短編1
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目を瞑って11

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 妹の希沙が来ていた。テレビを楽しそうに観ている。希沙はいつも薄いピンクのティシャツに白のデニムを履いていた。

「希沙、寒くないか?」

「平気」

「親父は?」

「普通」

 時折笑う希沙。

「希沙」

「ん?」

「お前、死んでんだって」

 希沙は笑う顔を俺に向けた。

「知ってた? お母さんだけは、兄貴が本物だって信じてた」

「知らないな」

「だから、アタシたちは生きていられなかったの。仕方ないわ」

「死んだのは俺のせいか?」

「違うわ、死んだから生きていられるの」

 希沙はまたテレビに向いた。

「この人、面白い」

 希沙はいつも裸足だった。足の裏が汚れている。

「楠木さんって知ってるか? 自殺したよ」

「あの人は兄貴と関係ない。仲良くなりたかったみたいだけど、お父さんがダメだって言ってた。それなのに、わざわざ一緒に住んで。お塩盛ったり、お祓いしたり。バカみたい」

 希沙は肩にかかるくらいの髪の毛を耳にかけた。赤い小さな石が光った。

「母さんって、死んだのいつだったかな」

 希沙は立ち上がって俺の前に立った。ライトの逆光で表情が見えなかった。

「忘れた」

 希沙は、帰るねと出ていく。

 どこへ帰るのかは聞いたこともない。

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