短編2
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白く美しい十字架

それは、とても美しい十字架でした。あった場所の名前は覚えてませんが、戦争に関係していたと思います。近くにある看板には、「蛇が出る」「野生の動物がいる」と書かれており、普通に怖い場所でもありました。でも、とても自然らしい場所でした。私はそこに、母、父、私、弟、妹の家族全員で向かいました。

階段がありそこを下りると、戦時中に亡くなった人の石碑と骨の像があったと思います。石碑には亡くなった人の年齢も書かれており、それこそ赤子から年寄までいました。(あ、本当に沢山亡くなったんだ。子供もいなくなるなんて、悲しいな。)なんて、まだ呑気に考えていた時です。

ふと、ある十字架が目に入りました。木で出来ていて、少し古いものだと思いますが、私はそれを見た時にとても美しいと感じました。石碑から随分と離れていて上の方にありました。緑に囲まれていて、それも美しさをきわだてました。

それからその十字架から目を離せなくなっていると、「あれ、綺麗だよね…」と、確か妹が言って来ました。それに私は頷き、再び見とれてたと思います。

それから両親が帰ると言った声に反応して、私たちは歩きだしました。歩いている途中に私が、「十字架、綺麗だったよね。」と言うと、両親は2人とも、「?何言ってるの、十字架?」と言いました。でも、妹と弟は「え、十字架あったよね?」と、口々に言いました。それでも両親は見てないと言いました。それで私は思いました。もしかしたら、ですが、あの十字架は子供にしか見えないような、とても不思議なものだったのではないか、と。

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