リサイクルショップシリーズ31〜高木林斎が描いた幽霊〜

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リサイクルショップシリーズ31〜高木林斎が描いた幽霊〜

俺の名前は『萩原 淳平』

高校2年生、帰宅部だ。

容姿は…とても良いものとは言えない…

ある日…

どういうわけか、付き合うことになった彼女の『遠藤 春子』に連れられ街のデパートに来ていた…

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「バカじゃないの?

あんたが足が遅いから売り切れちゃったんじゃないの…」

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デパート地下一階のスイーツ屋で冬限定のチョコレートが販売されていることを知った春子がどうしても食べたいと、俺を連れ来たのはいいが、既に売り切れ…

ムスっ…と『TULLY’s』の抹茶ラテを飲みながらさっさと二階の洋服屋に向かって行く…

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「俺の足が遅いんじゃなくて、お前が寝坊するからだろぅ?」

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と俺は不満をこぼしながら春子の後を追った…

寝坊の理由が酷い…

「寝てたら、宇宙人にさらわれそうになって、それから逃げる為寝れなかった…」

…たまにこの娘はおかしなことを口にする…

今、春子は一人暮らしを始めている。

親からの反対を押し切り、リサイクルショップ二階の元々物置として利用していた場所を叔父である店主に頼み込み、部屋を住めるよう改装して暮らしている。

親も叔父さんのビルならと承諾したものの、叔父である店主はいい面の皮…その部屋を物置として使うことが出来なくなったのだからたまらない…

その代わり店で働くことを提案してきたそうだ。

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「給料は出せないが家賃は要らないし食事も出すよ…その代わり…と言っちゃなんだけど…実は家内の美緒が妊娠をしたんだ…ちょうどよかった…二階の古着コーナーをバイトとして見て欲しいんだけどなぁ…どうだろう、それで良いってなら、部屋を空けるよ…」

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春子は、その提案に二つ返事で承諾した。

兎に角、ウチを出たかったそうだ…

勉強をするのにウチでは出来ないと言うのが一番の理由…

彼女のウチは大家族。

テレビ番組で取り上げられるほどだ…

狭いウチの中に総勢12人の人間が暮らしている…

その光景を俺もテレビで目にしたが、確かに勉強の出来る環境ではなかった。

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『大家族!遠藤家、肝っ玉かあさんの奮闘記。』

なる番組に春子や他の兄弟たちが出ているドキュメンタリーだ…

その番組放送後、学校では大きな反響があった。

長女 春子が可愛い!

次女 冬美が美人!

この学校にその姉妹が居る!

出来ることなら付き合いたい!

などと、俺達の教室に春子を覗きにくる男子生徒が後を経たなかった…

俺はその光景を、小さくなって見ることしかできなかった…でもなんだか誇らしい気持ちもあった…が…

春子に

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「付き合ってることは内緒ね!」

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と言われていたのでなんとも複雑な気持ちでいた…

しかし、隠し事というものは中々長続きしない。

一番知られたくなかった、今年から柔道部主将 になった『斎藤 聡士』に俺達が付き合っていることがばれてしまったのだ…

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「てめぇ!許さねえ!ちきしょう…なんでお前なんだ!?

美緒さんは結婚してるってし…今度は春子ちゃんまで…

俺の好きになる女はみ〜んなっ!

人のものだぁぁああっ!!!」

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奴のパワーは人並を大きく外れている、駅前に停めてあった俺の自転車を軽々と持ち上げると数メートル先に放り投げ、蹴るは蹴るはの大騒ぎ…

もし投げた場所に人が立っていたら大惨事だ。

メチャクチャにひん曲がった自転車を押して、リサイクルショップで働く春子の元に逃げたが、奴はずっと後をつけてきて店から出てきた春子に「別れろ別れろ!」と騒ぎたてる始末…

しまいに、俺が自転車を斎藤に壊されたことを親に話すと、弁償してもらえだの何だのとウチの親まで出てきて、手のつけようがない事にまで発展…

その後、斎藤とはあまり話せなくなり…

仲のいい親友を失う事となってしまった…

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…………………

デパートのエスカレーターに乗り、二階に向かう途中春子がくるりと振り返り

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「でも、淳ちゃんも見たでしょ?あたしが連れさられそうになったの…」

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と、眉をひそめ聞いてきた。

正直、見ていない…

昨日、春子の部屋に泊まったが…宇宙人どころか幽霊すら見ていない…

春子の話によれば、夜、ふと目が覚めると…目の前に『グレイタイプ』…

説明しなくても分かると思うが、その宇宙人が立って居たと言う…

数人で春子の体を押さえつけ、窓の外に浮遊するUFOに連れて行こうとしたと話した…

そんな事があるわけがないと、言っても、本当なんだってば…と聞かない…

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「なら、今夜も泊まるよ…」

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と言うと、

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「馬鹿…淳ちゃんのエッチ…」

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と、全く関係ない期待をする始末…

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「そうじゃなくて…その宇宙人だか何だかを見届けようと思ってだな…」

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と少し、焦り気味で答えると

「淳ちゃんしつこいんだもん…」

と答える。

エッチなのはどっちなのか…

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「そうかな…武藤先輩と比べてどう?」

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と聞くと

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「その話はしない約束…」

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と、頬を膨らましていた。

この娘は既に処女ではない…そんな事は百も承知だが気になっているのは隠しきれなかった。

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…………………

彼方此方と連れ回されて、時間も既にだいぶ遅い時間…

限定のチョコレートが食べられなかった事に文句タラタラの春子について行き、リサイクルショップ二階の部屋に入ると、昨日となんだが違う空気みたいなものを感じた…

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「ねえ…何か変な感じしない?」

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春子もその異変に気付いたのか、俺の袖にすがるようにしがみついた…

気のせいだよ…と引っ越しの時に買ったソファに飛び乗った…

テレビを付けて、丁度放送していたオリンピックの男子フィギュアを二人で観戦した。

羽生が金、高橋が胴を獲得した事を二人で歓喜して、そろそろ遅いし寝ようかと、ベッドに入る…

さっき感じた不安感が再び襲ったのは、小さなベッドの布団の中で身体をつつき合ってイチャついている時だった…

気持ちが盛り上がり始めキスをしていると、奇妙な音が部屋全体を包み始めた…

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『ブブ…ブブッ…ブブ…』

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「何?何の音コレ?」

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最初に気がついたのは春子だった…

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「お〜い〜春子、お前オナラしただろぉ?」

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俺の言葉に頬を膨らまして

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「違うよう!淳ちゃんがしたんでしょう?」

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と、睨む。

首を横に振り、布団を剥ぎ脱いだシャツを着て起き上がる…

辺りを見渡したが、暗くて何も見えない…

明かりを付けようと、部屋を手探りで歩き、スイッチを探した…

足に何かがぶつかる…

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「痛っ!」

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小指の先を当ててしまい、蹲る…

というより転ぶ…

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「どうしたの?…淳ちゃん?」

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声にならない痛みに耐えながら、這うようにスイッチの元へ…

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『ぬちゃぁ…』

shake

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「ぶわぁっ!何だコレ!」

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顔に何か濡れたものが当たったようなそんな感覚を覚えた…

目の前に何か得体の知れないものが立っている…

顔を上げ上を見る…

自分の血の気が『ゾゾォォォォ…』っと一気に引くのが分かった…

暗いはずの部屋に濡れた白い着物を着た女性のうしろ姿がハッキリと目に映っている…

ビッショリとずぶ濡れた女性はブルブル…と震え、いかにも寒そうに肩をすぼめ

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『カタカタ…』っと歯を鳴らす…

春子にはその女性が見えていないのか、

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「淳ちゃんっ!?どうしたの?

何してるの?

ちょっ…明かりまだ?!」

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と、聞いている。

返事はおろか声も出せず、動くことも出来ず…

目の前のその女性を見ていると…

その女の首が、ゆっくりと俺の方へ振り返り始める…

辞めてくれ…こっちを見るなよ…

しかし、願いも虚しく、その首は周り続ける…

普通ならそれ以上回らない位置をすんなりと超え、その首は周り続け…

完全に背中を向けたまま、首だけが180度此方を向く…

その不気味な姿は俺の全身の毛を逆立て、冷や汗を呼んだ…

瞼が垂れ下がり、泣くでも無く笑うでもない不気味な顔…舌をべろぉぉ…と出して顔を歪める…

俺の顔を真っ赤に充血した目でギラリっと見ると、その目にホロリと涙が溢れた…

だが、その涙は真っ赤に染まっている…零れ落ちた涙が俺の顔にヒタヒタ…と落ちる…

生暖かい感触が額を流れる…

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『あ…た…し…の…坊や…』

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と不気味にパックリと口を開く…

お歯黒を塗っているのか口の中が真っ暗でまるで、俺の事を吸い込む闇に見えた…

今の時代の女性じゃない事が分かる…

濡れ髪が腰あたりまで長く、先の方で白い布で縛られていた…

着物が透け下半身に下帯が見える…

俺はというと既に金縛りに掛かり身体が全くいうことをきかない…

叫びたいのに声すらでない…

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以前、春子は何も見えていないらしく

「何してるの?早く電気つけてよぉ!」

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と叫んでいる。

怖くて、目をつむりたいのに、目瞬きすらできない…

口を信じられない位…顎が外れているほど大きく開け、嫌な声を上げ始めた…

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『あぁぁあぁあぁあぁ…があぁあ…あ…た…し…の…坊…やぁあぁあぁ…みぃ…つぅ…けぇ…たあぁあぁ…』

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その時、女は急にしゃがみこむと、顔をそのまま、俺の方へ近づける…

というよりか、背中を向けたまま後ろに転ぶような感じ…

だが、顔は此方を向いているので、俺の顔に女の顔が接近するっ!

ぶつかるっ!

と思った瞬間…

パッ…と明かりがついた…

ふっ…と見ると、春子が眉を下げ膨れっ面で俺の顔を睨んでいる…

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「淳ちゃん何やってんの?」

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自分でも説明のできない位の恐怖…

しかし、あの女…何処かで見たことのあるような…

その夜は、布団を頭まで被り震えて過ごした…

春子が俺の身体を抱き、どうしたどうした…と聞いたが答えたくなかった…

大好きな彼女の部屋にあんな怖ろしいものが居るだなんて口が裂けても言えやしない…

その後も、春子の部屋に何度か嫌々ながら泊まる機会があったが、その度に寝ている側で

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『ブブ…ブブッ…ブブ…』

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と俺の耳元であの女が唇を鳴らしにやって来るのだ…

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…………………

思い出したことがある…

あの女は以前、歴史資料館の見学実習の時、幽霊画を集めたコーナーで見た

『明治21年 南画家 高木林斎が描いた幽霊』の写真に何処と無く似ていた…

その後、春子が部屋を整理している時に、本物の幽霊画を発見したのは、言うまでもない。流石…元質屋…

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お久しぶりです(^^)
相変わらずの文章力(^^)
1ヶ月以上多忙でin出来ない間に31話もあり時間が空いたら1話ずつ読もうと思いつつ31話だけ今読んじゃいました(^.^)

見つけた…と言ってるところを見ると淳平君は幽霊の女性の子供の生まれ変わりなのか?と思ってしまいました(・・;)

見えなくても居ると感じる恐怖…味わいたくないですね^^;