この話は今から30年ほど前に実際にあった話です。
当時、私は小学2年生。年子の兄と両親、祖母と5人でお坊さんのお宅の敷地に住んでいました。
祖父母の代から親しくしていたお坊さんのご厚意でお寺の境内の一角をお借りして家を建て住みはじめたと聞きました。
普段からお坊さんのお経や木魚の音が聞こえていましたが、祖父母からもお坊さんの素晴らしさ‥お経の有り難さなどいつも話を聞いていたので怖さや気持ち悪い感覚はまったくありませんでした。
おおみそかの夜、いつもよりも長く響くお経‥
新しい年が無事迎えられるという安心感につつまれ消灯。
‥朝方、きな臭い!とあわてる両親に叩き起こされふらふらと隣の部屋をあけると、窓がオレンジ色で熱気を感じお寺が火事だとすぐにわかりました。
それからバタバタと外へ逃げ出し…気が付くと兄と親戚の家にいました。
元日にお寺からの出火。風向きと隣接していた我が家も貰い火をして焼け落ちました。
‥我が家に残ったものは鉄筋で出来ていたベランダ部分だけ。幸い誰も犠牲者はなく大人たちも命があるんだから元気にがんばろうと声をかけてくれました。
‥でもあたしと兄は見つけてしまったのです。
焼け跡を片付けに行ったとき聞き覚えのある音に導かれるように瓦礫を歩いて行った先に
傷ひとつなくすすよごれもしてないあの時のままの木魚が何事もなかったようにあるのを。
後日、聞いた話。私たち子供が火をみないように親戚の家にすぐにつれていかれた後、一度外にでたはずのお坊さんの姿がなく消防士の方が燃え盛るお寺へ入っていったそうです。お寺の中はすぐにでも天井が崩れそうなほど火がまわっていたそうですが、お坊さんは無傷で助けだされたそうです。お坊さんは木魚を火から守るように上から覆いかぶさるようにしていたそうです。そして不思議なことにそのまわりだけは見えないバリアがあるかのように火がまわってなかったというのです。
毎日毎日お経を唱えていたお坊さんはやはり神に近い存在なのでしょうか‥
そしてお坊さんと神をつないでいた木魚も私が考える以上に神聖なものなのでしょう。
最後までありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話