中編3
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劇場にまつわるお話

初めての投稿です。

アルバイトをしながら小さな劇場で役者をやっています。

今はこんな世の中ですのでなかなか活動が出来ないのですが、過去に先輩から聞いたお話と自分が体験した出来事を書かせていただきます。

①うしろを…

短大の時の話。

狭い校舎だったので、喫煙所が外階段の踊り場にありました。学年教授関係なく、空き時間には喫煙所に集い話に花を咲かせていたものです。

梅雨時、ジメジメとした雨の降る中で私は数人の先輩と雑談をしていました。何かの拍子に怪談の話題になり、一人の先輩がしてくれた話です。

「とある劇場で照明スタッフとして手伝いに入った時、照明卓にテプラが貼ってあったんだけどね。

電源切る順番とか書いて貼ってある事多いし特に気にしてなかったんだけど、よく読んでみたら『本番中何があっても絶対に後ろを振り向かないでください』って書いてあったんだよね」

照明はタイミングが命です。本番中に余所見をするなんて事はないはずですが、わざわざ書いてあるなんて何かあるのでしょうか。

②早くはけて!

今から8年くらい前の話。

今はもう潰れてしまった小劇場ですが、そこを拠点とする劇団さんに数年間お世話になってました。

その時の演目は戦後すぐの下町の話で、明るく未来を目指そうとする物語でした。

私はキャスティングから漏れ、音響照明を担当していました。操作自体はそんなに難しいことはなく、タイミングに合わせて再生ボタンを押し、フェーダーを上げ下げするだけ。しかも、1番難しい明転のタイミング(真っ暗な中で出演者が舞台上からいなくなり、次のシーンの準備が整ったら明かりをつける)も暗視カメラが常設であったので目視で全て確認が出来るというものでした。

公演の2日目、タイミングの通りに舞台上を暗くした私は暗視カメラを覗きながら役者のスタンバイを見守っていました。

しかし、妙なのです。次のシーンは誰もいない状態から始まるのですが、暗い中に1人ずっとフラフラと立っている人がいます。

右に左に振り子のようにフラフラ、フラフラ…。

暗視カメラの画質が荒いので顔までは見えませんでしたが、背の高い男性のようです。

(早くはけてくれないと明かりつけらんない!)

あまり暗転が長いと観客の集中力も切れてしまいますし、テレビやラジオでいうところの放送事故状態になります。

かといって、こちらから声などかけられるはずはありません。

私は痺れを切らし、舞台上の明かりをつけました。ベテランの役者さんも多かったのでアドリブで繋いでくれると思ったのです。

(あれ)

明かりがついた舞台上、そこには誰もいませんでした。何事も無かったかのように物語は進行していきます。

あれは一体なんだったのか、今でもよく分かりません。

ただ、暗視カメラで見た背の高い男性に該当する役者さんは出演者の中にはいませんでした。

だって、約2m50cmの天井近くに頭があるなんて、ちょっと大きすぎますよね。

おしまい

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