長編8
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ホテルの怪

出張で都内の某ビジネスホテルに予約を取っていた

仕事も終わり、ホテルに着いたのは夜の7時位だったか

フロントの女性に予約してある名前(仮にKとしとくか)を伝える

すると…

「大変申し訳ございませんがK様での御予約が入っておりません」

との事

おかしいなと思い予約した時の携帯の送信履歴を確認する…確かにこのホテルの番号にかけてる

まぁ、取れてないのなら仕方ない

「部屋、今から入りたいんだけど…」

伝えるとフロントは少しパソコン画面を見て何か考えてる様子

(そんな混んでるのか…?ってか、別にココじゃなくてもいいんだけど…)と考えていると

「303号室になります…こちらの用紙にお名前から記入して下さい…」

(良かったぁ…別のホテル探すのも手間だもんなぁ)

サラっと書いてカードキーを取りエレベーターへ

(…しっかし、さすが3流ホテルだな、あのフロントの女俺と目も合わさんとはなってない!)

フロントの女の態度の悪さに少し腹を立てながら3階に着いた

鍵を開け、中に入った…

長い夜が幕を開けた

部屋は入ってすぐ左手にユニットバス、右手にクローゼット、奥にベットと…まぁ普通の部屋だ

ベットに座り、買って来たビールを開けて一息つく

すると…

テレビが不意についた

(リモコンでも踏んだか?)

と思ったがリモコンはテレビの横に置いてある

(まぁ、いいか…)

あまり気にせず風呂場へ向かう…

風呂場の床が濡れていた(やってくれるわこの4流ホテルが!!)

と思いながら浴槽に湯を溜める

(湯の出が悪い!)

呆れながらフッと濡れた手を何気なく見る…長い髪が2~3本絡んでいた

(何だこりゃ?)

少し嫌な予感がしながら再び浴槽に目を向ける

すると…

黒い、長い髪がまるで生き物の様にユラユラと浴槽を踊っていた

嫌な予感が確信に変わり始めた

ピンポーン…

呼び鈴が鳴った

不覚にもビクッとなっちまった…

(だ、誰だ…)

恐る恐る覗き穴(?)から外を見ると…

びしょ濡れの女がドアの前に立っていた

(あっちゃー…)

と、頭を抱えながらこれはヤバいのでは?と考えていると

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

(…いや、洒落にならん…)

取り敢えずフロントに電話だ!

受話器を取り耳に近付ける…

「…開けて…」

ガチャ

すぐに切った

(八方塞がり…か、さて…どーする…)

八方塞がり…前門の虎、後門の狼とはよく言ったものだ

どーにも出来ん!

その間にも部屋の呼び鈴は鳴り続ける…

頭をガシガシかきながら思う…(こんな時にアイツがいれば…)

アイツとはTの事…俺とは2コ歳が離れている会社の後輩だ

寺の息子らしく、やたら霊感もあるらしい

下手な霊能力者よりよっぽど頼りになる男だ

半ば諦めながら携帯を取り出して掛けてみる

(これがダメなら…)

腹をくくっていると

「お疲れ~ス!」

Tが出た!(ウッシ!!)

軽くガッツポーズ

T「どーしたんスか?今確か出張中ですよね?」

俺「そうなんだよ、ってか今それどころじゃなくて実は…」

本題を話そうとしたらTがボソリ

「…女ですか…」

!!

唖然とする俺

Tが続ける

「Kさん、今部屋ですか?何処に居ます?」

俺「あ、ああ部屋でドア付近にいるけど…お前なんで…」

すかさずTが…

T「ならドアからすぐ離れて、それと絶対に窓もドアも開けちゃダメですよ!」

電話越しのTの気迫に圧倒されながら言う通りにする

T「厄介なのに憑かれましたね…フロントに電話は?って、通らないから僕に掛けて来たんですよね…。」

全てを見通すかのようなTの言葉に驚きながらこの後どうすればいいのかワラをも掴む思いで聞いてみる

T「取り敢えず、朝まで待つことですね

寝てはダメですよ?すぐ入ってきちゃいますから」

(それは部屋に?それとも俺に?)聞こうとしたが怖いので止めた

T「Kさんが起きてて、ドアを開けない限り相手も部屋に入ってはこれません。それが証拠にドアの前に立っていて『開けて』と言って来てるんですよね?入りたいけど入れないって事ですよ」

俺「おぉ!マジか!!」

少し希望が見えた

T「そのかわり起きてる間中、死ぬほど怖い目にあいますけどね…」

希望は一瞬にして砕かれた…

バンッ、バンッ

窓から音がなる…

そぉっと見てみると窓ガラス一面に手形がビッシリ

俺「…ま、窓にな、手の跡がビッシリだよTクン…」

ビビリながら言うとTはこう言った

「多分、その位はまだ序の口ですよ…」

引きつる自分の苦笑いが窓ガラス映る…

あぁ夜はこれからなのだ…と小さく肩を落とした…

T「Kさん、塩なんて持ってないですよね?」

俺「持ってない…持ってる筈ないだろ塩なんてぇ…」

窓の手形を見ながら泣きそうな声で答える

T「…そぉですか、なら酒ならどぉですか?あります?」

俺「ビールならあるけど…」

T「ん~OK、ならそれをコップに入れてドアと窓の前に置いて下さい」

すぐに言われた通りにした

俺「やったぞ、ハァハァハァ…で、これからどうする?」

焦る俺にTが言う

T「じゃあ、余ったビールを飲んで下さい」

すぐに持っていたビールを飲み干した…

キリっとうまい

俺「飲んだぞ」

T「どぉです?少し落ち着きましたか?」

俺「お、おぉ」

最後のは俺への気遣いだったらしい

T「じゃあ、あとは布団に潜ってひたすら朝まで待って下さい。途中、何があっても決して玄関や窓は開けちゃダメですよ?もし開けたら…ちゃい…ま…」

ツーツーツー電話が…切れた

と、同時に携帯からまた女の声で…

「…開けて…開けてよぉ…」

「ヒィっ」

今まで出した事もないような声が出てしまった…

頼りのTとの交信が最悪の形で途絶えた…

もう頼れるものはビールと自分しかいないそんな気がした…

これまでの流れを考える…全てはこの部屋から始まった

つまり、あの女は俺と言うよりはこの部屋に何か用があるのでは?

そう思い、部屋の中を物色した…

冷蔵庫、風呂場(髪がさっきより増えてる気がしたが無視した)ベットの下、クローゼット

するとクローゼットの上、棚になっている所で何かが手に触れた

見るとそれは小さなダイヤのイヤリングだった…

まさか…これは…

手の中のイヤリングを見つめる

(これを探してるんじゃ…)

そう思いながら何気なく玄関のビールの入ったコップを覗く

(めっちゃ黒くなってるんですけど…)

再び恐怖がこみあげて来て足早にベットへ向かおうとした時

コン、コン、コン

ドアをノックする音が聞こえる

嫌だったが覗き穴を見るとフロントにいた女性スタッフがそこに立っていた

「お客様、お呼びになりましたか?ドアを開けて下さい…早く開けて下さい…」

俺は半ベソをかきながら喜んでドアを開けた…

ドアの外には誰もいなかった…

Tの言葉を思い出す「何があっても、ドアを開けちゃダメですよ…開けたら…」

その後、Tは何て言おうとしたのかな…

俺はそう思いながら人生初の金縛りになっていた…

(金縛り…こういうものだったのか…あぁ、何でドア開けちゃったかなぁ、俺の馬鹿、アホ、ハゲっ!)

後悔と恐怖の念が頭を駆け巡る

体は動かない…でも目は見えて、意識もハッキリとしている

(小説とかテレビで聞くのと全く一緒だ…うわぁ、何か出てきそう…ヤバい、ヤバいヤバいヤバい…)

期待通り何かはそおっと俺の肩に手を置いて部屋へと俺を引きずり込みドアを閉めた

絶望の音が聞こえる

ガチャ…

都合良く気絶でもしないか本気で願った…

……

(あぁ、無駄だった)

そんな事を思っていると…

女が目の前にやって来た…ずぶ濡れの女…前髪が垂れてて顔がよく見えない(見たくもない)

女が喋る…と、言うより意識に直接伝わってくるようなそんな感覚だった

「…やっと…開けてくれた……ヒヒっ…あなたったら…酷いヒトねぇ…」

顔がホント近くまで来た、そこでやっと女の顔が見えた

目が左右斜め45°を向いてホント、イッチまってる顔をしていた…

そんな恐怖の中でも俺の意識はハッキリしていてホント勘弁して欲しかった

女が続ける

「約束…守ってくれるよねぃ…フィフ…フフ…約束…守ってくれるよねぃ…?」

何の事だか全く分からなかった…それよりただただ怖かった…

(無理です無理です無理です…ホント分からないんです…帰って下さい、帰って下さい、帰れ、帰れ帰れ)

心の中でそう思っていると、女が狂ったように(まぁ、最初から狂ってはいたんだが更にという意味)

頭を上下に振りだして

「な゛んでそんな…事い゛う゛ー…なんで、な゛んでー」

凄まじく大きい声で恐怖と混乱から意識が遠くにいきそうになった…

…が、願いはかなわなかった…(やっぱ現実はそう都合良くいかない…)

(あぁ、死ぬな…これ死んだは俺…だって気絶もしないでこんな怖い事されちゃってるし…もう死んだな)

諦めかけたその時、手から例のイヤリングが落ちた…

女が過剰にそれに反応を示す

(来た、来た、来た来たぁ~、これだろ!お前探してたのこれだろ!約束とかわからんけどこれが何かのキッカケになれぇ…)

強く願った…

女がイヤリングを拾いあげて一言…

「何…?これ…」

(知らないのかい!)

やはり願いは叶わなかった…

…かのように見えた。

女がイヤリングをジロジロ見ている

(目玉があんな方向にいってても見えるもんなのか?)

どーでもいい事を考えながら女の行動に目を見張った

女がまた顔を近付けてこう言って来た

「わ゛…私に…わた………私に?」

状況は呑み込めんがどうやら関心を示しているようだ…勝機!!

心の中で(そうですそうです、アナタの物です、ダイヤです、プラチナです、どうぞ、どうぞぉ…)

すると女は、少し俺を見て

「あ゛なた…も…う…は……さ…ない」

そう言って消えてゆく女を見てやっと俺の意識は遠のいていった…薄れ行く意識の中であの女は笑っていたように見えた

(ってか、今更意識失っても遅い…)

次の日、気付くと玄関の前で俺は倒れていた

イヤリングもそこにはなかった

フロントに殴り込む勢いで303号室で昔何があったのか聞き出してやった

やっぱり2年程前にあの部屋で若い女が風呂場で命を断ったらしい

詳しい事は、ホントにホテル側も知らなかったみたいだ

ただそれ以降あの部屋で女を見たと言う客からの苦情が相次ぎ部屋の使用は禁止となっていたようだ…

じゃあ、何故俺を通したのか聞いて少し後悔した…

当日、俺を案内したのはあの愛想のない女性スタッフ…

しかし当日、ホテルに女性スタッフは一人も出勤していなかったらしい

少しゾッとしながら俺はそのホテルを後にした

帰り際、フロントの奴が「またのお越しを…」とか吐かす

(二度と来るか)

帰って事の全てをTに話す

俺「いや~、ホント死ぬかと思った」

T「…」

俺「何だよ…ど、どうした?」

不安になった

T「Kさん、その女、最後に何て言ったか覚えてる?」

俺「いや、怖くて覚えてねーな。ありがとう的な…?」

T「多分、多分だよ…その女…こう言ってたんだよ」

『アナタ モウ ハナサナイ』

背筋が凍りつく

その場の空気を変えたくて俺は言う

「何でその場にいなかったお前にそ、そんな事分かるんだよ…」

するとTが指差し

「Kさん…後ろ…」

振り向く

女が笑いながら…

『ハナサナイ、ハナサナイハナサナイハナサナイ…』

「ギャー」

意識が遠のいた

(意識を失えた!!)

…次の日、Tの実家に行って何とかお払いを済ませた

少し経って俺は思った…

(そういえばあのイヤリングは誰のだったんだ?)

後ろから…誰か見ている気がした…

物語はオワラナイ…

怖い話投稿:ホラーテラー 独りさん  

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この方の話は面白い♪

面白怖い話を有り難う♪
KとTの他の話も是非披露してくれ!

面白かったです。