リサイクルショップ シリーズ19〜不思議な喫茶店〜

中編6
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リサイクルショップ シリーズ19〜不思議な喫茶店〜

私は…

『秋野 紅葉(あきの くれは)』

あっ…これは仮名ね…

スペックは不気味な人…

とだけ言っておこう…

性別は言いたくない。

この町に住んで、二十猶予年…

何もないこの町に唯一私の心を満たすビルがある。

その外観は古ぼけた三階だてのビルだが、一階にあるリサイクルショップは私の憩いの場所だ…

雰囲気は、まず陰気…

店主は、無愛想…

売られている品物全てに何やら霊的なモノが憑いている…

堪らない…

(なんてね…無理やりリサイクルショップシリーズの登場人物になってみた…でも、取り敢えず続けます。)

それから…二階にある探偵事務所には興味はないが、三階にある喫茶店が私にとって最高の隠れ家だ…

いや、だった…

この話はその喫茶店で起こった、実話…(本当は、細い路地を入った所にある三階だてのビルの三階にある小さな喫茶店…)

私は何時ものように、喫茶店で珈琲を啜りながら、このサイトを開き怖い話を読んだり、自分で書いた話を投稿したりしていた。

その店は、一日中居ても何も言われないため、私は毎日、仕事用のパソコンを片手にその店で、過ごすことが日課になっていた…

仕事の合間を見てこのサイトを開く…

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「ふふっ…この話…怖い…ふふふ」

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一見したら怪しいとしか言いようが無い…

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「あ…あの…珈琲、お…おかわりお願いしていいですか?」

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と、あまり大きい声ではないが呼びかけると店主が出てきて、私のテーブルの上にあるマグカップを取ると、「少々お待ちください…」と頭を下げ店の奥に消えていく…

この店にはカウンターが無いので全て奥の調理場で珈琲を立てる。

間もなくすると珈琲が運ばれる…

特に後ろを振り返ることなく、小さく会釈をすると

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「あれ?お客さん、このサイト私も読んでるんですよ!スマホでですけど!」

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驚き、少し振り返ると、店員が珈琲を運んできた丸いステンレス製のトレイを胸にだき覗き込んでいる…

正直、うざい…

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「はぁ…そ…そうなんですか…」

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店員の顔を見る…

ははぁん…新人か…

あまり干渉して欲しくないものだ…

ここの店員は皆…と言っても店主と奥さんらしき人…あとアルバイト女性の三人でやっている店だった…皆それほど干渉してくることが無かったからこそ、この店が気に入っていたのに…

つまり、昨日まで働いていたバイトの子は辞めて、新しく入ったバイトなのだろう…

さっさと戻ればいいのに、いつまでも後ろから、画面を覗き込んでいた。

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「あ…あの…お…お仕事戻らないんですか…?」

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私は人との会話があまり上手くできない…そのため、やっとの思いで言葉を発すると…

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「ああ…大丈夫です。忙しく無いので…」

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と答えた。

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「やっぱ、画面が大きいと読みやすいですね?私もタブレットかパソコン買おうかなぁ…」

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勝手にしろよ…

いいから向こうに行ってくれ…

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「お客さんは投稿とかもしてるんですか?」

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我慢の限界はそこまで来ている…

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「え…ええ…まぁ…」

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小さな声で、言うと

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「え?なんてアカウント名ですか?読んで見たーい!!」

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この声に店主が気づいたのか、奥から出てくる…

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「絵美ちゃん!ちょっと…悪いけどこっちお願い…」

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「はーい。じゃっ…また!」

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と、敬礼のようなポーズをとって、ようやく奥に入って行った…

店主がこちらに、ペコ…と頭を下げる。

まったく…

人がせっかく自分の世界に浸って楽しんでいるというのに…邪魔だてしやがって…

なんだかんだで、長居をしてその店を出る…

さっきの店員が少し苦笑いに近い顔で

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「ありがとうございました。」

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と頭を下げた。

店主に叱られたのだろうか…

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次の日も、その店に行く…

珈琲を注文すると…

店員がトレイに私専用のマグカップを乗せ運んでくる…

顔を見る…

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??

昨日の女性じゃない…

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「どうも!お待たせしました!」

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と、ニコッと笑う…

この娘も元気ハツラツな私の苦手なタイプ…

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「ども…」

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と会釈をする…

パソコンを開き、仕事を開始…

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「あっ!そのパソコン…私の使ってるやつと同んなじぃ!」

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ぐ…

昨日の今日で、これか…

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「は…はあ…そ…そうなんですか…」

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「Endeavor NA601E

薄くて軽い、14型ノングレア液晶を搭載したスリムモバイルPC…あははっ!チラシで見て、覚えちゃった!」

(チラシを見たら確かにそう書いてあった。)

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うぜえ…

消えろ…

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「あ…あの…」

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私が困惑して震え気味で声を出す…

すると、また店主がこの光景に気づいたのか、店員を呼ぶ…

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「加奈子ちゃん!そっちはいいからこっちお願い!」

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「はーい。えへへ…すみません呼ばれちゃったので、失礼します!」

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まったく…

その日も、長居をして…夕方店を出る…

さっきの店員が少し浮かない表情で小さく頭を下げていた。

どうしたのだろう…

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次の日は、遠方に仕事に出掛けたのでその店には顔を出さなかった。

が、帰りに近くを通りかかったので、夜の喫茶店もいいなぁ…と立ち寄ることにした…

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「いらっしゃいませ…」

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あれ?

また違うアルバイト?

まぁ…いいか…

と、何時もの席に座る…

その日は仕事では無いので、ロイヤルミルクティーを注文。

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「お待たせしました…」

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と、スウっとテーブルに店のティーカップが運ばれる…

それもそうか、マグカップでロイヤルミルクティーは無いものな…

と口をつける…

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「あの…少しお話し宜しいですか?」

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ぐ…

またこいつも…

あまりにも頭に来たので、ぐわっと睨むと…

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「わぁ…ちょっと…聞きたいことがあって…すみません…お邪魔でしたら、結構です…」

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と、下がって行った。

なんなんだ…

最近この店、居心地が悪くなったぞ!

ロイヤルミルクティーを少し早めに飲み干すと、さっさと帰って寝てしまおうと立ち上がりレジに向かった…

レジの横にある鈴(リン)を鳴らし、

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(店主の姿が見えなかったな今日は…)

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などと考えつつ

財布を開き千円札をレジの上に置いた。

店員が出てこない…

もう一度、鈴を鳴らす。

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「すいません…」

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パタパタと駆けて来て、千円札を手に取りレジを開ける…

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「550円のお釣りです…」

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釣りを受け取り、店の扉に手を掛けた時だった…

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「あっ!…あの…?」

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なんだよ!

勢いよく振り返ると、店員がどうしたのか怯えたような顔をして、私の顔を見つめた…

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「な…何か?」

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そう尋ねたその時…頬にひとすじ涙が見えた気がした…

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「い…いえ…何でもないです…ありがとうございました…」

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わけが分からず店を後にした…

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その次の日…

書類を取引先に届けるために、喫茶店には立ち寄らなかったが…

昨日の事が気になったのもあり、夕方、店を訪ねた…

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[定休日]

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え?この店…

年中無休だったはず…

どうしたんだろう…

磨りガラスを目を細め覗く…

何も見えなかったが…

人の気配がある…

気になった…

駄目元で扉を少し引いてみた…

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開いた…

中を覗く…

店に入って直ぐに柱がある、その奥にテーブルなどが見えたが、人影は見えない…

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いや…

足が見える…

靴がプルプルと震えている…

誰の足だろう…?

気にはなったが、その震えかたが何と無く気持ちが悪くて、途端に怖くなった…

扉を音の立てないようゆっくり閉めて立ち去る…

少し早歩きで階段まで差し掛かり、階段に足を踏みこんだ時だった…

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「そこに誰かいるのかぁ!!?」

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店主の声だ!

パニックった!

どう降りたのか覚えていないほど凄い勢いで階段を駆け下りて、道路に出る…三階の喫茶店の窓を見上げた…

誰かがこちらを見ている…?

夕日がガラスに照っていて見えずらかったが目を凝らすと何と無く見えた。

三人?

いや、五人?

男性っぽい人影が一人

女性と思しき影が一人…二人…三人…四人…五人…

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六人だ…

あれは、恐らく…違うかもしれないけど…

店主と奥さん…それに、あのアルバイトの女の子達ではないかと思った。

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なんだかよく分からないがその時から、何と無くその店には行けなくなった…

あの時、あの店で何が行われてたのだろうか

怖くなくてごめんなさい。

Concrete
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面白かったです。
普段通ってる場所で起こった、何だか解らない恐怖。
こういうのがある意味一番怖いかもしれませんね。

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