リサイクルショップシリーズ24〜タバコ屋の小窓から見た息子の霊とヤミ金融の男

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リサイクルショップシリーズ24〜タバコ屋の小窓から見た息子の霊とヤミ金融の男

この場所でタバコ屋を始めて、どれくらいになりますかね…

息子が出来た頃に開いたので、57年くらいだったでしょうか…

忘れてしまうほどの年月、この小さな小窓から外を眺めてまいりました…

かつてよく来ていた方々も、タバコをお辞めになったのか…それともお亡くなりになったのか…随分お客さんも減りました。

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ある日、この辺りでは見かけないお客さんがいらして、確か…『パーラメント100'sボックス』をお買い上げになりました。

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言葉がこの辺りの訛りではありませんでしたから、直ぐに他の地方出身者だとわかりました…恐らく関西方面の方だと思います

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「ばあちゃん、パーラメントボックス一つもらえますか?

しかし、冷えまんなぁ…ばあちゃんも大変やな…こんなところで窓も開けっ放しで寒(さむ)ないの?」

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「いえ…私はそれ程寒くは有りませんよ…え…パーラメントボックスでしたかねぇ?」

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「うん…ところで…この辺に三村さんゆう人のウチ知りませんか?」

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この辺りで三村と言ったら私のウチしかありませんので、

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「三村はウチですが?」

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と答えると

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「え?ほんまでっか?…なんだ…アホみたいやな、あちこち探し周って見つけられんで困っとったんですわ…あそこのリサイクルショップの近くやって聞いたんやけど、分かれへんもんやからね…でも良かったわ…偶然やけどやっと見つけたで」

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「あの…私のウチにどのようなご用件で?」

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そう問いかけますと、頭を掻きながら…こうおっしゃいました

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「御宅の息子さん…大阪で亡くなりましてん…」

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耳を疑いました…私の息子は大阪に住んでいたことなど知りませんでしたので…

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「その方のお名前は?ウチの子は『貞治』ですが?」

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「ええ…その貞治ですわ…病気…ガンでしたわ…」

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「そ…そんな…でも、私の息子は大阪に居るなんて言ってませんでしたよ?」

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「そんなん知らんがな…大阪のワシんとこで金を借りよったんですから…

それでね、お母さん…あの男に貸した金でっけど…15万と6千なんですわ。事もあろう生命保険にも加入せんで死によったんで…ウチも困っとったんですわ…仕方ないんで、息子さんの実家であるお宅に伺ったってぇ訳ですわ…利子もおつけしてしめて、160万ってとこですが…払って貰えへんやろか?」

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そんなお金があるわけもなく、困りました。

それに、正直その『三村 貞治』が本当にウチの息子であるか保証もなしにそんなことを言われても困ってしまいます。

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「その貞治は本当にウチの息子なんでしょうか?」

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「アホなこと言われては困りますなぁ…ホンマに御宅の息子さんでっせ…写真がありますよって…」

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と、手にしていたハンドバッグから一枚の写真を取り出しカウンターに置きました。

見ると、痩せ細りかつての明るい笑顔の面影もなく、死人の様に目が窪んでおりましたが、紛れもなく私の息子が写っておりました…

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「そ…そんな…でも…ウチにはそんなお金は有りませんし…」

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「ほなら簡単な方法がありまっせ…お宅…生命保険は?」

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ニシャ…と嫌な顔をしながら言った、この言葉には背筋が凍りました。

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「それはどういう意味ですか?

まさか…」

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「はははっ!そのまさかですわ!

そうですなぁ…事故か…それとも病気を装ってか…でもばあちゃんはあれか?もう歳やし…老衰でもよろしいか?ははははは!」

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その顔は、笑っているにもかかわらず、信じられないほど怖ろしく見えました。

しかし、他に方法もありません…

どうしたらいいのかも分かりません…

息子のした事は私にも責任があります…まさかこの歳になって、息子の尻拭いをさせられるとは思いもいたしませんでした…

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「わかりました…この歳まで生きてもう思い残すことと言ったら、ウチを出た息子の事だけでしたが、その息子も死んだと言うのなら、思い残す事もありません…

どうしたらよろしいですか?自殺ですか?」

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そう問うと、眉間にシワを寄せながら首を横に振り

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「アホなこと言いなや…自殺したもんに保険なんかおりまっかいな…ワシにお任せを…」

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と言ってカウンターに肘をついた時でした…

その男の後ろに何やらぼんやりとしたモノが見えました…

不思議に思いそれを見つめておりますと、男が私の目線に気が付いたのかこう尋ねました。

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「ばあちゃん…何変な顔してますのん?ワシの後ろになんか付いてますのん?」

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と後ろを振り向き辺りを見渡しておりました。

その時です…

そのぼんやりとしたモノが何なのか分かりました。

息子でした。私を昔のように優しい目で見た後、男の身体にまるで溶け込むように入って行きました…

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「へ…な???何やこれ?ムッチャ気分悪なってきた…うげ…おうえ…あかんっ…これあかんやつや…ちょっ…ばあちゃん…また来ますよってに…」

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と、口を抑え慌てたように立ち去って行きました…

その後、彼がうちに尋ねてくることはありません…

恐らく息子が霊となって私を救ってくれたのでしょうね。

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