短編2
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忘れ去られた記憶

俺は近頃時々奇妙な夢を見る。

その夢の中で俺が居る場所は決まって薄気味悪い団地の廃屋。

周囲の電柱には所狭しと大量のカラスが鎮座していて、侵入者を威嚇するが如く俺にけたたましい鳴き声を投げかける。

耳をつんざく様なカラスの声にたまらず、半ばはやし立てられる様に廃屋の中へ導かれる。

室内は先程と取って変わって

薄暗くむせ返る位のホコリと

廃屋特有のカビの様なすえた匂いが充満している。

そして耳鳴りがする位の静寂に包まれながら俺は奥へ奥へ歩いて行く。

時折、何かを踏みつけた際に

鳴る普段なんとでも無い様な

「パキっ、パキっ」と言う音でさえも、なんと言うか心臓を鷲掴みされながら、歩いている気がして居心地が悪い。

しばらく淡々と歩き続けていると何処からともなく声が聞こえて来る。

「・・・◯◯君ってば、待ってよ・・・おいて行かないで」

そいつは俺の名前を呼ぶ。

小さな小さな子供の声だ。

感情を感じさせないゾッとする様な冷たい声と憎しみとも悲しみともつかぬ視線で俺の全身を舐め回す。

しかし決して姿は、見せない。

子供「・・・なんで?、ねぇったら・・・」

その問いかけは頭の中で直接木霊する。

俺「うぅあぁぁぁぁぁぁ‼」

「なんだっつーんだよ!?」

俺はその場でうずくまり、耳を両手で塞いで発狂し続けた。

「がぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・⁉」

「やめろ‼」

・・・そしていつのまにか

景色が変わり、俺はベッドの上でうずくまり朝を迎えている

「・・・・・・」

汗に濡れたシャツを見ながら呆然とし自分が現実世界に居ることに安堵を覚える。

・・・とまぁ、記憶は曖昧だが大体はこんな感じで時折悪夢にうなされている訳だ。

理由は分からないがどうしてもあの夢の中の風景は何処かで見た事がある様な気がしてならない。

・・・そうだ、明日何年か振りに旧友の「A」と合うんだっけ。

あいつにこの事を話してみよう・・・

<続く>

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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