中編5
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僕の幼馴染

僕の幼馴染

俺は幼い時の記憶を知らない。

覚えていないとかでは無くて小学校2年以前を知らないのだ……

両親が撮ってくれた入学式の写真を見ても何も感じない。まるで自分では無いかのようにすら感じる。

しかし幼い頃の記憶は個人差はあれど薄れていくものだ、実際今となっては小学生時代の記憶など曖昧だ。なのでさほど気にはしていなかった。

幼い頃の記憶があろうがなかろうが俺は普通に大学を卒業して普通の旅行代理店に就職した。特に代わり映えのしない人生だ。

仕事にも慣れてきた頃、急に同期から話しかけられた。

『〇〇だよね?△△町の?』

普段職場では呼ばれることのない下の名前で言われた、同期のたしか…高橋だっけか?

『そうだけど、なんで俺の出身知ってるの?』

ちょっと気味が悪かったので引き気味に答えた。

『やっぱり!そうだと思ったんだ!覚えてない?』

『…なにを?』

『マジかーひでーなw』

…高橋はすごく馴れ馴れしい奴で同期では苦手な部類だった。

『まぁー俺も最初は気がつかなかったから、似たようなもんかw』

…だからなにがだ!ちょっとイラっとした。

高橋は気にせず話し続ける。

『小学校まで隣に住んでた高橋だよ!……あっ!その頃はまだ佐々木だったけど、子供の頃よく遊んだじゃん!』

佐々木?たしかに実家の隣は佐々木という名の家だ。

『懐かしな〜!今まで気づかなくてごめんな!十何年も前だから仕方ないよなぁ』

 …全く思い出せない、今までさほど気にも止めて無かった幼い頃の記憶が目の前に現れてしまった。

覚えてないか覚えてるふりをするか数瞬悩んで正直に答えることにした。

『…ごめん、思い出せない。』

高橋は驚いた顔をした後少し寂しそうな顔をした。少し申し訳無く思った。

『…そっか、小3で俺引っ越しちゃったし、しょうがないか…覚えて無いみたいだけど実は幼馴染なんだぜ!これからもよろしくな!』

こんな会話を切っ掛けに私は高橋と仲良くなった、時々高橋が あれ覚えてる?と昔の話を振るけどやはり記憶に無い。

当時の記憶が無くても話してみれば高橋はいい奴で気がつくと月一ぐらいではサシで飲む仲になっていった。

そんないつもの酒の席で珍しく悪酔いした高橋が聞いてきた、

『なんで俺の引っ越し決まったぐらいから俺のこと無視するようになったんだ?』

真剣な顔で聞いてきて俺はちょっと焦った、覚えて無いと流すべきでは無いと思った。

しかし記憶は無い。

真剣な表情の高橋、それっぽい事言って流そうかと思ったが無理そうだ…

俺は親にも言って無い幼い頃の記憶がまったく無いことを高橋に話した。

最初は適当なこと言うなよって言ってたが俺の真剣な表情をみて

『まじなのか?』

と聞いてきた、

『マジもマジ!何があったかは知らないけど頭でも打ったのかなw』

『いつ頃からは覚えてるんだ?』

少し考える…一番古い記憶はたしか…

3年生の始業式は何と無く記憶がある、2年生は……『あっ!2年生の時入院してた!その病院が1番古い記憶かな?』

高橋に伝える、すると高橋の顔が少し歪む。俺は忘れてると思っていた記憶が思い出せたことにちょっと嬉しくなった、

高橋が喋る

『俺の事無視しだしたのも退院明けからだったよな…』

『そうだったっけ?でも何で入院してたんだろ?』

高橋の顔が真剣になる、それは思い出せないのか?と俺を見る……

…思い出せない

入院するぐらいだから記憶に残っているはずだが、思い出せない……

俺は頭を抱える…

さっきまで真剣な表情の高橋は少し青くなっていた…

『どうした?今日は飲み過ぎか?』

俺は話を変えたく出来るだけ明るく言った、

すると高橋が青い顔で

『…すまん、もしかしたら幼い時の記憶が無いの俺のせいかも知れない。』

高橋が言うにはこう言う事件があったそうだ……

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小学校2年になり下級生ができた事で少し大人になった気分の僕と高橋はその時流行っていた遊びを夜抜け出してやっていた、

(ゲシュタルト崩壊)今でもたまに都市伝説に出てくる。

お前は誰だと鏡の自分の像に向かって言うやつだ。やり続けると自我が崩壊するらしい。

学校の階段にある全身映る大きな鏡でそれをやろうとなって夜学校に忍び込んだ。

今考えるとなんで夜の学校の鏡で?とは思うが子供の考えだ、特に意味なんて無いんだろう。

順番に一人で鏡の前で『お前は誰だ!』を何回言えるか競う事になった、夜の学校は思いの外怖く僕らはビビリながら鏡まで向かった。

最初は高橋、

階段の見えない所から高橋の声が聞こえる、

『お前は誰だ!』

『お前は誰だ!』

『お前は誰だ!………』

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『……おぇ』

やった事がある人はわかるかも知れないがこれは結構気持ち悪くなる、気持ちが悪いと言うか不安が押し寄せてくる感じだ。

高橋はたったの3回で根を上げて戻って来た。そして僕の番、そして鏡の前で『お前は誰だ!』と連呼する

……そして倒れた。

高橋はこっ酷く怒られ、僕は一週間入院したそうだ。

『覚えて無い?』高橋が聞いてくる、

忘れられなそうな経験だ。しかし全く覚えていない。

高橋はその後から俺に無視され続けこの遊びがきっかけで嫌われたと思いずっと気にしていたそうだ。

そして両親の離婚が理由で和解しないまま引っ越してしまった。

『ごめん!もしかしたら俺が誘ってそれが原因で記憶無くなっちゃたのかも!ほんとごめん』

話を聞くと高橋だけが悪いわけではない、しかし高橋はずっと気にしていたようだ。

『高橋が悪い訳じゃ無いよ、俺だってどうせノリノリでやってたんだろうしw気にしないで!』

高橋が涙目で

『ありがとう ……ごめん』

と言ってきた、俺からしたら無くても今までさほど困らなかった記憶だし特に謝られる事では無いと思ったのだが、原因と思われる事がはっきりしてむしろ有り難かった。

それからお互い一杯づつ飲んで帰宅した。

高橋には何か悪い事したなぁっと思いながら俺は眠りに着いた……

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…夢を見た

暗闇の中で誰かが俺に『お前は誰だ!』と叫んでいる、顔はよく分からない。

何度も『お前は誰だ』と叫んでいる。

そう言えば俺は昔からコイツにムカついていた気がする…

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…僕は叫ぶ

『お前は誰だ!』

俺は何度も言われてイライラする…

『お前は誰だ!』

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………

俺は手を伸ばす

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僕は怯えながら叫ぶ

『お前は誰だ⁈』

俺は答える

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『俺は僕だ!』

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……世界が左右逆さまになる

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………

目が醒める……やな夢だ顔を洗い鏡の前に立つ

鏡に映る私はいつものように声をかける…

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………

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『おはよう僕』

Concrete
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