中編6
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幼なじみのA

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オレがガキの頃、近所にAと言う幼なじみがいた。学年も同じで、毎朝一緒に学校に行った。

Aは何故か未来のことをよく知ってて、その頃夢中だったマンガとか、アニメとかについて、来週どうなるかを教えてくれた。

なんで知ってるのか気になって、一体どこから聞いてきたんだ?と聞いたら、Aは「夢で見た」と言っていた。おそらく予知夢みたいなものだったんだろうけど、その頃のオレはアホだったので、「いいなー、オレも夢で見たいなー」としか思ってなかった。

そんなAが、五年生になったときに死んだ。トラックにひき逃げされて即死だったらしい。

Aの葬式は身内だけで行われ、遺体を前に最後の挨拶も出来なかった。オレはしばらくAが居なくなったことを自覚できなかったけど、Aの妹が寂しそうにしているのを見て、少しずつAの死を認識していった。

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んで最近の話。先月のGWの時、田舎に帰省した。Aの家の前を歩いてたら、Aのおばさんに会った。

「おひさしぶりです」

「あら、○○君、すっかり大人になったねー」

なんて軽く立ち話をして、Aに線香でも…とA宅にお邪魔した。

Aに線香を上げてからまたおばさんと世間話をしていると、ふとぱたぱたと歩く音が聞こえてきた。

「○○にいちゃん!」

Aの妹だった。

Aが亡くなってから、オレはAの妹が寂しそうにしているのが見ていられなくなって、毎朝A妹と色んな話をしながら学校に行った。その内、自然とオレのことをお兄ちゃんと呼ぶようになってた。

そのままA妹と二人で「彼氏は出来たか?」とか「大学はどうだ?」とか、まぁ色々と世間話。そのうちAの話題になって、ふと聞いてみた。

「ひき逃げ犯は捕まった?」

「あ、うん、大丈夫…」

何か触れちゃいけないことに触れてしまったらしい。それ以上は聞かなかった。

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家に帰って夕食の時、おふくろに聞いてみた。

「Aってトラックにひき逃げされたんだよね?」

「あぁ、A君?そう言ってたんだっけ…」

「そう言ってたってどういう意味?」

「確か…詳しく知らないけど、変死とかなんとか」

「変死?脳卒中とか?」

「知らないけど、子供達にショックを与えないためとか、通勤途中の車に気をつけるように、トラックに轢かれたって話になったんじゃなかったかな」

「んじゃ、ひき逃げじゃないのか」

「うん。そうだけど、詳しいことは知らないねぇ」

…謎が深まってしまった。

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その夜Aのことが気になって、卒業アルバムとか文集とかを引っ張り出して、片っ端から読んでみた。Aの文章は至って普通だったけど「同じクラスの人を書いてみよう」ってやつで、Aのことを書いている文章があった。

「A君は未来を知っててすごい、火事とかも知っててすごい」みたいなアホな文章だったが、それで思い出した。

オレはAとの通学途中、毎朝のように未来の話を聞いた。オレの動機は至って自己満で、好きな漫画やアニメの来週の話が知りたくて知りたくてどーしようもなくて、アホみたいに毎日Aに教えて君をしていたんだが、たまに全く関係ない話をすることがあった。

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ある朝Aが家から出てくると、腕に包帯をしていた。

例によって、オレはアホな語り口で話しかけた(と思う)

「どうしたそれ?」

「昨日の夜火事があって、やけどした」

「え、火事?どこ?痛くない?」

「ガッコー行く道の途中に茶色いいるじゃん?あそこんち」

「マジで?見に行くぞ!!」

「おう!!」

そう言って、二人でその家に駆けてったんだけど、家は火事にはなっていなかった。茶色い雑種の中型犬が、いつもと変わらずオレ達に向かって吠えるだけだった。

「何だよ-、嘘かよー」

「いや、嘘じゃないもん、ホントに見たし」

その何日か後、その家は全焼した。

ちなみに、その火事で人とか死んでなかったと思う。怪我がなくて何よりみたいな話を聞いたし。あとから新しい家が建って、あの犬も戻ってきてたと思う。

その件でオレとAは「Aが夢で未来を見てる」っていう結論に達した。

その頃「1999年7月にノストラダムスの大王が~」みたいな「世界の終わりがやってくるぞー」的な話が流行ってて、オレはAに「1999年7月に地球がどうなってくるか見てきて」と言った。

何日かしてAはオレに言った。

「何にもなってなかった」

「何だよ、つまんねー」

「でもすごいゲーム機とか見たぞ」

「え、マジ?教えてよ!」

予知夢を自己満にしか使えなかった、アホなオレ達だった…

Aはその後、どんどん未来のことを…と言うか、未来のゲーム機について教えてくれるようになった。今で言う、Wiiとか任天堂DSみたいな話も聞いた。

最後の方は、

「でかいテレビで恐竜とか飛行機がテレビから飛び出してきた」

みたいなこと言ってたから、3Dのゲームなのかな。もしかしたら、今よりもっと未来を見てたのかもしれない。

それから程なくしてAは亡くなった。

文集を持ったまま色々思い出してるうちに、やはり死因がどうしても気になって、A妹に電話した。

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「明日ヒマか?」

「昼間なら大丈夫だけど」

「んじゃ兄貴だからメシでもおごってやろう」

と言って、半ば強引にA妹と約束を取り付けた。

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翌日、A妹と郊外のアウトレットに行き、メシを食って、午後3時前にはそこを出た。帰りの車の中で、A妹とAの思い出話をする。どう切り出すか迷ったが、A妹がAの予知夢の話をしたので「ここぞ!」と思い、こう切り出した。

「予知夢が見られるなら、トラックの件も先に気づければよかったんだけどな…」

「うん…、あのね」

「うん?」

「これ本当は言っちゃいけないって言うか、言うなって言われてるし、あまり話したくないんだけど」

「うん」

「お兄ちゃん(Aのこと)トラックじゃないの」

「…どういうこと?」

少し間をおいて、A妹は話し始めた。

「あの日のことだけど…」

「お兄ちゃんと私は一緒の部屋に寝てたんだけど、 朝起きたらお兄ちゃんはまだ寝てて、私は一人で居間に行ったの」

shake

「ちょっとしたら突然子供部屋から、お兄ちゃんの叫び声が聞こえて。ぎゃーーって」

「お母さんが慌てて子供部屋に行ったら、お母さんも悲鳴あげちゃって」

「びっくりして私も部屋に行ったんだけど…そしたらお兄ちゃんが…」

オレは黙って、A妹の次の言葉を待っていた。

「…焼けて、死んでた…」

「焼けて?」

「黒こげって言うか、真っ黒って言うか…」

shake

A妹の手が震えていた。オレも少し震えてた。

「私が子供部屋を出て、ほんのちょっとの間に、そうなって…」

オレは正直言葉を無くしてしまって、ただ頷くことしか出来なかった。

「ごめんなさい、変な話で…」

「いや、いいよ。オレもAの最後のこと、知りたかったから」

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オレはその時、頭の中でぐるぐる色々と考えてて「もしかして人体発火現象ってやつか?」と思い、更に一つだけ聞いた。

「ごめん、一つだけ聞きたい。人体発火現象って知ってるか?」

「うん、前に調べたことあるけど、あれじゃない。まるで炭のようになったって後から聞いた」

僅かな時間で炭に?…そんなことあるのだろうか。

オレとA妹は、そのまま言葉を交わすこともなく車を走らせ、「またね」の挨拶で別れた。

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ここからはオレの予想でしかないんだけど、Aは「予知夢で見た火事」で「やけど」を負っていたから、もしかしたら「予知夢」ですごい火力に遭遇したとか…。

でも、人体が瞬間的に炭になるようなことってあるんだろうか?オレにはわからんけども。

Aは最後に何を見たのかなぁ。

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