超短編小説「猫角家の人々」その25

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超短編小説「猫角家の人々」その25

クラックの語源は、「ひびが入る」とか「割れ目ができる」といったところだ。クラックを製造する工程で、パリパリといったひびの入るような音がするのだそうだ。そこから「クラック」という呼び名が生まれたのだ。

クラックのHNをもつ、名古屋のネット売人は、氏素性、顔写真までネット上で公になってしまっている。職業の詳細から、過去の履歴までオープンになってしまっている。裏社会の住人には珍しいことだ。クラックは、あるジャーナリストの活動を妨害すべく、裏社会から起用された。随分と前の話である。

クラックは、ジャーナリストKの後援会組織に賛同者を偽装して入り込み、組織内組織を作る任務を遂行した。そして、自らが、ジャーナリストKの直接の指示を受けていると称して、関西支部の分派活動をやろうとした。そして、見事に失敗し発覚してネット上に「晒され」たのだ。実は、クラックの任務の最終目標は、ジャーナリストKの暗殺と、後援会組織の乗っ取りだった。そこまでやらなければならないほど、裏社会は、Kに追い詰められていたのである。

クラック….加藤(仮名)ということにしておこうw。加藤某は、ある球技の選手だった。世界の一流選手の集まるヨーロッパの某国に赴き、一流選手とともに球技に励んだ。同時に、男性同性愛の性技と麻薬の奥義を極めた。ヨーロッパで立派なジャンキーホモとなって帰国したクラックは、実家の店の商品を売りながら、オクスリのネット流通業にも従事していたのだ。

日本の裏社会は、薬物常習者を裏社会工作要員としてリクルートする。裏社会は、麻薬の密輸と流通を行うことで、ジャンキーを見つけ、組織化してきたのである。その目的は明白である。ジャンキーは、犯罪者である。犯罪者は、警察や厚生労働省などの摘発から守ってくれる「組織」に服従する。

警察やメディアにも影響力がある「組織」の庇護下にいれば、安心してシャブ中を続けられる。「逮捕されない特権」とでも形容すべきか?そして、ジャンキーは組織から、比較的安価に薬物を適宜、入手することができる。この居心地の良い環境を維持するためなら、ジャンキーは何でもする。組織の命令通り、多少危ない橋もわたる。シャブのお陰で気が大きくなっているから、大胆な行動もとれるのだ。

「オクスリ」がすべてに優先するのである。勿論、「終わりの日」はいつかやってくる。多くの場合、ジャンキーの行きつく先は「死」であるが。ジャンキーの周囲は、死屍累々なのである。(続く)

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