中編3
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『オオクチナワ』

失礼して地元の昔話を一つお話したいと思います。

まず題名にある『クチナワ』とは「朽縄」と書き「蛇」を意味する隠語であります。

これは大蛇にまつわるお話であり、舞台となった村でこの一事は長らく禁忌の対象であったとの事でした。

さて私がこのお話を知る発端となったのは庭で村の古老数人からこれも地元の昔話である『塩辛坊主』の話を聞いている時でした。

ふと軒先を見ると大きなアオダイショウがカエルを追いかけているのに気づいたのです。

「あぁ 見事にデカい!」と感心していると一人の古老が「小さい。ここいらには一升ビン程の太さの奴がおる」と言い、もう一人は「もっと昔は犬でも呑み込むクチナワがおった」と言ったのです。

ここは南国と言われてはいますが冬は寒く雪だって降る事があります。熱帯のジャングルならまだしもそんな大蛇が居たとは思えません…

がしかし、居たと…その「クチナワ」の為に今でも祟られている家が隣村にあるとの事でした。

なぜ祟られる事になったのか…お話を始めます…

火縄銃で猟をしていた頃の事…腕の良い鹿撃ちの猟師が居ました。

彼は二頭の犬を従えて猟に出れば必ず獲物を得て帰ったそうです。

その日も山へ入り鹿を探していたのですが夕方になっても足跡一つ見つけられず、気がつくと犬達ともはぐれ見知らぬ場所に居たそうです。

山を熟知している猟師が道に迷う…これは悪い事の起こる前触れだと感じ持っていた「隠し玉」…(願かけをした鉄砲の玉で一発しか無くこれを使うと猟師を辞めなければならないらしいです。「守り玉」とも言うらしく、何かの文字が彫り込まれているとの事でした)

…に手を伸ばしたそうです。

すると何処からか犬達の鳴き声…すかさず彼は鹿笛を吹き犬達を呼びましたが一向に現れません。

歩きながら探している内に谷間の様な開けた岩場に出てきました。

そこでもう一度鹿笛を吹いていると、頭上から湯気の立つ様なシューシューという音が降ってきたので見上げてみると、巨大な蛇が鎌首をもたげ彼の犬をくわえて見つめて居ました。

その蛇の腹は大きくなっており、もう一頭がどうなったか考えるまでもない事でした。

彼はカッと怒り「隠し玉」を鉄砲にこめ大蛇の頭に狙いを付けました。

一瞬の静寂の後…ドーンという爆音と共に大蛇は谷底へと墜ちていったのです…

そしてその数年後、掟の通り猟師を辞めた彼は村の友人と二人して山に入り山菜を集めていたそうです。

村人達には、何故自分が猟師を辞めたか一切知らせてはいませんでした。大蛇を仕留めたのを知るのは自分只一人…

ふと彼はある事に気づきます。「この場所は見覚えがある…」「そぉ…自分が大蛇を仕留めた場所…ここがそうだ…」

途端に彼は友人に大蛇を仕留めた事を告げ自慢したくなりました。

谷底を見ると大蛇の白骨が散らばっています…

自慢気にそれを示し友人に語る彼…と…その時…

『お前じゃったかぁ~!』

と地が裂ける程の大声が聞こえたそうです…

気がつくと二人は村に帰り着いており元猟師であった彼は高熱を発して寝込んでしまいました。

七日七晩、熱に苦しみ衰弱し最後を悟った彼は友人に事の顛末を語った後、家の柱に蛇のように体を巻き付けて亡くなったそうです。

その後も大蛇の祟りは彼の一族に降りかかり今日に至るとの事でした。

以上が私の聞いた『オオクチナワ』のお話です。

実際にあった事だと古老は最後にポツリと言いました…

この方がこの話の舞台となった村の出身であると知ったのは大分後の事です。

最後までお付き合い下さり、有難う御座いました。ではまたの機会に…失礼します。

怖い話投稿:ホラーテラー マァくんさん  

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