら迷惑をかけてしまうし、何よりEさんに恋をするDにそんな疑惑を持ちかけることは出来ませんでした。

そのうち、私の仕事も忙しくなってきて、会社に泊まったりする日が増えてきました。Dに会うこともぱったりなくなりましたが、やはりアパートのことが気になってちょくちょく連絡はとっていました。

やはり2:30に目が覚める現象と、よく会うEさんとのことは変わらないままですが、Eさんとの関係は進展したそうです。

きっかけはバレンタインにDの家にEさんがケーキを焼いて持ってきた時だったそうです。Dはとても喜び、それからEさんの部屋に遊びに行くようにもなったそうです。

私の中で、Eさんは最初からDに恋をしていて偶然を装って付け回していたのかな?という疑惑も生まれました。私のEさん幽霊説は、Dの経験によってすっかり無かったことになりかけていたのです。

私はEさんとうまく付き合えているDの様子を見て、少し安心してしまったこともあってか少しずつ彼との付き合いも減ってきました。

春になりかけていた頃でした。

Dから急に連絡があり、2駅先の満喫に呼び出されました。久しぶりだったこともあり、私は急いで支度をして満喫へ向かいました。しかし、私の期待とは裏腹に、あの晩のようにやつれたDの姿が目に移りました。

「な、何があった?」

Dは、震えながら私にここまでの話をしました。

バレンタインを機に、Eさんと付き合い始めたDは、床下から伸びる髪の毛のことを警戒しながらも、お隣に彼女ができたことで引っ越すことを躊躇していました。

それに、幽霊物件についてEさんに質問したところEさんは何も知らないというのです。

Dはそれにも勇気付られて引っ越すのは先延ばしにすることにしました。

引っ越してから3ヶ月、Eさんと付き合いを始めてから1ヶ月経った頃、季節は春になってきていました。

いつものようにEさんの部屋にいると、一匹の虫がいました。Dさんが虫をつかんで窓から出そうと、窓に手をかざすと「触らないで!」といつもは温厚なEさんが大声をあげたそうなんです。

驚いたDはとっさに窓から手を離し、Eさんは半泣きの顔でDに抱きつき「ごめんなさい」と謝ったそうです。Dは、れいに依って能天気なので(サプライズでも隠してくれてるのかな?)と思ったんだそう。

「今思えば異常な反応だったのに、Eさんのことを好きだったんだなあ」と言っていました。

ずっと冬だったため、窓を今まで締め切っていても気にすることはなかったのですが、春になってからも絶対に締め切られていたので向こうにどんな秘密があるのかDはどんどん気になっていったそうです。

しかし、Eさんの部屋である以上、彼女が部屋にいるときにしか、Dはこの部屋にあがることは出来なかったので、調べる機会はなかなかなかったんです。

しかし、ある夜。調味料が切れたからと、Dを部屋に残してEさんが部屋を空けるときがやってきました。

Dさんも付き合おうかと思いましたが、好きな芸能人が出ている番組を見ていたことや、スーパーがすぐ近くにあったことから、Eさん1人に行かせました。

Eさんが部屋を出て3分程して、番組はCMに切り替わりました。伸びをしながらCM中の暇を潰そうと辺りを見まわすと、窓が目に入りました。

Dは「いましかない」と思ったそうです。

窓に手をかけると、春の夜のやや冷たい風が吹いてきました。「Eちゃん、寒くねーかな」と思いながら窓を開けると、そこには妙な景色がありました。

大きな穴です。

ちなみにお隣と言ってもEちゃんはこの窓の小庭の周りに花を植えたり、物を置いたりしていてDの部屋から覗くことは出来ない仕組みになっていました。

なので、まさか柵の向こう、正確には柵の向こうの花壇の向こうにこんな穴があるとは思いませんでした。

穴はどう見ても深くまで掘ってあって、それが本当に女性の手で掘られているのかさえ判断出来ないような立派な穴でした。

Dは窓を飛び越えて小庭に降り、穴を覗き込みました。

その時です、ガチャと玄関の開く音がしました。

Dは思わず外にいたまま、窓を閉めたそうです。

「ただいま…あれ?Dさん?」

もちろん部屋には誰もいません。EさんはDを探しているようなんですが、ずっと落ち着いた声でDを呼んでいたEさんがいきなり無言になりました。

窓は曇りガラスになっていましたので、Dはその様子を声だけで把握していたのですが、声だけだからこその異常さといいますか、とにかくEさんの変化にはらはらしたそうです。

「ねえ、Dさんまさか、そこにいないよねえ?」

曇りガラスに少しずつEさんの人かげが映ってきました。先ほどの落ち着いた声とは少し違う、暗くて真っ青な顔をイメージ出来るような声でした。

Dはどうしようか悩んだ結果、その穴に飛び込みました。

Eさんが掘った穴なら、高さや長さも底しれてるだろうと判断したそうです。

穴は、もちろん真っ暗でしたがポケットに入れた携帯の明かりを頼りに、少しだけ息を潜めるつもりでした。

少し時間が経ったら、穴から出て柵を乗り越え、再び玄関から彼女の部屋に戻ることにしました。

しかし、その穴は少し低い位置まで下がってから真っ直ぐ横に伸びていました。それを見つけてしまったDは、これがどこに続くのか気になってしまい、裸足のまま歩き始めたのです。

その時でした。

「Dさん、そこにいるの?ねえ、暗いからやめなよ。私も、何度も土が頭に降ってきて、大変な思いしてるんだよ?」

Eさんが穴に向かって叫んでいるのがわかりました。

先ほどと同じく抑揚のない声は、普段の彼女とは全くの別人のようです。

Dはこの時やっと、彼女の異常性を感じたそうです。

そして、本能からか(逃げなくては)と行き止まりかもしれない穴を進みました。

「Eちゃんの声がさ、やけに低くて落ち着いててさ、穴に響くんだよ。ずっと優しくしてくれた彼女が、その時すごく焦っていながらも俺を追い詰めようとしてるのが分かってさ。この穴は俺には絶対秘密なんだ、もう俺は逃げなきゃいけないんだって思ったんだよ」

穴はすぐにまっすぐ上に伸びる突き当たりにぶつかりました。

もうお気づきだと思いますが、ここがDの部屋の床下です。

その時、入ったほうで(ざく、ざく)という土の音がしたそうです。そして、土が地面に積もって行くような音も聞こえました。

Dはすぐに、入り口を塞がれていることに気がつきました。

ハナから彼女のいる入り口側に戻るつもりはなかったのですが、塞がれたこともあり、Dはすこし高い床下の木の板に手をあてて、無理矢理押し上げようとしました。

床下は簡単に抜けて、Dは自分の部屋に戻ってきましたが、その音を聞きつけてなのか、今度はDの部屋をドンドンとEさんが叩きはじめました。

「開けろ、開けろ!!」

先ほどの抑揚のない声とはまた変わって、今度はあの声を荒げたEさんになっていました。

Dは震え上がって、すぐに玄関の前にテーブルを置き、窓の鍵を確認し、床下を塞ぎました。

EさんはしばらくDの部屋のドアを激しく叩き続けていましたが、いきなりパタリとなくなりました。

Dはというと、急変したEさんのことや、穴があったことが頭の中をぐるぐると巡り、整理がつかない状態だったそうです。

その日は、眠れないまま、朝になりました。Dはなるべく耳を澄ましていましたが、Eさんの部屋から物音は全くしませんでした。

Dは、私を含む友達何人かに連絡をしようと携帯を開きましたが、携帯の中にはEさんからの着信でいっぱいでした。その件数は60件。メールも来ていて100通を超えていました。

メールはどれも支離滅裂な長文で、Dに対する裏切りの追求がある反面、甘ったるい愛の言葉が書いてあったりと、Eさんの情緒の不安定さを伺える内容だったそうです。

EさんからのメールはDが携帯を開く朝にはパタリとなくなっていましたので、Dはいましか無いと思い、玄関をあけて満喫に逃げ込んだ、というわけです。

私はかなり気分が悪くなっていましたが、Dが不動産屋に行くというので、ついていくことにしました。

不動産屋につくと、紹介してくれた男性が「やはり来たか」と言いたげな顔で迎えてくれました。

Dはそこですぐに部屋の解約をして、Eさんのことについて訪ねました。

不動産屋は最初は渋っていましたが、Dが生き埋めにされかけたことを聞いて思い口を開きました。

彼女は幽霊なんかではなく人間です。しかし、だいぶ心に闇を持った女性でした。彼女は大学生ですが、大学にもう6年通っていて、6年前にそのアパートにやってきたそうです。彼女の親戚の不動産屋が縁戚にあって、不動産屋も最初は明るかった彼女に良くしていました。

いつしかEさんは、当時隣に住んでいた(後のDの部屋です)ホストの男性と交際を始めました。ホストもなかなか売れないホストで引っ越しの目処も立っておらず、不動産屋の見解では二人はしばらくこのアパートで交際を続けるだろう、と思っていたそうです。

しかし、ある時からホストが浮気をしているかもしれない、と彼女が不動産屋に相談するようになりました。それが浮気なのか、営業の一種なのかわからないと不動産屋はなだめていたそうですが、元々独占欲の強いEさんの熱は覚め止むことなく、いつしかホストの部屋に盗聴器を仕掛けるようになりました。

しかし、隣に彼女が住んでいるだけあって、ホストは部屋に相手を連れ込むことはせず、なかなか証拠を掴むことはできませんでした。

ある時、彼女が大学の合宿で3日、部屋を開けた際にやっと浮気の証拠を掴めたわけですが、これは彼女にとって期待していた悲しい結末でした。

期待はしていたものの、それは悲しくも期待通りに、彼が彼女を裏切っていたと痛感した瞬間でした。

さて、それからEさんはホストの彼と別れたわけでもなく、知らないフリをして彼と交際を続けていました。不動産屋もその件については吹っ切れたのかと思ったそうですが、それはただの勘違い。とんだ勘違いでした。

浮気相手の変死体が、近くの雑木林で発見されたのです。

死体は無残にも切り刻まれ、悪意に満ち溢れたものだと誰もがわかるような状態でした。

真っ先に疑われたのは、交際していたホストと、本当の彼女であるEさんでした。

しかし、ホストは殺害があった時間は出勤。Eさんはというと、その時初めてホストが浮気をしていたことを知ったかのような迫真の演技をして見せて、その場を切り抜けたそうです。

ホストの浮気について、あらかじめ知っていたのはEさんと不動産屋の2人のみだったので、不動産屋はすぐに「彼女が殺めた」とわかったそうですが、身内には変わりありません、警察に通報することが出来なかったそうです。

それからホストは精神を病み、実家に帰ってしまいました。Eさんは思わぬホストの引っ越しに泣き崩れました。もうこの時Eさんは精神以上の何かが壊れてしまっていたのでしょう。

それから隣の角部屋には、入居者が何度もやってきましたが、みんなが精神を病み部屋を出ていくようになりました。

気になった不動産屋があるとき退去者に、理由を尋ねると、とんでもない答えが返ってきました。

隣に住むEさんが毎日毎日、自分を付け回している。

最初は偶然だと思ったそうです。

スーパーでも駅でもコンビニでも、いつも行く先行く先にEさんがいるのです。

そして、もうひとつ退去者には気になることがありました。夜中2:30に目が覚めるのです。

そして、ある時床下からザクザクという音が聞こえたそうです。

そしてその時「ふふふ、ふふふ」と鼻歌を歌うEさんの声が聞こえたとか。

退去者はEさんにストーカーされていると判断して、引っ越すことにしたそうなのです。

後に不動産屋が彼女の部屋を尋ねたときに、窓から穴を探したそうですがやけに柔らかそうな土が小庭に広がっているだけで、穴はなかったといいます。

不動産屋は

「まだホストの彼のことを忘れられてないんだ。隣に男が越してくるたびに、付け回しているんだよ。何人かの退去者に聞いても、みんながそう言うんだ。Dくんみたいに交際にまで至った人がいるかはわからないけどな」

と言っていました。

そして、2:30。

これは亡くなった浮気相手が腕にはめていた時計の針が止まってしまっていた時刻。

つまり死亡推定時刻だそうです。

浮気相手が、Eさんの凶行を教えてくれようとしていたのでしょうか?

幽霊よりも怖い、人間のお話でした。

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
1,5028
9
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

ゾッとするね

あ~↓...昔の彼女思い出した...
ゾワゾワする...

言葉が足らなかったようですね。
変死体で発見されたのはホストの浮気相手の女性です。
その件で病んだホストが…ということです。


変死体で見つかった、って書いてあるあとに、
ホストは精神を病んで実家に帰った?
ってどういうことでしょう....。
そこ以外は本当に怖くて面白かったです!

怖いですね。
ドキドキしながら読ませて頂きました。
ありがとうございます。

うん。怖い(*_*)

実態のないものより、実態を持つ生身の人間のが怖いとよく言いますからね(;_;)

新作を投下いたしました。下書き保存していたため投稿が流れてしまいました。
よろしくお願いいたします。