中編3
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よくある話。

私の通っていた中学校には、こんな噂がありました。

今、駐車場になっているゴミ捨て場は、昔、戦争の時に遺体を燃やす焼却炉として使われていた。

よくある話です。

他にも、骸骨が動くーとか、B棟の外付け階段は自殺した人の霊がいるから解放されない、とか。

本当に、よくある学校の怪談という感じの話がたくさんありました。

私は、全然信じていませんでした。

昔から、お化けと名の付くものは全て錯覚だと祖母に言われて来たからです。

よく不思議な体験をしましたが、その度に温厚なはずの祖母に怒られていました。

それにはそれである理由があったんですが、今回の話には直接関係ないので割愛しますね。

まぁ、とにかく、そんな噂、私は信じていなかったんです。

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そうやって私はこの学校で3年間を過ごすんだろうな、そう思っていた時でした。

私が、3年たった今でもはっきりと覚えているある出来事が起こったんです。

私は中学時代美術部に所属していたのですが、毎年体育祭の時期になると体育祭で使う入場門やバックボードを作ったりで帰りが遅くなるんです。

しかも、油性の絵の具を使うので、3回の美術室から前述した野外の駐車場までおりて作業をしていました。

体操服を絵の具でベタベタに汚しながらする作業は、とても楽しくて、みんなで夢中になって絵を書いていた、そんな風に記憶しています。

その日も随分と遅くまで作業をして、日も暮れたし、使った絵筆やボールを美術室まで持って上がろうということになりました。

友人たちは先に粗方、絵筆やボールを持って美術室に上がり、私は辺りに飛ばしてしまった絵の具を拭き取り、絵筆を回収していました。

下を向いてしゃがみ込み、1人で絵筆の先に着いた絵の具を振り落としていた時。

ふわっと、前髪を揺らすぬるい風が吹きました。

まだ5月なのに随分と熱い風が吹くな。そう思った時です。

2本の裸足の白い足が、私の目の前に現れ、絵筆を差し出してくれたんです。

「お、さんきゅ。てか、もう洗い終わったん?」

私は、その人に話しかけました。

友人の1人が遅い私を手伝いに来てくれたのだろう、そう思ったんです。

「……………………。」

「ん?どーしたん?具合悪いと?」

ゆっくりと、顔を上げた時です。

ぽたん、ぽたん。

私の顔に、何かが降って来ました。

あつい、液体。

「え?」

目に映ったのは、真白だったであろう、汚れたワンピースを着た裸足の少女でした。

その子の、み開かれた両眼からは涙がこぼれ、皮膚は焼け爛れ、髪には炎が燃え移り…

私の顔に、落ちて来ていたのは、その子の涙でした。

腰が抜けました。

ずるりと尻餅を着いて座り込んだ私の足に、少女の手が伸ばされる…

そして、とけた皮膚が私の足に…

そこで、私は友人に肩を揺すぶられました。

「ちょ、どーしたん?

雨降って来とーよ?早やく部室上がろ?」

「え、あれ、女の子は?」

「はぁ?ずっと、アンタ1人やったやん!」

私は、友人に手を引かれその場を後にしました。

でも。

私は、あの少女が夢うつつの中での存在だとは思えません。

だって、私の足にはその子の手から零れ落ちたあつい皮膚での火傷の後がまだ…

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