中編5
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輩さん

「暇やな…」

「ッスね…暑いッス…」

夏、世間は夏休みで海やプールに川と言った

THE SUMMERな場所に家族、恋人、友人と出掛ける事が多いであろう。

そんな中、反抗期真っ最中の中坊2人ここにあり。

何を隠そう彼女ナシ家族とのお出かけはダセェと

意地を張った結果取り残された2人だ。

「誰か暇なヤツいねぇのかよ、Tとかアポった?」

「Sさん電話して下さいよ充電ないッス!」

「チャリ走やりすぎだろオメーは、かけてみるわ」

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「で、何すんの?呼び出しといてクソ暇じゃね?」

わかっていた、こうなる事は…

Tさんが合流して暇人が3人に増えたのだ、金もない

足もないあるのは時間と元気だけ。

「あ、そういやS、この前行ったあそこは?」

「あーラブホの横の空き家?」

「なんすかソコ!俺も行きたいっス!」

この前行った空き家とはSさんとTさんが見つけたらしい割とここから遠くない場所にある建物。

Sさんが「ちょっと待ってて!」と言うのでタバコをふかしながらTさんと待っていると「ビッビー⚡︎」と

鍵のささってない原チャリに乗ってSさんが登場…

ソレどうしたんスか?と聞きたい所だが大体の予想はつくので黙って乗車。

それからコンビニに寄りつつ十数分、3ケツでスピードも出ない原チャリを飛ばして?やっと到着。

「いや〜遅いっスねwチャリのが早いっスよw」

「バカこっちのが楽だろうが!さっさと中行くぞ!」

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「えぇー意外と中綺麗なんすね〜さっきまで人いたみたいじゃないスか〜」

「だろ?でもSと来た時よりなんか色々変わってる」

「ん〜確かに、ソコにソファーもテーブルも無かったし…でも人が住んでるならもっと綺麗にするし鍵もかけとくだろw」

ですよね〜!とかはしゃぎながらコンビニで買った駄菓子を頬張ったり転がっていたペンキで壁に落書きしたり騒ぎまくった。

しばらくして時計を見ると17時半頃になっていた、日が落ちるのが遅いので全然そんな気がしなかったのを覚えている。

「まだ18時前っすよ!どうしますSさん!」

「そうだな〜何すっか〜ちょっと寝て肝試しいこうぜそしたらw」

「いいね〜中々蒸し暑いしシンナー臭いけどまぁ寝れる」

「Tさんどこでも寝るじゃんw」

そんな会話をしつついい溜まり場を見つけたな〜

なんて思いながら肝試しにワクワクしながら眠りについた。

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(ん?タバコくさいなぁSさんかTさん起きたんだ)

「え⁉︎ちょ」

起き上がるとそこには正座をした先輩2人がいた。

いや、正確にはソファーに座った人に向かって正座をした2人がいた。

「おぉ〜やっと起きたか〜^_^ちょっとこれからオジさんとドライブ行くか〜^_^」

やってしまったと思った、この人知ってる。

よくいるこの辺の地元じゃ知らない人はいない系のヤバイ人。しかもポン中

血の気がサァーっと引いて急にクールビズやんけ。

それからその輩さんのハイエースに無理矢理ぶち込まれしばらく走って工業団地に到着したのだがもちろん車内は無言、輩さんもSさんもTさんも何も言葉を発する事無く着いたのだ、いや着いてしまったのだ。

「降りろ」

終わった。

これもう完全に終わったパターンのヤツやん。

拉致られてこんな工業団地連れてこられたらやる事は、いつも一つ!(コナン君)

輩さんが正座しろと言い秒で正座する僕達。

そこでTさんが

「すみません、輩さんが使ってるって事俺ら全然知らなくて…」

「あ、いいよいいよ!お前らどうせこれからぶっ飛ばされるんだから謝るなよ^_^」

3人とも泣きそうでした、なんて事をしてしまったんだと、あの時ママ達と海に行っていれば今頃…

考えても仕方がありません。

先輩2人は何とか俺をかばって自分の後輩で俺らが無理矢理連れてきたんです!コイツは勘弁してください!と言ってくれました。

輩さんは「いい先輩持ったな〜」と言って2人を連れて建物の裏の方に消えて行きました。

それからすぐTさんとSさんの断末魔の様なとてつもない叫び声が聞こえ、助けなきゃと思っても足が1mmも動かない自分に苛立ちを隠せないでいました。

それからどれくらいの時間がだっただろうか、しばらくして輩さんが1人で戻ってきてアノ空き家だと思っていた建物を説明してくれました。

「お前が寝てる間に2人には話したけどあそこ俺の先輩がやってる不動産屋の物件で仕事用に俺が最近借りたんだわ、したっけ知らねぇガキがゴミ散らかしてペンキまみれにして寝てっからムカついちゃってよ」

言ってる事はわかるが2人はどうなったんだろう…

そもそも鍵かけとけよ…てか結局俺もヤられる?…

いやでもちゃんと謝ろう、元はと言えばこっちが不法侵入して汚しちゃったわけだし…

「あの輩さん…本当にすいませんでした。グフッ」

もうホントすごい綺麗に90度にお辞儀した瞬間鼻に膝蹴り1発食らって

「次やったら一生付きまとうからね」

と言われ輩さんは車で帰って行きました。

鼻血を止血しつつ裏にまわり2人の元へ行くとどっちがどっちだかわからない程パンパンに腫れ上がった顔のアンパンマン2人がいました。

「ちょっと!なに新しい顔もらってんスか!バタコさんいつの間に来たんスか!」

「っでぇ〜くそいてぇ」

「目がイっちゃってたなあの人」

2人はかろうじて生きていましたが凄まじい程のやられ具合に立つのもやっと、とりあえず水を三本自販機で買ってタバコを吸いながら落ち着く事に。

「いや〜マジでヤバかったな〜メリケンサックって俺初めて見たよw」

「それなw完全に死んだと思ったし途中で痛さ感じなくなって脳震盪ヤバかった。」

「2人ともホントすいませんでした、自分なんかかばってくれて…」

なぜか泣いてしまった俺を血と砂で汚れた手で涙を拭いてくれた2人にまた涙する後輩である…

「よし!帰るか!すっかり暗くなっちったけど!w」

「だな!w」

「っスね!w」

それから街灯の少ない暗い夜道を男3人肩を寄せ合いながらさっきとはまた違う怖さを感じながらそれぞれの家に帰りました……。

次の日の夕方、先輩2人に電話してみると2人とも熱が出て体がダルいとの事&輩さんからどこから入手したのだかわからないが電話がきて落書き代の請求をされたのだそう。

結果的にバックれたのだが何年もたった今でもなんの音沙汰もないので「つきまとわれている」と言う事はないと思う、てかそう思いたい。

Concrete
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