これは俺が中学生の頃、実際に経験した話です。あまり怖くないかもしれませんがよかったら…
当時、俺は毎晩の様に金縛りにあい、寝不足気味な毎日を過ごしていた。金縛り以外は特に変わった事は無いのだが、いずれ何か恐ろしいモノを見てしまうのではないか?と、いつもビビっていた。
寝不足のため、居間でゴロゴロしていた日曜日、親父が珍しくドライブに誘ってきた。
なんでも、隣の市の山中に自然公園が開園し、今日がその落成式だという。
滅入った気持ちを振り払うには、自然と触れ合って気分転換がいーかなと、俺は親父の誘いに乗ってノコノコそこに出掛けた。
公園に着くと、丁度式典の真っ最中で、イベント会場では、工事関係者や地元の人達が、笑顔で楽しそうに語り合っていた。
親父はその光景を見ると、不意に悲しそうな顔をし、イベント会場から50メートルほど離れた池のほとりに俺を連れていった。
遠くから会場の賑やかさが聞こえて来る中、親父が水面を眺めながら語りだした。
『この池でな、3日前に子供が溺れてな…その子のお兄ちゃんが助けに入ったんだが…2人共助からなかったんだよ……そんな事が有ったのに、式典でみんなが笑いあってるのを見たら、なんか切ないよな…』
子供達は、プレオープンイベントで市民に開放された3日前に、両親が目を離したちょっとした隙に池に落ちて亡くなったという。
気が付くと、俺と親父はどちらからともなく、池に向けて手を合わせていた。
『可哀想に…兄弟仲良く安らかに…』
心の中で祈りながら。
その夜のこと。
いつもの様に金縛りで目が覚めた。
『あーまたか、早く終わってくれよ』
チリーン……チリーン…
遠くから、鈴の音が近づいて来る!
チリーン…チリーン…
恐怖で目を瞑りたいのに、何故か俺の意思に反して視線は足元の方へ…瞬きすらできない。
チリーン!チリーン!
鈴の音が一段と大きく、耳元、いや、頭の中に直接響く感じになった時、
視線の左端に人の顔が!
中空の暗闇にボンヤリ浮かんだ顔は、三人。小学生くらいの男の子二人、それに四十代くらいの男性の顔が…
皆、俺と目が合うと笑みを浮かべ、ゆっくりと滑るように右側へ移動し、壁の中に消えていった。
チリーン…チリーン………
鈴の音は次第に小さくなり、やがて聞こえなくなるとふっと体が軽くなり、金縛りから解放された。
不思議と恐怖は無かった。
事故現場や縁の無い墓などに手を合わせてはいけないと何かの本で読んだ事を思い出した。憑いてくるからと。
しかし、彼らの表情は、まるで『ありがとう』とでも言っているような穏やかなものだった。
手を合わせた事へのお礼を伝えに来てくれたのだろうか。
疑問が残った。溺死した二人の男児の他に、もう一人男性が現れたことだ。
死出の旅の水先案内人だったのだろうか?
子供達の霊は、この夜現れたきり、二度と現れる事は無かった。
親父のところにも現れてはいない。
ただ、この経験を境に、俺は数々の不思議な体験をするようになった。
それらの経験はまた機会が有れば投稿してみたいと思う。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話