中編3
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仁木くん EP1

僕は大学に仁木くんと言う友達がいる。

仁木くんは霊感はあるが、特に霊能力は持っていないと言っている。しかしコミュ力が高く、そんな話が広がっても友人は多くいた。

ある日いつもの様に仁木くんの所に相談が来た。

同じ学部の川口くんだ。彼は先日、有名な心霊スポットに行ったらしい。行った時は何も無かったが、帰ってから、何となく体が重いような気がするらしい。また日に日に体の重みが強くなってきたため、仁木くんの元に相談に来たらしい。

相談された後、仁木くんにいつもの様に言われた。「実地調査したいから、いつも通りタキちゃんも来てよ」

僕は、いつも通りという言葉に対して、心の中で、(無理やり連れてってるくせに)と反論しながらも了承した。

その日のうちに、仁木くんの下手くそな運転で、その心霊スポットへ向かった。原くんは着くとすぐ、 「あー無意味だったわー」と言い、そのまま仁木くんの家に戻った。

家に戻ると僕は仁木くんに「で?何が無意味なの?」と怒り気味に言った。責めて、いつもの探検位はあると思っていたからだ。

仁木くんは「いやぁ、アソコは探検できる環境でもないし、問題は多分解決出来ないからなぁ」と困った風に言った。

そして、5日ほど経ち、僕もレポートに追われ、川口くんのことを忘れ始めていた。

しかし学食で僕と仁木くんが、レポート課題にうなだれている時、川口くんの彼女と名乗る女性から相談を持ちかけられた。

彼女と名乗る女性は、他大学の学生らしい。川口くんは立つことも難しく、同じ大学にいる仁木くんに助けを求めるよう、彼女にお願いをしたらしい。

彼女はどんな事をしてでも川口くんを助けたいと言っていた。

仁木くんは睨みをきかせながら「どんな事でも?」と言った。

そして彼女にある条件を持ちかけた。二度と彼と連絡を取らないこと。そして何があっても僕らのせいにしない。そして念の為、彼のお祓い後すぐに、君だけで青森のある寺へ行く事。を条件に出した。

彼女は彼が助かるならと、すぐに了承した。

僕は彼のお祓いという言葉を聞く度に、嫌な気持ちになる。確かにそれが今ある一番最良な方法なのかもしれないが、しかし決して誰もが納得する方法ではないからだ。

そして、仁木くんは彼女と僕を連れて川口くんの家へと向かった。

僕はいつも通り、外で誰かが入って来ないように見張りをさせられてた。これは仁木くんなりの、僕が巻き込まれないための配慮と、僕は思っている。仁木くん曰く「扉は結界の一種、特に玄関の扉は最高の結界とも言える」

僕はお祓いが終わるまで外で音楽を聴きながら待っていた。

お祓いが終わり、仁木くんと彼女が出てきた。彼女は新幹線に乗るため駅へ向かった。僕と仁木くんは念の為、新幹線に乗るまでは見送った。

仁木くんの家に入り、僕はいつも通り尋ねた。「で、今回はどうだったの?」と

仁木くんは「あの心霊スポットはタクシーを待っている人と同じ。一つのグループに一人憑いていける。そしてその中の一人を選ぶ。そして徐々に身体と心を衰弱させ、寂しくないようにその人を持って行くんだよ。」と

僕は思わず「だからか探検しなかったのか」と呟いた。

彼は「彼女がどんな事でもと言ったから彼は助けたよ。彼は。」と言った。

僕はその言葉の意味を理解している。彼の言うお祓いは、追い払いである。あくまでもその人物やその場所から追い払うだけであって、問題解決にはならない。追い払えてもまた来るかもしれない。

そして今回、身代わりとして、仁木くんは川口くんの彼女を選んだのだ。なぜ最良かと言うと、彼女はまだ取り憑かれていなかったため、そして川口くんとの縁が強いからだ。取り憑かれてから、助かるまでには時間が勝負らしい。

その後の彼女は僕達には分からない。大学も違うし、川口くんにも聞きづらいし、僕らもわざわざSNS等を調べたりもしない。

だって嫌な結果は知りたくないからね。

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