不動産屋さんも笑っちゃった話

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不動産屋さんも笑っちゃった話

僕の後輩A君の話。

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A君は今年で20歳になるということで一人暮らしをしたいと僕に相談してきた。

なんでも、今探してる物件4つまでは絞ったんだけど僕にも見てもらいたいという。

少し余談にはなるが、僕は不動産に詳しい訳では無い。

ただ、住まない方がいい家というのが分かる。

感覚的なことなので言語化が上手くできないのだが、

ダメな家というのは段階的にわかってしまうのだ。

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間取り図→実際の部屋の写真→実際に内見

基本はこの順番で見るとダメな物件を見分けられる。

間取り図だと、不動産屋でもらうあの間取りを書いた紙を見た時に気持ち悪い部分のインクがじわっとなる。

ごめん。ほんとにこの表現しかできないのだ。

写真や内見については言わずもがな、明らかに霊障として現れる。

姿が見えたり、モヤが見えたり、足音、手を叩く音、声なんかも聞こえる。

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だからそれを知るA君は僕に相談に来た。

『先輩これが物件の間取り図です』

そう言って差し出してきたのは4枚の紙。

立地だったり駅まで何分とかの詳細は無視。

じっくりと図を眺める。

うん。これやだな。

1件インクが滲む感じの紙があった。

「とりま僕はこの物件はやめた方がええと思う」

A君は少し残念そうにしながら、

『そうですか……。自分的にはここがいちばん良かったんすけどねぇ』

それはごめんやん

「滲んでるとこがなぁ。キッチンの流し台やからなぁ。気持ち悪いと思うで。何かは分からんけど」

『他の3枚は大丈夫なんです?』

「間取り図見る感じやとこの1枚だけやな。部屋の内装とかの写真はあんの?」

『はい!不動産屋さんに頼んで撮ってきてもらってます』

そう言ってスマホのアルバムを見せてくる。

ただ見る前からわかった。気持ち悪いの混ざってる気がする。

「それってさっきゆった気持ち悪い物件のも混ざっとる?混ざっとるなら写真消しといて。わざわざ見んでも変なんわかっとるんやし」

『あ、そうっすよね。……はい!消しました!どぞっ』

各物件大体14枚くらいだろうか。写真を一つ一つみていく。

「この写真ちっちゃい手、この写真ちっちゃい手と足。これどの物件のやつ?」

『それは3件目ですね』

「住む分には問題ないと思うけど子供の霊居るみたいやで。どうする?」

『いやいや霊おるんなら嫌ですよ!?』

と言った具合で見ていった。

結局その後は何も無く、2件まで絞られ、

後日A君と内見に向かうことになった。

といっても2件のうち1件は確認できたが、もう1件は日を改めてということでA君のみで内見に向かった。

数日が経ちA君から連絡が届く。

『直接会って話したいっす』

A君を自宅に呼び、話を聞くことになった。

『内見してきました。その物件ちょっと不気味で。』

ここからはA君の話をまとめたものになる。

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・間取り図をみるだけでは何も感じなかったが、直接行って分かった。この物件間取りが変であると。

wallpaper:7136

玄関を開けて真っ直ぐ廊下があり何故か右手の壁沿いに埋まる形でキッチンがある事。

寝室に向かうには、廊下→洗面所→寝室と言った具合で経由しなくてはならず、洗面所の横にドアがあり寝室に繋がっている事。

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wallpaper:7136

・ずっと異臭がする事。

なんの臭いかと言われると答えられないらしいが、とにかくイヤな臭いがずっとしていたそうだ。

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wallpaper:7136

・不自然なものが置かれている事。

突き当たりにドアがあり、開けるとそこはリビング。

明らかな違和感がある。リビングの右上の方。

神棚がある。クリーニング等終わったはずのこの部屋で神棚の上のものは撤去されたりはしていないそうだ。

洗面所のドアを開ける。中は脱衣所兼洗面所と言ったもので洗濯機置場があり、その上に神棚があった。

先程のリビングのものと同じ形のものだ。

洗面所横、浴室とは逆のドアを開けるとそこは寝室。

寝室に入り正面右上には神棚があった。

そう。この物件の中に神棚が3つ存在するのだ。

不動産屋さんに聞いても以前の住人が勝手に取り付けたもので、我々も何故クリーニングの段階で撤去していないのか分からないとの事。もちろん住む際に撤去はさせていただくつもりであるという事。

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と言った具合におかしな点がいくつも出てきたらしい。

この時点で僕は間違いなく住まない方がいいだろうと思っていた。霊とか関係なく訳分からんくらい不気味なので論外だろう。

ちなみに内見する前に写真を撮りにきた時には存在は認識していたがそれが変だという違和感がなかったのだと後々不動産屋さんが語っていた。

wallpaper:7104

「まあ住まん方がええやろね」

『ですよね。しかもその不動産屋さんって自分の両親の家購入とかの時からの付き合いらしくて教えてもらったんですけど、色々曰くがあるからやめといた方がいいって言われたんですよね』

「曰く?」

『はい。なんでも、この部屋に前に住んでた人って言うのが宗教的?にやばかった人っぽくて、近隣からクレーム入りまくりで強制退去させられてたらしいんですよ』

A君の話をまとめるとこうだ。

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・前入居者が神棚3つを用意して設置した

・前入居者は寝室を爬虫類飼育部屋にしていた

・爬虫類をろくに育てないで死なせた上、亡骸を放置していたらしく夏場などは玄関外の廊下にまで臭いが漏れていたらしい

・時折壁を叩く音や何かを叫ぶ声、呻き声などあり、近隣住民からクレームが絶えなかった

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・不動産屋さんが強制退去を通告しに行くと、目の焦点があっておらず、口を半開きにして

shake

ゥア"ア""ア"ア"ア"ウウゥウウウウ

と唸っていたらしく、異常性を感じた不動産屋さんによる通報にて警察、救急の介入。

重度の鬱病であることが分かり、身請け人とやり取りをして退去してもらった。

・警察側からの要請で物件内の確認をする際に物件内は生物の死臭が漂っており、神棚には盛塩、酒、爬虫類の死骸が置かれていた。

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「そんなもん事故物件みたいなもんやんけ」

『そうなんですよ。なんでやめた方がいいって言われました。不動産屋としては早く入居者入れないとダメらしいんですけど』

「まあでもこれで決まったな。僕と見に行ったところにしとき」

『そうします』

そんなこんなで無事A君の入居先は決まった。

この話も半年くらい前のこと。今は新居で楽しそうにしている。1度遊びに行ったがやはり何か変なものがいたりだとか変な事が起こったりとかは無い。

皆さんも物件選びは気をつけた方がいい。

この物件心理的瑕疵物件には該当しないんだそうだ。

詳しくないので解説とかも出来ないからとにかく気をつけてくれ。

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そういえばゾッとしたことがひとつある。

不動産屋さんが笑いながらA君にポロッと話したそうだ。

「いやぁ、でも何年もこの業界に務めてきて初めて怖くなりましたよ。一応前入居者が退去したってことを近隣の方に告知しに行ったんですけどね?ご挨拶したあとお家に上がらせてもらって説明しようとしたらあったんですよ

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どのお家にもあの神棚が」

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